7月10日(金)放送の「報道ライブ インサイドOUT」(BS11イレブン)で中国の新型コロナウイルス対策の裏には多くのボランティアの存在があったことについて取り上げていたのでご紹介します。
新型コロナウイルスの発生から半年以上が経ちました。
ウイルスの発生源と言われる中国の武漢を巡って米中が対立を深める中、これまで報道されてこなかったことについて取り上げていました。
それは、武漢に短期間のうちに感染者用に火神山病院という名前の病院が建てられた理由についてです。
ジャーナリストで拓殖大学教授の富坂聡さんは次のようにおっしゃっています。
「(火神山病院を)10日で造ると宣言して造ったんですよね。」
「実は日本のコロナ対策って武漢の教訓が全くないんですよ。」
「というのは、ど真ん中の情報が入ってこなかったんです、日本に。」
「つまり、武漢で何が起こったかというのは、隠ぺいとかそういうのはいっぱい入って来るんですけど、実際に何をやったかというのは誰も知らない。」
「で、これはその典型なんですけども、例えば10日で造るって、本来は宣伝だったんですよ。」
「どういうことかというと、10日で造るって言わなくてもいいんですよ。」
「「10日で造って10日で出来たでしょ、すごいでしょ」でいいんですけど、なぜかというと、シンボルが欲しかったんですよ。」
「それで我々出来るということで「10日で造れ」なんですよ。」
「だから本来は11日で造っても褒められることなのに、わざわざ自分にプレッシャーをかけたわけです。」
「これをやった時の動員力って凄いなというのが日本に伝わってない。」
「例えば、これは武漢を切り取ってそこに医療資源を集中するというやり方なんですけども、その集中させる時に封鎖してますので誰をどういう配置にするかということをやってないと無茶苦茶になる。」
「で、実は初日に、すごい早い段階で6000人を入れている、第一弾として医者、専門家を。」
「そうすると、例えば東京で同じことをやったら、不動産会社いくつ必要ですかって話です。」
「どこに空き家があって、適当なところがあって、住まいがすぐに動かせる。」
「で、誰が送り迎えするんですかと。」
「こういう6000人はめ込んで、最終的には4万2000人ぶち込んでいく、段階的に分けて。」
「それを全部きれいに振り分けて、で同時に市民は外に出られませんから、その人たちに食料品も配給していく。」
「で、例えば10日間で造る時に重機をどのトラックを入れてどのトラックは入れない、封鎖しているんで。」
「それを全部機能的にやって、過不足なく重機を全部調整して10日で。」
「例えば、設計図は23時間で作っているんですよ。」
「だからそういうことを詳細に日本は見ておく必要があるんじゃないの。」
「(この人海戦術は誰が動いたのかという問いに対して、)ほとんどはボランティア募集なんですよ。」
「5月末までの段階で、このコロナで動いた中国のボランティアは881万人だと。」
「実はこのボランティアは非常に大事で、PCR検査なんかも今のボランティアがやってますんで。」
「この専門性が今ちょっと問題になっていますけども、ただ要するに大きいマンションだと1棟が小区(?)になるんですけども、その入り口にみんな見張っていて、出入りとかチェックして体温も測ったりする、これ全部ボランティア。」
「だから誰がどこでどういうふうに誰と会っているか、そういうのも大体見えているんですけども、全部ボランティアでやっている。」
「病院の送り迎えやスーパーで自分の好きなものを買えませんから決まったものを配給するんですけども全部ボランティア。」
「(なぜ社会主義国、中国でボランティアなのかという問いに対して、)まず一つは中国は災害が多いので四川の大地震ぐらいからボランティアがつくってきて、今は登録しているのは1億6000万人います。」
「その中から今回800万人が動いたと。」
「で、これインセンティブが働いていて、特に最近はスマホなんかで社会スコアってありますよね、信用ポイントみたいな。」
「かなりポイントが上がるんですよ、ボランティアやるとね。」
「例えば、将来住宅ローンを借りる時に、信用度が高いと金利は低いんですよ。」
「だから出世も出来るし、高校生だったら大学入試の大きなポイントになりますね。」
「だからいろんなところに響いてくるんで積極的にやるっていうのはあります。」
「(社会スコアで反社会的なことを言ったり、デモをするとポイントが下がるという状況において、)ボランティアでポイントを上げて、デモでポイントを使うとかね。」
「(習近平国家主席が感染者用の病院を10日で造るように指示した目的について、)彼は最後、自分の演説を別の雑誌に転載した時、一言加えているんですけども、「これは「ロジスティック戦争」だ!」と言ったんですよ。」
「つまり、(国民を)動員する力を見せるということで、これは「動員戦なんだ」ということを言って、これは戦争で言うとこうきん部隊(?)ですよね。」
「(つまり戦争が起きた時にはこういうバックアップ体制、輸送から兵站(へいたん)までをやる訓練だったという位置付けなのかという問いに対して、)そうですね。」
「本来は頭で考えたことを指先がきれいに動くということは中国は苦手な部分だったんです。」
「だから今回は結構きれいに動かしたんで、注目しなきゃいけないというか、ちょっと恐ろしいなと私は思いましたけどね。」
「(いざとなると1億6000万人のポイント狙いの人が戦争をバックアップするというのは怖いという指摘について、)ただ韓国も最近(コロナ禍で人的・物的被害が大きかった)大邱(テグ)の経験を医療スタッフなどが手記を出しているんですけど、それを読むと2400人のボランティアがかなり大きな貢献だったと。」
「2つ挙げて、1つはドライブスルーでのPCR検査ともう一つはボランティアだったと言っているんで、日本も早くその体制を作っておかないと、もうちょっと大きなヤバい感染症が広がった時に対応出来なくなるよということは考えておかなきゃいけないですね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
この番組を通じて中国の新型コロナウイルス対策について具体的な内容を知ることが出来ました。
その内容をざっと以下にまとめてみました。
・災害対策やウイルス感染対策を狙いとして、今は1億6000万人がボランティアとして登録していること
・新型コロナウイルスの発生源と言われる中国の武漢ではその中から一部のボランティアが動員され、10日間で感染者専用の病院を建設したこと
・病院の建設だけでなく、PCR検査や体温測定などを含め、800万人のボランティアが動員されたこと
・こうしたボランティアには信用ポイントと言ったようなインセンティブが働いていること
それにしてもボランティアだけで、その中から多くのボランティアの作業計画を作成したり、作業の進捗管理をしたりといったプロジェクト管理まで出来るというシステムには驚かされます。(より詳細なボランティア活動の内容についてはこちらを参照)
こうしたボランティア活動のシステムについては、新型コロナウイルス感染の第二波、第三波に備えて日本政府にも是非参考にしていただきたいと思います。
なお、習近平国家主席は武漢に10日間で感染者専用の病院を建設した狙いについて、単に感染者対策としてだけでなく「ロジスティック戦争」の実戦訓練としての狙いもあったといいますが、こうした狙いについて、良し悪しはともかく、習近平国家主席は優れた戦略家であるとあらためて思いました。