2020年09月17日
アイデアよもやま話 No.4750 テレワークが変える障害者の働き方!

6月8日(月)放送の「ニュース シブ5時」(NHK総合テレビ)でテレワークが変える障害者の働き方について取り上げていたのでご紹介します。

なお、今回のレポーターは竹内哲哉解説委員でした。

竹内さんは福祉現場を取材して20年のベテランで、ご自身も車椅子生活をされています。

 

テレワークは働くことが難しいと言われていた障害のある人、特に重度の障害のある人にとって働き方や雇用を大きく変えるといいます。

これまでテレワークは子育てをしているお母さんを支援する目的で導入する企業が多かったのですが、障害者が感じる通勤の3つの壁があるといいます。

それは、移動手段の壁、移動時間の壁、心理的な壁です。

例えば、バリアフリーが整っていればいいんですが、整っていないと順路や交通手段を変えなければなりません。

最短では移動出来ないのです。

更に電車なんかですと、渡し板を駅員さんに頼まなければいけません。

これはすぐに駅員さんが来てくれるということではなくて、時間がかかってしまいます。

そして、心理的な壁なんですけども、引け目を感じてしまうということなんですが、ラッシュ時には車椅子は場所を取るので周りに迷惑をかけてしまうので心が折れてしまいがちといいます。

こうした3つの壁があることから通勤を諦める障害者も少なくないといいます。

働く意欲も能力もある貴重な働き手を失うのは社会の損失といっても過言ではないと思います。

 

そうすると、テレワークが進むことでこの3つの壁が少しでも無くなって働き易くなるのですが、テレワークは昔から障害者の間ではやられていて30年以上の歴史があります。

しかし、これまではテレワークの有効性について企業側が非常に懐疑的で導入が進まないという実態がありました。

それが今回の新型コロナウイルスの感染拡大の対策としてテレワークに対する価値観が大きく変わって企業も前向きになったのです。

実際に障害者のテレワークを支援している社会福祉法人は、これまで多くの企業が面接は会社で行うということから採用の段階からテレワークに難色を示していたといいます。

しかし、今はオンラインで行いましょうというふうになって、移動に困難があることに理解を示してくれて、在宅での仕事に抵抗が無くなってきているというのです。

流れが変わって来たのです。

 

ただ、そもそも障害者は働くということに関しては大きな問題があります。

障害者はヘルパーを利用して生活しているのですが、国と自治体から公的支援、平たく言えばヘルパーを雇うお金の支援を受けているのですが、現在の制度だとそもそも働いている時に会社であろうとテレワークであろうと、この公的支援を利用出来ないということになっているのです。

つまり、勤務時間中に障害者がお水を飲みたいとか、トイレに行きたいとかありますが、ヘルパーを使っちゃダメなんです。

これは、国は経済活動に税金は使ってはいけないということが言えます。

こうした中、企業の中には自費でヘルパーを雇って複数の障害者に支援を行っているところもあります。

ただ、在宅勤務になると、個々にヘルパーを配置しなければならないので非常に厳しい状況になります。

また家族に頼むという選択肢もありますが、やはり限界があります。

で、重度の障害者は仕事かヘルパーかという選択を迫られてしまうのです。

そこで、さいたま市では全国で始めて1年前から独自の助成制度を始めました。

仕事中でも生活の介護を受けられるようにし、現在、3人が利用中で働いています。

ただ、まだ対象が重度の障碍者に限られているので、対象範囲を広げて欲しいという要望が出ています。

勿論、さいたま市に限ったことではないので、国全体に広げて欲しいという障害者からの要望はあります。

 

で、障害があっても技術革新と通信技術の発達によってテレワークが出来る仕事が増えて、障害のある人がない人と同様に働ける環境は整備されてきています。

ただテレワークは万能ではありません。

全ての障害者にとって有効ではないし、障害者の隔離につながる恐れもあります。

つまり、会社に出勤しなくていいと言われてしまうと、障害者が見えない存在になってしまいます。

そうすると、障害のある人とない人の間に交流が生まれませんから、相互理解を深めることが出来ません。

相互理解が進まないと障害者への配慮も失われてしまいますので、極論なんですが、「ユニバーサルトイレは作んなくてもいいじゃん」みたいな理解が進んでしまうと本末転倒で意味が無くなってしまうということになると思います。

新しい技術を有効に活用出来るかは最終的には人がカギを握ることになると思います。

テレワークになってコミュニケーションが取れないで不安を感じている障害者も沢山いるといいますが、見えないからこそ不安を感じている人とは密に連絡を取り合って孤立させないということが必要です。

で、テレワーク時代の仕事における距離感は障害の有る無しに関係なくこれから構築していかなければならない課題だと思います。

お互いの仕事を理解して尊重する、時には生活面にも配慮をしながら、新しい働き方を作り上げていくことが全ての人にとって働き易い環境になるのではないでしょうか。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

新型コロナウイルスの感染拡大は、多くの国民にとってこれまでの日常生活を困難にする状況をもたらしています。

しかし一方で障害者にとってはこれまでよりも働き易い環境をもたらしているようです。

それは、健常者も感染リスクを少なくするために「3密」の回避ということから否応なく障害者と同様の制約の中で暮らさなければならなくなったからです。

例えば、コロナ禍においてオンライン面接が普及していますが、これなどは障害者にとって大きなハードルが無くなったことになります。

また、IT関連企業の中にはコロナ禍における暮らしの制約を追い風に業績を伸ばしている企業もありますから、こうした企業は人材不足ぎみと思われます。

そして、IT関連の業務は在宅勤務に比較的適しています。

ですから、IT関連のスキルの高い障害者にとってはこれまでよりも格段に自分のスキルを発揮出来るチャンスが増えていると思われます。

 

一方で、番組を通して法的な制約があることが分かりました。

障害者はヘルパーを雇うお金の支援を受けていますが、現在の制度だと障害者が働いている時に公的支援を利用出来ないということになっているのです。

こうした中、企業の中には自費でヘルパーを雇って複数の障害者に支援を行っているところもありますが、在宅勤務だと個々にヘルパーを配置しなければならないので非常に厳しい状況といいます。

そこで、さいたま市では全国で始めて1年前から独自の助成制度を始めました。

しかし、まだ対象が重度の障害者に限られています。

こうした問題については、更なる介護ロボットの進化が待たれます。

なお、軽度の身障者に対しては、次回ご紹介するパワーアシストスーツが役立つかもしれません。

 

またテレワークは万能ではありません。

全ての障害者にとって有効ではないし、障害者の隔離につながる恐れもあるというのです。

しかし、こうした問題はコロナ禍における健常者の在宅勤務も同様です。

そこで定期的にテレビ会議システムを使って部門単位などで業務の進捗報告を中心に情報共有をしている企業も出てきています。

ですから、テレビ会議システムの有効活用により密に連絡を取り合えるようにすればこうした問題はかなり改善されると思われます。

このように、竹内さんも指摘されているようにコロナ禍を機に新しい働き方を作り上げていくことが全ての人にとって働き易い環境になると期待出来ます。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています