7月20日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でコロナ禍が変えた防犯カメラの新たなニーズについて取り上げていたのでご紹介します。
新型コロナウイルスの影響を受けつつも、思わぬ需要が見えてきた防犯カメラについて、2つの事例で緊迫の様子を捉えていました。
1つ目は湘南国際村センターの取り組みについてです。
こちらでは新型コロナの無症状・軽症患者を受け入れています。
6月中旬、入所者はゼロになりましたが、その後受け入れ数が増え、現在(放送時点)は56人が入所しています。
元々医療機関ではなく、宿泊施設のため緊急で設備などを整えました。
そこで活躍していたのがインターネット経由で離れた場所から映像を見られる市販の防犯カメラです。
レッドゾーンへのスタッフの出入りを減らし、患者の生活支援をする目的です。
神奈川県新型コロナ対策本部の南川修さんは次のようにおっしゃっています。
「(レッドゾーンは)防護服を着て、マスクをしたりして入らないといけないということになっているんですね。」
「そのためにいちいち中に入って水とかの数を数えてからっていうことになると、また一旦出てこなければいけないので、映像で確認出来れば1回で済むというかたちになります。」
接触しないよう、屋外にもカメラを設置し、救急車の出入りもカメラが捉えています。
2つ目は防犯カメラメーカーの取り組みについてです。
東京・五反田、五反田バレーと呼ばれ、ベンチャー企業が集まるこの地に防犯カメラを作ったセーフィー株式会社があります。
大手企業も手掛け、インターネットで録画するクラウド録画カメラのシェアは30%を超え、1位です。(テクノ・システム・リサーチ調べ)
売りは月1200円(7日間録画)からの手軽な利用料金と高いセキュリティです。
しかし、インターネットにつなぐカメラは流出のリスクが付きものです。
ハッキングした映像を勝手に公開する“のぞき見サイト”もあります。
佐渡島隆平社長は次のようにおっしゃっています。
「こういったかたちでクルマが動いているのが見えますけども、インターネットから勝手に見られている状況になっています。」
防犯目的に設置したはずのコインランドリーやプライベートな家の庭などが知らないうちに見られているのです。
セーフィーの製品はカメラ自体にソフトウェアを搭載し、暗号化し、流出を防いでいるといいます。
警備最大手のセコムがシステムを採用するなど、拡大する一方、コロナ禍で今転換点を迎えています。
佐渡島社長は次のようにおっしゃっています。
「飲食や小売りの休業が相次いだので、我々の新規営業が出来なくて非常に厳しかったです。」
「新しい分野の開拓を今必死にやっているところです。」
製品の主な顧客はコロナの影響が厳しい飲食業界、大口チェーンとの契約が打ち切られるなど苦戦し、今は社長自ら積極的な営業活動に動いています。
以下は売り込み先のレストラン「ウルトラチョップ プリュ」での佐渡島社長とオーナー、高岳史典さんとのやり取りです。
(佐渡島社長)
「最近、コロナで映像の使い方とか、変わりましたか?」
(高岳オーナー)
「元々防犯カメラですね、一番初めは。」
「だけど最近、コロナの件があったので、お客様の込み具合を空間で把握したい、どれぐらい密集しているかとか、密を避けるためにもう少し(椅子の間隔を)離した方がいいか、それとやっぱりカメラ、空間でないと分からないので、そういう意味では新しい使い方だと思います。」
現場に足を運ぶことで防犯だけではない新しい需要を(設置済みの)このカメラに見出しました。
更に新たな開拓先として建設業界があります。
先週(放送時点)、東京都内の建設現場で多数の感染者が確認されるなど、対策を迫られています。
鹿島建設の建設現場(神奈川・平塚市)を監督する工事事務所を訪れると社員が見つめていたのはずらりと並んだモニター、東京ドーム15個分にも及ぶ建設地をカメラでまとめて管理しています。
現場監督が事務所から指示を出し、その様子を映像で確認、現場向けに開発した新製品のカメラです。
リモート化を進めることで「3密」とともにあのイメージを払拭したいといいます。
鹿島建設の横尾敦さんは次のようにおっしゃっています。
「いわゆる「きつい」、「汚い」、「危険」て3Kと言われていますよね。」
「今回のコロナもきっかけにしまして、そういったような(リモートの)動きを加速させていきたいと思っています。」
新型コロナが変えた防犯カメラの新たなニーズについて、佐渡島社長は次のようにおっしゃっています。
「こういうコロナの最前線で(防犯カメラを)使っていただいているというところは我々も最初予想していたわけではなかったので、すごくビックリしています。」
「遠隔というところが世の中の当たり前になってきているので、我々も遠隔で何かをするというところにどんどん貢献していきたいなと思っています。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
そもそも防犯カメラは、いちいち人を配置しなくても、死角のないように複数のカメラを配置してそれぞれの映像を離れたところでまとめてチェックして犯罪者を特定するというのが狙いです。
一方、コロナ禍以前は企業など組織内のコミュニケーションはフェイストゥフェイス(face to face)が基本でした。
ところがコロナ禍では感染拡大防止のため「3密」(密閉・密集・密接)回避があらゆるところで行動様式のキーワードになりました。
そこで「3密」回避という観点でこれまでのあらゆる行動様式が見直されるようになったのです。
そして具体的には在宅勤務、テレビ会議システム、あるいはソーシャルディスタンスといったような手段が取られるようになったのです。
こうした観点から逆にこれらの手段をより効果的にするために従来の関連技術が見直されつつあるというのが現状だと思います。
今回ご紹介した防犯カメラはまさに防犯カメラの技術を「3密」の回避対策という新たな用途に応用しようという試みなのです。
そして、セーフィーの開発した防犯カメラはカメラ自体にセキュリティ対策が施されているのでデータ流出の心配がないという大きなメリットがあります。
このメリットは防犯対策以外の用途においてもとても大きいです。
こうしたことから、今や“防犯カメラ”の用途は様々な分野に広がりつつあるので、別なネーミングを考えた方がいいのかもしれません。
例えば“IoTカメラ”などはいかがでしょうか。