3月23日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で印刷して作る”アート作品”について取り上げていたのでご紹介します。
事務機器、光学機器などを製造するメーカー、株式会社リコーは凸凹のあるアートを本物そっくりに印刷する技術を開発しました。
そのプロセスは以下の通りです。
・作品のスキャン
スキャンを数回行うことにより色彩や質感のデータを収集する
・特殊なプリンターでスキャンして収集したデータを印刷してかたちを生成
1層につき、3〜4分かけて印刷し、これを60層印刷する
何回も塗り重ねをすることで、絵の表面の凸凹や質感を忠実に再現する
実際に、番組で現代美術家、日比野 克彦さんの犬を描いた作品「BOW」の印刷を試みました。
そして、印刷開始から4時間ほどでようやく色付けが始まりました。
原画と同じようにいろいろな色が使われています。
印刷が終わり、その絵を原画と比べてもほとんど違いが分からないといいます。
実際に刷毛で塗ったような質感も忠実に再現されています。
しかし、断面を見ると印刷した方は白いインクが見えるので原画かどうか識別出来るといいます。
実は、この印刷技術でアートを本物そっくりに印刷するだけでなく、新しいアート、「UVインク立体版画」を作り出すことも出来るのです。
そして、このサービスは既に提供中といいます。
リコー IP事業本部の野村 敏宏さんは次のようにおっしゃっています。
「デジタルデータさえあれば、質感、色、凸凹などを自由に作って、新しいオリジナル作品を作っていきたいと思っています。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
私は以前からハワイ在住の画家、クリスチャン・ラッセンの描く絵がとても好きで、何回か展示会に出向いたことがあります。
しかし、高額なので購入したことはありません。
でも今回ご紹介した印刷技術を用いれば、機械的に、かつ短期的に大量の贋作を作れてしまいます。
残念ながらこうした贋作業者が登場してくると思われますから要注意です。
しかし、一方で、正規のルートでこの印刷技術による本物そっくりや新規の“アート作品”が登場して来れば、それほど高くない価格で購入出来るようになります。
ということで、是非この印刷技術によりアート愛好家が本物そっくりの“アート作品”を自宅でも楽しめるようになって欲しいと思います。
一方で、絵画のようなアート作品を大量にコピーして販売するのは作者を冒涜するとんでもないと行為であるという批判もあると思います。
しかし、考えてみれば、映画やドラマ、あるいはクラシックコンサートなどはどんな評価の高いものであっても今や個人レベルでいくらでも手に入れて繰り返し楽しむことが出来ます。
ですから、絵画や彫刻などにおいても今回ご紹介したような技術により、妥当な価格で“コピー作品”として市販化されてもいいのではないかと思うのです。