2020年08月12日
アイデアよもやま話 No.4719 ノーベル化学賞受賞者、吉野彰博士からのメッセージ その2 本来のゴールとは・・・

6月17日(水)放送の「ミヤネ屋」(日本テレビ)でノーベル化学賞受賞者、吉野彰博士からのメッセージについて取り上げていました。

そこで、2回にわたってご紹介します。

2回目は、吉野彰博士の本来のゴールについてです。

 

リチウムイオン電池(バッテリー)の開発で2019年ノーベル化学賞を受賞した吉野彰博士にとってノーベル賞はゴールではありません。

吉野さんは次のようにおっしゃっています。

「私が見ているのは2025年なのよ。」

「大阪万博、あの年は重要な年になるよ。」

「電気自動車(EV)に代わるのは間違いないと思うんだけどね。」

「我々が想像しているような電気自動車とは多分全く違うだろうね。」

 

実はその答えが技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター(LIBTEC)(大阪)にありました。

今、吉野さんが心血を注いで開発を進めているものについて次のようにおっしゃっています。

「ちょっと今までのリチウムイオン電池とは違う、新しい電池になると思いますね。」

「全固体電池は液体を使わないから、安全性という面でもはるかに良くなるよね。」

「今のリチウムイオン電池は電解液、液体が入っているんですよ。」

「液体を固体にしましょうというのがこっちなんですよ。」

「固体だから燃えにくいし、安定性も非常に高いんでね。」

「まだ実用化されていないんですけど、これから実用化していきましょうっていう。」

 

現在、リチウムイオン電池には可燃性の液体が使われています。

安全性は向上しているものの、異常発熱などにより発火するリスクはゼロではありません。

そこで今、吉野さんたちが目指しているが液体の固体化です。

これが実現すると、発火のリスクが抑えられると同時に、温度の変化にも強くなり、より多くの電気を蓄えることが出来るといいます。

吉野さんは次のようにおっしゃっています。

「一つは充電時間が短くなるっていうのがありますよね。」

「今、我々が目標にしているのは、電気自動車のような大きな全固体電池を作ろうとしているわけです。」

「(EVの充電時間について、)急速充電で40分〜1時間ぐらいだろうね、今でね。」

「目標は5分〜10分。」

 

夢の電池、全固体電池はEVの進化のカギになるという吉野さんは次のようにおっしゃっています。

「AIとかIoTの技術が2025年に実用化の時期に入ってくると、自動運転の世界に入ってくる。」

「(フル充電での走行距離がすごく伸びるのではという問いに対して、)そんなもん関係なくなってくる。」

「だって、乗り継げばいいわけでしょ。」

「クルマが勝手に来るんだから、バッテリー切れを起こしたら。」

「次のクルマがちゃんと待ってくれていますよ。」

「(それは誰のクルマかという問いに対して、)スマホで言えばキャリア会社みたいな、そういう会社が出来るわけですよ。」

「そこが管理して。」

「(自分がクルマを買おうって感じではなくなるのかという問いに対して、)なくなる、なくなる。」

「年会費を払ったら、多分月1万円ぐらいのイメージですよ。」

「(月1万円でクルマが自宅までやってくるのかという問いに対して、)30秒以内にね。」

 

今から10年後の2030年、全固体電池を積んだEVをみんなで共有する世界、タクシーのように移動したい時に呼び出すと最も近くの契約店舗からクルマが自動運転でやって来ます。

そして目的地に到着すると、そのクルマは再び自動運転で充電ステーションや次の利用者のもとへと向かいます。

吉野さんは次のようにおっしゃっています。

「2030年以降には、そういう世界が見えてくるんじゃないかな。」

「2025年からスタートするんですよ。」

吉野さんが開発した電池によって、近い将来新しい時代がやって来ると言います。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

吉野博士の提案されている、2025年からスタートすると見られるクルマ社会について、私の考えも併せて以下にまとめてみました。

・EVに搭載する電池(バッテリー)は全固体電池に移行

・EVの充電時間の目標は5分〜10分

・完全自動運転車

・カーシェアリング

・用途に応じたクルマの利用

・EV搭載バッテリーの一般家庭、およびオフィス用バッテリーとしての活用(夜間の充電、および昼間の給電による電力の需給バランスの最適化への貢献)

 

なお、自動運転車の乗り継ぎについては意図的に除きました。

なぜならば、1回の急速充電での航続可能距離が全固体電池の搭載により飛躍的に伸びるので、1日の走行においてはほとんど乗り継ぎが不要になると見込まれるからです。

また、乗り継ぎは乗客にとって乗り降りや荷物の移動といったような手間を要し、不便さを感じさせるからです。

 

ということで、最近は国内の代表的なEVメーカー、日産自動車もEV搭載のバッテリーを家庭用のバッテリーとしても活用出来ることをEVの販売プロモーションとして積極的に打ち出しているように、EVは移動手段としてだけでなく、家庭やオフィスなどの電力源としての用途もあるのです。

しかも一部の専門家は搭載するバッテリーの大容量化は車体を重くし、電費を悪化させることから否定的ですが、バッテリーの大容量化には以下のようなメリットがあります。

・フル充電での航続距離を伸ばし、従ってフル充電での外出であれば長距離ドライブを除き、外出先での充電は不要になる

・太陽光発電との組み合わせにより、駐車中は太陽光発電での余剰電力を充電するバッテリーとしての役割を果たすことが出来る

・災害などによる停電時には一般家庭やオフィスなどの電源として長時間活用出来る

 

ということで、吉野博士も期待を寄せているように、バッテリーの開発は2025年を一つの大きな目標として更なる飛躍を遂げると大いに期待出来るのです。

そして、私たちの日々の暮らしにおいても、単なる移動手段としてだけでなく、非常用のみならず、日々の電源としても身近な存在になると期待出来るのです。


更にその先の近未来ですが、こうした低価格で大容量、かつ小型のバッテリーの登場は以前から提唱されていたスマートグリッド(次世代送電網 :電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網)実現の起爆剤になるのではないかと私は密かに期待しています。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています