８月１２日（水）放送の「ワールドビジネスサテライト」（テレビ東京）で香港の民主活動家、周庭さん（２３歳）の逮捕について取り上げていたのでご紹介します。
香港の民主活動家、周庭さんは香港国家安全維持法違反の疑いで逮捕され、８月１２日未明に釈放されました。
保釈直後、当番組の取材に応じ、次のように日本語で心境を語りました。
「今まで４回逮捕されましたけれども、正直今回は一番怖かった。」
「一番きつかった。」
８月１０日夜に逮捕された周庭さん、香港の複数のメディアによると、逮捕容疑は周庭さんが他の男性、二人とともに外国政府が香港に制裁を加えるようネット上で働きかけたこととされています。
しかし、具体的にどの行為が法律に触れたのか、拘束中当局から一切説明はなかったと周庭さんは話します。
「この国家安全維持法はまさに政治的な弾圧をするために利用したものじゃないかな。」
香港当局は他にもアップル・デイリーの創業者、黎智英(ジミー・ライ)さんなど逮捕した１０人全員を保釈しました。
香港の民主派が逮捕されたことを受け、日本では８月１２日、超党派による議員連盟が緊急集会を開催、「中国から捜査協力を求められても日本は拒否すべき」などの要望を政府に提出、香港からの入国希望者や在日香港人を保護するため、ビザ免除の滞在期間の延長などを求めました。
香港問題は米中の対立も更に深めています。
トランプ政権は、香港からアメリカへの輸出品に「中国製」と明記するよう義務付けると発表しました。
香港を中国本土と同一に扱う制裁措置の一環で、香港製品にも中国本土と同率の関税が適用されることになります。（原則９月２６日〜）
国際社会をも巻き込んだ香港を巡る混乱は深刻さを増しそうです。
こうした状況について、番組コメンテーターで東京大学教授の渡辺 安虎さんは次のようにおっしゃっています。
「これまで香港は中国に関する社会科学研究の一つの非常に大きな世界的な拠点だったんですね。」
「中国の政治とか政策に関して非常に自由な議論がなされて、多くの知見が生み出されて来た場所であったわけですけども、今回の国家安全維持法はこれに非常に大きな影を落とすことになるのではないんじゃないかなと思います。」
「（教育の現場で既に変わったことはあるかという問いに対して、）例えば研究者が世論調査をしようと思って、調査会社が「政治的なことは聴くな」というようなことを既に言い始めている、ここ数日。」
「調査会社が「リスクがあるので（調査）したくない」と言ってしない。」
「それから、もう一つこれに拍車をかけているのがコロナによるオンライン化ですね。」
「大学はオンライン化によってあらゆる授業や研究、セミナーとかワーショップといったものを全部録画することになるんですね。」
「録画したものは後から見えてしまうということで、自由闊達な議論が更に難しくなるということが更にコロナ禍で副次的影響という感じで出てしまっているというところがあります。」
「（デジタル化の怖さが今香港で実感されているということなのかという問いに対して、）そうですね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
周庭さんなど香港の民主活動家、１０人が香港国家安全維持法違反の疑いで逮捕されたということですが、具体的にどの行為が法律に触れたのか、拘束中当局から一切説明はなかったという周庭さんの指摘は人権保護の観点において世界的な見地からとても大きな問題です。
周庭さんもおっしゃっているように、香港国家安全維持法は政治的な弾圧をするのが狙いであると思われても仕方ありません。
これまでお伝えしてきたように、中国の習近平国家主席の狙いは中華圏の再興であり、その手段は中国共産党の権力の維持、国内の人権軽視、すなわち“始めに国家（中国共産党）ありき”、および世界的な覇権主義の展開です。
こうした戦略の致命的な欠陥は国民一人一人の自由な発想を阻害してしまうことです。
長い目で見れば、自由な発想が出来ないような社会が、自由な発想を思う存分に発揮出来る社会に打ち勝てるはずがないのは自明の理です。
ただし、問題は中国の経済力、および軍事力の強化です。
習近平国家主席は、こうした自国のパワーがアメリカを追い越した時点で更なる中国の国際社会における影響力をいろいろな局面で発揮してくることは明らかです。
ということで、習近平国家主席が自由、平等の尊重、人権保護、民主（主権在民）、および法治をベースとした方針に転換しないかぎり、自由主義陣営の国々は共同で中国のこうした動きにしっかりと対応することがとても重要なのです。
なお、今、進められている「インド太平洋構想」はこうした動きの一つと言えます。
ちなみに、日本における「インド太平洋構想」はざっと以下の通りです。（詳細はこちらを参照）
日本のインド太平洋構想は、インド洋と太平洋を繋ぎ、アフリカとアジアを繋ぐことで国際社会の安定と繁栄の実現を目指す。構想実現の3本柱として、�），了拉曄�航行の自由、自由貿易等の普及・定着、��経済的繁栄の追求、�Ｊ刃造醗堕蠅粒諒檗△�挙げられている。
