2021年05月13日
アイデアよもやま話 No.4954 世界No1スパコン「富岳」の実力!

1月26日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で世界No1スパコン「富岳」の実力について取り上げていたのでご紹介します。

なお、日付は全て番組放送時のものです。

 

新型コロナウイルスとの闘いは人間だけではありません。

日本のスーパーコンピューター(スパコン)「富岳」も未知の新型コロナウイルスの解明に挑んでいます。

以下は昨年11月に発表されたスパコンの世界ランキングです。

 

1位 富岳(日本)

2位 サミット(アメリカ)

3位 シエラ(アメリカ)

4位 神威太湖之光(中国)

5位 セレネ(アメリカ)

 

世界1位を続ける富岳は2位のアメリカ製のサミットの3倍という圧倒的な計算速度を誇ります。

世界1位だからこそ、今注目を集めている日本製スパコンの実力に迫ります。

 

理化学研究所(神戸市中央区)の計算科学研究センターに世界最速のスパコン「富岳」があります。

未知だった新型コロナウイルスの飛沫感染シミュレーションやウイルス表面のタンパク質の構造予測など、現在緊急を要する新型コロナウイルスの研究に優先的に取り組み、120の課題を同時に解析しています。

それを実現しているのがコンピューターの脳と呼ばれるCPU(中央演算処理装置)で、約16万個が搭載されています。

「富岳」の計算速度は10年前に世界一になった「京」の約100倍です。

ゲリラ豪雨を予測するスピードも格段に上がります。

理化学研究所の辛木哲夫さんは次のようにおっしゃっています。

「「京」は4日後にしか結果が出てこなかったものが、「富岳」を使うと1時間後に予報が出てくるということになって、今まで諦めていたような計算が実用になってくる。」

 

「富岳」が優れているのは計算速度だけではありません。

辛木さんは次のようにおっしゃっています。

「「富岳」の開発目標は、計算が速くて広く普及して誰でも使い易いということを目指して開発した。」

 

先代の「京」は、計算速度は世界一でしたが、使えないソフトウェアが多く、実用性に課題がありました。

その反省から、脱“ガラパゴス”を目指し、「富岳」が開発されたのです。

「富岳」を理化学研究所と共同開発をしたのが富士通です。

今、その技術で世界に打って出ようとしています。

「富岳」と同じCPUを2個搭載した商用スパコン「FX700」は高性能なPC(パソコン)の10倍以上の計算速度になります。

従来の富士通の商用のスパコンは1億円を超えるものがほとんどでしたが、今回は約400万円から購入出来ます。

「富岳」を開発したノウハウで速さと安さを実現した富士通、その技術を高く評価したのがスパコンメーカーの老舗、アメリカのクレイ社(現HPE)です。

世界トップレベルのクレイ社のスパコンに富士通のCPUを採用したのです。

富士通 プロセッサシステム事業本部の内川浩志さんは次のようにおっしゃっています。

「富士通のスパコン開発の歴史の中で本当にこんなことが起こるのかと。」

「(クレイ社は)スパコン業界の永遠のライバルなわけですよ。」

「競合他社を通じて世界中に出ていくのはすごいことですし、グローバルにどんどん拡販していきたいと。」

 

理化学研究所と富士通が達成した「富岳」の世界一、それを複雑な思いで見ていたのはライバルのNECです、

かつて半導体のシェアで世界トップ(1985〜91年)だったこともあるNEC、パソコンブームの80年代、NECは国内で圧倒的なシェアを誇っていました。

スパコンの開発でも世界をリードする存在だったのです。

実は「京」の開発に当初はNECも参画していたのですが、2008年に起きたリーマンショックで、NECは「京」の開発から撤退せざるを得なくなりました。

NEC AIプラットフォーム事業部の陶理恵さんは次のようにおっしゃっています。

「リーマンショックがありまして、NECの業績があまりよくなくて、投資出来なくなってしまったので撤退を申し入れさせていただきました。」

「開発の皆さんは悔しい思いをしたというところはありますね。」

 

しかし、「京」の開発から撤退した後もNECはより高度な開発を続けてきました。

今月発売した商用スパコン「ベクターエンジン(Vector Engine)」の価格は約126万円です。

CPUはNECが独自に開発したベクトル型と呼ばれるものです。

一方、「富岳」で使われている富士通のCPUはスカラー型、それぞれ計算方式が全く異なりますが、ベクトル型を作っているのは世界でNECだけです。

半導体大手のインテルがスカラー型のCPUで市場を席捲したことで、コンピューターの標準になっています。

そんな中でもNECだけがベクトル型の開発を続けてきたのです。

NECの陶さんは次のようにおっしゃっています。

「ベクトル型の良さは、大規模なデータをいっぺんに計算出来るというメリットがあるのでAI(人工知能)領域の機械学習の分野でスカラー型に比べて処理性能が速いということで、AI領域には広げていけるかなと思っています。」

 

「ベクトル型の技術は、今ではNECにしかないので、NECが止めてしまうとベクトル型の技術がなくなってしまうというのはやはり使命ですかね、想いがあります。」

 

速くて安いベクトル型のスパコンが今後AIを活用する企業に必要とされるはずです。

NECだけが守り続けてきた技術で反転攻勢に出ようとしています。

 

「富岳」の世界一で注目が集まる日本のスパコン技術、富士の裾野のように世界に市場を広げることは出来るのでしょうか。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

10年前に世界一になった、先代の「京」は計算速度は世界一でしたが、使えないソフトウェアが多く、実用性に課題があったとは知りませんでした。

こうした「京」の弱点を克服したうえで、「富岳」の計算速度は「京」の約100倍、そして2位のアメリカ製のサミットの3倍という圧倒的な計算速度を誇ります。

しかも、120の課題を同時に解析しているといいます。

ですから現在、「富岳」はまさに世界に誇るべき高性能のスパコンと言えます。

 

一方、NECが独自に開発を進めている、速くて安いベクトル型のスパコンは、大規模なデータをいっぺんに計算出来るというメリットがあるのでAI領域の機械学習の分野でスカラー型に比べて処理性能が速いといいます。

ですから、今後AIの本格的な活用の時代を迎えるにあたって、スパコンの実際の適用において、スカラー型とのすみ分けというかたちで双方が発展していくという可能性を秘めています。

そして、こうしたスパコンの絶えざる進歩により、それまで解決出来なかった難題を次々に短時間で解決していくことが可能になるのです。

 

ということで、双方のスパコンがコンビを組むかたちであらゆる分野において、世界のスパコン界をリードしていき、将来的にも優位性を維持していって欲しいと願います。


 
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