2021年04月19日
アイデアよもやま話 No.4933 WBSが昨年注目した企業!

昨年12月25日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で番組が昨年注目した企業について取り上げていたのでご紹介します。

なお、日付は全て番組放送時のものです。

 

日経500種平均株価の今年の上昇率トップ10ランキングでは、コロナ禍で経済状況が厳しい中でも成長が期待される伸び盛りの企業が数多く含まれています。

以下はその一部です。

 

   (銘柄名)     (株価上昇率)

1位 エムスリー      2.8倍 医療従事者向け情報サイトなどを運営

2位 SGHD(佐川急便) 2.5倍 物流

3位 ネクソン       2.4倍 ゲーム

4位 カプコン       2.3倍 ゲーム

5位 日本ペイントHD   2.1倍 塗料

6位 ワコム        2.0倍 アニメ動画制作ツール

7位 イビデン       1.9倍 半導体

8位 ダイフク       1.9倍 物流

9位 MonotaRO   1.8倍 通販

10位 新光電気工業     1.8倍 半導体

 

中でも番組が注目しているのが6位のワコムですが、ある製品の世界シェアがトップなのです。

その製品が使われているのが、2019年に大ヒットした映画「天気の子」など人気作品を世に送り出す新海誠監督が所属するアニメ制作会社、コミックス・ウェーブ・フィルムです。

そんなアニメ界をリードする企業の現場で欠かせない道具があるといいます。

それがペンタブレットです。

よく見ると「WACOM」の文字がありました。

株式会社コミックス・ウェーブ・フィルムの松岡理恵子さんは次のようにおっしゃっています。

「3年くらい前から使い始めました。」

「描き上げるまでの労力がすごい少なくて済むようになりました。」

 

「天気の子」の制作にも参加した松岡さんはもともと紙と鉛筆で作業していましたが、3年ほど前からペンタブレットを利用、描き直しの作業が楽になり、仕事の効率が上がったといいます。

松岡さんは次のようにおっしゃっています。

「何度描き直しても汚れることがないので、納得いくまで直すことが出来る。」

「私にとってはデジタルがすごい相性が良かったなと思いまして。」

 

プロのクリエーターから支持を集めるワコムのペンタブレットは世界シェア1位だといいます。

その描き心地ですが、強みの一つが最大8000段階の筆圧検知センサーで、色の濃淡を自然に再現出来るといいます。

更に画面をタップするだけで、デジタルの強みを生かし、やり直しも簡単です。

また、コロナ禍で意外な分野での需要も生まれているといいます。

ワコムの井出信孝社長は次のようにおっしゃっています。

「実はこれを使って、絵を描くだけではなくて教育ですね。」

「リモート教育だとか、先生と生徒が中々同じ教室に集えない時にちょっと白板代わりに使うとか、そういった使われ方もありますね。」

 

新たな需要も追い風に今年度(2021年3月期)は売上も利益も過去最高になる見込みです。

井出社長は次のようにおっしゃっています。

「「こんな便利なことが出来る」というおしゃべりなサービスになりたくないと思っていて、僕らの出自はやはり道具屋なんですよね。」

「人間の行為をサポートする道具であり続ける。」

 

井出社長は、今回コロナによって掘り起こされた需要を、この後持続的な需要につなげることが重要だともおっしゃっています。

 

さて、このランキングですが、1年後はどのような顔ぶれになりそうか、岡三証券の投資戦略部長、小川佳紀さんは次のようにおっしゃっています。

「(株価)指数が上がっても買われる銘柄が一部に限られているということですから、1年後も(トップ10の)顔ぶれはそんなに大きく変わっていなくて、勝ち組がより強くなる、負け組は中々株価が戻らないという傾向は来年も続くのかなと。」

 

勝ち組、負け組がはっきり分かれるというシビアな状況が続きそうですが、個別銘柄をここまで見てきましたが。全体のマーケットを見た時について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。

「今年から来年にかけて、やはり“3、2、1”がマジックナンバーになると思います。」

「まず“3”はニューヨークダウ 3万ドル台ですね。」

「そして“2”はビットコイン 2万ドル台でこれがどのくらい続くのか。」

「そのカギを握るのは“1”だと思っています。」

「アメリカの長期金利なんですよね。」

「要するに今は0%台の低金利で、そのお金が株や暗号資産に入っているんですけども、果たして低金利が続くかどうか、要するに裏側にあるのはカネ余りでインフレ懸念が出てくるかどうかだと思うんですね。」

「一つ気になるのは、インフレになると儲けが得られる、インフレ連動債がこのところ人気を集めているというのはちょっと気になるところです。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

ペンタブレットは文字通りアニメ制作のデジタル化で生産性向上に大きく寄与します。

これまでの紙と鉛筆での作業をデジタル化するので、書き直しがとても容易になり、色の濃淡なども自在にコントロール出来るからです。

更に、井出社長もおっしゃっているように、教育や会議などで白板代わりに使われる、人間の描くという行為をサポートする道具としてコロナ禍においてのみならず、コロナ終息後も引き続き国内外からの需要が見込まれます。

特にアニメ制作においては不可欠のツールになります。

そして、その分速いテンポで視聴者に作品を提供出来るのです。

 

さて、番組で取り上げたランキングですが、見事にコロナ禍の状況を反映しています。

具体的には、新型コロナウイルス関連の検査薬、治療薬、そしてワクチンなど、あるいは“巣ごもり需要“の増加に伴う通販、ゲームや物流、そしてデジタル業界における米とも言われる半導体の業界の活況です。

 

一方で、外食や観光など、外出を伴う業界はこれまで経験したことのないほど、売り上げが年単位で長期的に落ち込んでいます。

ですから、こうした厳しい業界においては、暗中模索で“3密”(密閉・密集・密接)の回避を図りながら、新たな需要を掘り起こすという“生き残り戦略”が求められるのです。

その中で、“新たな生活様式”を取り込んだ商品やサービスはコロナ禍後も新たな成長路線につながるのです。

ですから、こうした厳しい業界にとっては、コロナ禍は新たな成長につなげる大きなチャンスでもあるのです。

 

そして、そのキーワードは大きく3つあると考えます。

1つ目は、コロナ禍をきっかけとした“新たな生活様式”に沿った、自社の強みを生かせる需要の掘り起こしです。

2つ目はDX(デジタルトランスフォーメーション)です。

デジタル化の観点から、業務内容を徹底的に見直し、ビジネスプロセスを大変革するのです。

3つ目はSDGs(持続可能な開発目標)です。

中でも事業全体でCO2排出量を実質ゼロにする取り組み(ゼロエミッション)です。

コロナ禍以前は、本業で忙しく、DXやSDGsの観点から本格的に取り組む時間的な余裕がほとんどなかったと思いますが、不幸中の幸いでコロナ禍においては大幅な需要減でこうした取り組みをするには十分と言えないまでもかなりの時間が与えられていると思います。

ですから、こうした観点から真剣に“生き残り戦略”を見出せるかどうかがコロナ禍を生き残り、コロナ禍後も成長し続けることにつながるのです。


 
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