2020年08月22日
プロジェクト管理と日常生活 No.655 『新型コロナウイルス対策を国家プロジェクトと見なすと・・・』

5月12日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で新型コロナウイルスへの対応策でも必要なプロジェクト管理における“最適化”の考え方について取り上げていたのでご紹介します。 

 

5月12日の時点では緊急事態宣言発令中でしたが、出口戦略については検討が続けられていました。

そうした中、解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。

「危機に強い組織は自立した現場を持っているかどうかだということだと思っています。」

「これは企業組織においてもスポーツチームにおいても軍隊においても全く同じなんです。」

「やっぱり指示待ち族が多いとダメなんですよね。」

「その観点で照らし合わせれば、今回の出口戦略はやはり都道府県の知事さんに大胆に任せて政府は介在しないというのが大事だと思います。」

「(そうなると政府の役割は何かという問いに対して、)ヒト・モノ・カネ、そして情報のサポート役に徹するということだと思いますね。」

「結局、指示待ち族が多いと、また同じことを繰り返して鈍重な対応になってしまいますから、ここで地方自治のあり方を見直して欲しいと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組を通してあらためて思うのは、農業や観光などといったように自治体ごとに産業の基盤が異なるということです。

また、年齢構成も医療施設の充実度合いも異なります。

そして、こういった具体的な状況を最も把握しているのは各自治体の知事なのです。

一方で、こうした個々の自治体における状況とは別に、基本的な新型コロナウイルス対策のあり方は共通しています。

 

そこで、新型コロナウイルス対策を国家的なプロジェクトと見なせば、その目的は以下のような内容になります。

・感染者数、および死者数を最小限に食い止めること

・上記とのバランスを取りながら、経済的な損失を最小限に食い止めること

・治療薬やワクチンの開発、あるいは海外からの供給により、早期の終息を図ること

 

そして、事実上以下のようなおおまかな体制になります。

プロジェクトオーナー:菅官房長官

プロジェクトリーダー:西村コロナ対策大臣

プロジェクトオフィス:内閣官房内に設置された事務局

サブリーダー    :地方自治体の知事、あるいは知事に任命された管理職

 

また、プロジェクト管理における作業、および作業プロセスの内容には大きく“標準”と“最適化”があります。

新型コロナウイルスに対する取り組みにおける“標準”とは、各自治体が共通して守るべきルールです。

このルールは当然プロジェクトリーダー傘下のプロジェクトオフィスで検討し、プロジェクトリーダーが承認します。

 

一方、“最適化”とは、各自治体がそれぞれの特性に合わせてルールをより厳しくしたり、あるいは緩めたりといったように標準ルールから逸脱した独自のルールで、サブリーダーである各首長が取り決めます。

しかし、逸脱の場合はプロジェクトリーダーによる認可が必要となります。

ですから、各首長には単に国が定めた標準に則った対策を進めるのではなく、自治体の特性に応じた最適な対策を検討することが求められるのです。

 

こうした枠組みで新型コロナウイルス対策を遂行するうえで、プロジェクトオフィスには以下のような役割も必要で、プロジェクトリーダーが承認します。

・管理項目、および管理基準の設定

・上記に基づいた定期的なデータの収集、集計、分析

・上記の分析に基づいた各自治体へのアドバイス

・プロジェクト管理支援アプリの構築

・タイムリーな資金給付

 

ということで、プロジェクト管理の観点から、よりスピーディに、より効果的、かつ効率的に新型コロナウイルス対策を実施するうえで、国家プロジェクトとしての体制づくり、プロジェクト管理支援アプリの構築、および“最適化”がとても重要なのです。

 

こうした観点から、特に毎日、小池都知事が公表している都内の感染者数などの集計プロセスを見ると、手作業やファックスといったように前近代的な方法で行われており、普段の作業プロセスに対しても生産性の低さを疑ってしまいます。

国による国民1人当たり10万円を配る特別定額給付金についても同様のことが言えます。


 
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