2021年05月23日
No.4962 ちょっと一休み その775 『日経平均3万円超えの背景と日本株の時価総額ランキング』
2月15日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で日経平均3万円超えの背景、および株の時価総額ランキングについて取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。

第二次安倍政権が掲げたアベノミクス、その目玉となったのは、日銀による異次元の金融緩和策です。
トランプ相場も追い風となり、日経平均は上昇、今日30年半ぶりに3万円台を回復しました。
その一因となったのは、今日発表されたGDP(国内総生産)の市場予想を上回る伸び率です。
昨年10〜12月期の実質GDPの速報値は前の3ヵ月に比べてプラス3.0%でした。
この伸び率が1年間続いた場合に換算すると、プラス12.7%、2四半期連続の2桁成長となり、コロナ後の経済回復へ期待が高まりました。
更にアメリカの追加経済対策が早期に実行されて景気が回復するとの期待に加え、世界各国でワクチン接種が進んでいることも投資家心理を後押ししました。

さて、1988年(12月7日)と2021年(2月15日)の株の時価総額ランキングは添付の通りです。
30年前のトップはNTT、上位には金融機関が並んでいましたが、現在の日本株のけん引役は様変わりしています。
今日の東京株式市場でも(ユニクロを展開する)ファーストリテイリングとソフトバンクグループの2銘柄で日経平均を180円以上押し上げました。

こうした状況について、大和証券エクイティ営業部の沖宗和弘さんは次のようにおっしゃっています。
「(30年前は)投機的なお金が入り続けて結局はバブルが弾けたわけで、(現在は)収益が上げられる、あるいは株式市場で評価される銘柄群が残っているわけで、・・・」

また、株式市場を50年にわたり見続けているマーケットアナリストでケイ・アセットの平野憲一代表(73歳)は次のようにおっしゃっています。
「(1988年と現在の3万円、その共通点について、)30年前の3万円と今の3万円の共通点はカネ余りです。」
「特に土地なんかは、(1988年は)山手線の中の土地全ての値段とアメリカ全土の土地の値段が一緒だったんです。」
「今では考えられないぐらいの日本の方はバブルでしたね。」

共通点として、世の中がカネ余りの状態であると指摘、1988年はバブル経済の真っただ中でしたが、現在の日本はバブル経済の状況なのでしょうか。
平野さんは次のようにおっしゃっています。
「(現在は)企業内にとんでもないお金をため込んで、極端なことを言うとそれをまだ全然使っていない。」
「ですから、今のところは全然余裕がありますから、少なくともバブルではないと思いますね。」
「企業も個人もです。」
「借金してまでは(株式は)買っていない。」

こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「(株式相場の過熱感について、)やっぱり株式の時価総額とGDPの2つを比べてみる必要があると思うんですね。」
「GDPは国全体で作り出す付加価値の金額ですから。」
「御覧いただきたいのは、バブルの頃に(東証一部の)株式の時価総額が(名目)GDPを上回っています。」
「そして足元でも株式の時価総額が(名目)GDPを上回っているということで、その意味では株の方が割高に買われている局面と言えると思います。」
「(それはつまり“加熱気味”と言えるのかという問いに対して、)ただし、背景にあるのはアメリカ主導の各国がいわゆる政策協調で、お金をどんどん世の中に流しているというところがポイントになると思いますね。」
「(つまりマーケットがちょっと過熱気味になったとしても、実体経済の部分ではまだまだ金融政策、財政政策で支えていかなければならない局面ではという指摘に対して、)その支えているのは誰かということで、主な登場人物を整理してみますと、こんな感じになるわけですよね。」
「前ECB総裁のドラギ イタリア大統領、前IMF専務理事のラガルドECB総裁、前FRB議長のイエレン アメリカ財務長官、そして元財務官の黒田日銀総裁というところですが、共通しているのはやっぱりコロナ禍の下での景気重視ということですから、多少のインフレにはある意味で目をつむるかっこうでお金をばらまいている、その意味ではバックトゥ80‘s、80年代への回帰になってきているんじゃないでしょうか。」
「(ただ、それだけしないと中々景気の下支えが難しい局面であるということなのではという指摘に対して、)全くその東リですね。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

なお、2月16日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で今回の株高を支える“買い手”について取り上げていたのでご紹介します。 

ニッセイ基礎研究所の井出真吾さんは次のようにおっしゃっています。
「例えばファーストリテイリング株の20%以上を実質的に日銀(日本銀行)が保有しているようですので、その株を売らない大株主がいるというのは他の投資家にとっては安心感になりますよね。」

井出さんは、日銀が大規模な金融緩和策の一環として日本株に投資するETF(上場投資信託)を大量に購入した結果、間接的に企業の大株主になっていると指摘します。
井出さんの試算によると、日銀が実質的な大株主となっている主な企業は以下の通りです。

ファーストリテイリング 20.5%
コナミHD       17.2%
キッコーマン      15.2%
ヤマハ         14.5%
セイコーエプソン    14.1%
セコム         13.9%

出井さんは次のようにおっしゃっています。
「投資家が(株を)買い易いように、つまり下がった時には日銀が買い支えるという安心感を与え続けたという意味では、今回の株高に日銀も一役買っているとも言えるかと思います。」

なお、日銀の黒田総裁は2月16日開催の衆議院・財務金融委員会で次のようにおっしゃっています。
「ETFの買い入れにつきましては、大規模な金融緩和の一環でございますので、当面これ(ETFの買い入れ)を止めるとか、あるいは(金融緩和の)出口を考えるとかいう状況にはないと考えております。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

まず、日経平均3万円超えの背景についてですが、番組を通して、30年前と今回との相違について、以下のことが言えます。

(共通点)
・カネ余り
・株式の時価総額が名目GDPを上回っており、株価に割高感がある

(異なる点)
30年前:
・投機的なお金が株式市場や土地などに入り続けたこと

今回:
・収益が上げられる、あるいは株式市場で評価される銘柄群が相場をけん引していること
・借金してまで株を購入していない
・事業への資金投入先が見つからず、内部留保が蓄積されていること
・コロナ禍での急激な景気後退において、各国政府が景気重視政策を打ち出しており、日本ではその一環として日銀が株価の下支えを実施している
・従って、投資家心理として、株式購入において安心感がある

次にバブルがいかに物価を押し上げてしまうかですが、バブル期の1988年には、山手線の中の土地全ての値段とアメリカ全土の土地の値段が一緒だったというのですから、まさに狂気の沙汰と言えます。
しかし、よく言われるように“バブルは弾けてしまった時に初めてバブルだった”と認識出来ると言われているように、バブルの崩壊を事前に見極めることはとても難しいのです。

また、日本株の時価総額ランキングについてですが、バブル期の1988年12月7日にはトップ10のうち、金融機関が5つ入っています。
一方、今年の2月15日には、金融機関は1社のみで、その他はトヨタをはじめとする、現在の相場をけん引している企業です。
中でも、異彩を放っているのは2位のソフトバンクグループ(SBG)です。
SBGは、現在は投資会社としての性格を強めており、今後成長が見込めるベンチャー企業への単なる投資というだけでなく、投資先のそれぞれの企業を束ねてコンダクターのような役割を目指しているのです。(参照:アイデアよもやま話 No.4826 アーム×エヌビディア=DXの加速!

技術革新を中心に産業界を取り巻く環境の変化が激しく、その変化を先取りしようとするベンチャー企業が次々に生まれて切るような状況において、SBGのように投資における目利きの出来る企業はとてもまれな存在と言えます。
そして、こうした企業の存在価値は今後とも経済のけん引役としてその重要性を増していくと思われます。

添付)

1988年(12月7日)と2021年(2月15日)の株の時価総額ランキング


 
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