2021年02月23日
アイデアよもやま話 No.4886 アリババグループ傘下のアント上場延期に見る国外企業による中国進出の危うさ!

昨年11月6日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でアリババグループ傘下のアント上場延期について取り上げていたのでご紹介します。

なお、日付は全て番組放送時のものです。

 

中国のネット通販最大手、アリババグループ傘下の金融会社、アントグループの上場延期について、中国人民銀行は11月6日、投資家の利益を保護するためだとの見解を示しました。

アントは11月5日に上海、香港の両市場で株式上場する予定でしたが、創業者のジャック・マーさんが中国当局から指導を受けたとして直前になって延期されました。

これについて、中国人民銀行の幹部は記者団に対して、「市場の健全な長期的発展と投資家の利益保護に係る判断だ」と述べ、延期の判断の正当性を強調しました。

 

こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。

「(上場すれば、調達額がサウジアラムコを上回って史上最大になる予定だったのに、直前の延期について、)中国は金融市場の改革を謳って(うたって)いたわけですけども、今回の件で“衣の下から強権という鎧(よろい)が見えた”感じがしますね。」

「で、アントグループなんですけども、あまりきつい金融監督を受けずに高利融資を行っている、そこは問題と言えばそれまでなんですけども、上場のわずか2日前にストップをかけるというのはいかにも強権ですね。」

「(アリババグループの創業者、ジャック・マーさんが金融当局に批判的な発言をしたので、それが当局の逆鱗に触れたのではと言われていますが、)有力企業のアリババグループでさえこういう状況ですから、“いわんや他の企業おや”ということでにらみをきかしているわけですよね。」

「しかし、こんなことをやっちゃうと中国でビジネスをしている企業にとってリスクが出てきますよね。」

「(中国でのビジネスにおいて、)規制リスクや法的リスクが出てくるわけですから、いろんな条件で“こっちの水は甘いぞ”といって入った後でこのリスクに直面すれば大変なことだと思いますよ。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

また昨年11月13日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でも同様のテーマを更に掘り下げて取り上げていたので一部内容が重複しますがご紹介します。

なお、日付は全て番組放送時のものです。

 

中国の電子決済サービス、アリペイを運営するアントグループの上場延期を巡って、習近平国家主席が直接延期を命じたとアメリカメディアが11月12日に報じました。

ウォールストリートジャーナルの電子版が中国政府関係者の話として伝えたものです。

アントを傘下に持つアリババグループの創業者、ジャック・マーさんが昨年10月の講演で、中国当局の規制強化について「技術革新を妨げている」と批判したことに習近平国家主席が激怒し、上場を延期させるよう当局に直接命じたとしています。

アントは10月5日に上海と香港の証券取引所に上場する予定でしたが、10月2日にジャック・マーさんが中国当局に事情聴取され、翌3日に上場延期を発表していました。

 

こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。

「アリババグループの総帥、ジャック・マーさんが政府批判としたと、言わばそれが“アリの一穴”になって中国のシステムを揺さぶるんじゃないかということで、習近平国家主席自身が上場のストップをかけたわけですね。」

「これはまさに国家が市場の上にある、国家が産業の上にあるということをはっきりさせているわけで、ある意味産軍複合体と同じ構造になっていると思います。」

「(まさにチャイナリスクが明らかになったということになるという指摘について、)はい、共通するのはその点だと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

まず、アリババグループ傘下の金融会社、アントグループが昨年11月5日に上海、香港の両市場で株式上場する予定だったのが、その直前の11月2日に延期されたといいますが、その理由は、アリババグループ創業者、ジャック・マーさんが中国当局から指導を受けたことにあると見られていますが、こうしたことは常識的には考えられませんし、前代未聞です。

こうした事実にあらためて習近平国家主席による独裁的な強権を見る思いです。

 

そうは言うものの、中国は今も経済発展途上国家であり、その旺盛な需要から進出企業にとってはとても魅力的です。

ですから、特に中国のような独裁国家への企業進出にあたっては、滝田さんの指摘されている規制リスクや法的リスクだけでなく、一旦当局ににらまれたら逃れられない強権リスクもあることから、最悪の事態も想定したうえでの進出を覚悟する必要があります。

なぜならば、今の中国は法治国家の衣は着ていますが、習近平国家主席の意向次第で、誰でも、あるいはどの企業も法的根拠は明確にされないまま罰せられるという典型的な独裁国家なのですから。


 
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