2020年05月19日
アイデアよもやま話 No.4646 今注目されるアマゾンキラー!

2月7日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で今注目されるアマゾンキラーについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

アマゾンや楽天など、ネットショッピングの際に利用する人は多いと思いますが、実は今、アマゾンキラーと呼ばれる企業が注目を集めています。

 

どんな通販サイトを使っているか街で聞くと、やはり多かったのはアマゾンや楽天でした。

一方で、次のような声もありました。

「アマゾンより直営の方(自社サイト)が安い場合はそっちで買います。」

 

「直販のところだと、DVDだったらDVDプラス大きい本が2〜3冊付いたりとか、アマゾンはクリアファイルだけだったのが、そういう他の(特典)も付いたりすることもあるので・・・」

 

「(大手サイトだと)偽物とかそういううわさを聞いたことがあるので・・・」

 

大手通販サイトではなく自社サイト、つまり企業やお店などのホームページから直接購入するという人たちもいました。

実は今、自社のホームページで直接販売する企業が増えているのです。

1月に日本に初上陸したシューズメーカー、オールバーズ(東京・渋谷区)では昨年ある騒動がありました。

オールバーズのエリック・ハスケル国際責任者は次のようにおっしゃっています。

「アマゾンは我々のデザインを多く借りた靴を作った。」

 

オールバーズは自社の人気商品とよく似た靴をアマゾンが自社ブランドで売っていると主張、しかも価格は半額以下、アマゾン側は「これはデザインを盗んだものではない」と主張、こうした騒動などもあり、オールバーズは自社サイトでの販売の方がブランドイメージを築き易いと考えたのです。

しかし、自社サイトでの販売は、決済や商品の発送なども全て自社で行う必要があるなど、手間がかかります。

そこで利用を決めたのがショッピファイ(shopify)です。

ショッピファイとは、カナダの企業が展開するサービスです。

2006年から小さな会社や個人でも手軽にネット通販を始められるよう、自社サイトづくりの支援を始めました。

その後、パートナーと呼ばれる企業との連携で決済機能を強化するなどして急成長、カナダとニューヨークで株式を上場し、現在は175ヵ国で100万以上の会社が利用しているといいます。

日本でも2年前に事業を始め、ゴーゴーカレーなど既に数千社が利用しています。

利用料は月々29ドル(約3000円)からです。

 

在庫管理や発送はショッピファイと提携するパートナー企業が請け負ってくれます。

IT関連企業のトランスコスモス株式会社 ECダイレクトセールス本部の政岡 啓介さんは次のようにおっしゃっています。

「4月からこちら(千葉県柏市内の倉庫)のスペースを使って、ショッピファイ用に構築を進めているところです。」

 

トランスコスモスもショッピファイのパートナー企業の一つです。

現在所有している物流施設を1.3倍に拡大、ショッピファイと契約する500店舗分の在庫管理や発送を請け負います。

トランスコスモス技術研究所の開発責任者、下田 昌平さんは次のようにおっしゃっています。

「Eコマースは新たな事業の柱として立ち上げた部分もあるんですけど、あらためてここでショッピファイを活用して、その柱を更に作り上げていく・・・」

 

日本でも徐々に存在感を増すショッピファイ、日本法人のトップが番組のインタビューに応じました。

マーク・ワング社長は次のようにおっしゃっています。

「アマゾンのように顧客のデータを吸い上げる場では、企業は自分たちのブランドイメージを築きにくい。」

「企業は他の選択肢がないか探していた。」

「それがショッピファイのチャンスになった。」

 

「日本はブランドを重視して、価格にばかり流されない。」

「ショッピファイにとって理想的な市場で北米に次ぐ市場になるかもしれない。」

 

自分たちの強みを生かし、日本市場での成長に自信を見せます。

 

実際にショッピファイを利用する会社を番組スタッフが訪ねました。

ネット販売を専業とするレザーブランド、シュリンクス(SYRINX)(東京・港区)は1枚の皮で出来ているこだわりの名刺入れが人気です。

これまでアマゾンや楽天、ヤフーなど様々なサイトを活用し、売り上げは好調でしたが、既にヤフー、楽天、アマゾンでの販売を止め、今年中にアマゾンからの撤退も決めています。

その理由について、シュリンクスを展開する佐藤 宏尚さんは次のようにおっしゃっています。

「やはり(ホームページなど)雑多なイメージ、お客さんはうち(の会社)からモノを買ったのではなくて、アマゾンで名刺入れを買った、この商品の場合は。」

「そういうふうな体験になってしまう。」

「そうすると、やはりうちのブランドのファンが増えにくかったり、リピーターが増えにくかったり、知名度自体がアップしにくかったりというディメリットが生じてしまうと。」

 

大手の通販サイトだと、各サイトの仕様に合わせたデザインになってしまい、ブランドイメージなどを伝えづらいといいます。

しかし、ショッピファイではブランド独自のデザインでサイトを展開することが出来ます。

更に大手通販サイトは売り上げによって販売手数料を設けているケースが多い一方、ショッピファイは販売手数料は設けず、月額料金のみで利用出来るのも魅力だといいます。

佐藤さんは次のようにおっしゃっています。

「うちみたいな、個性的なものを扱うのであれば、アマゾンでやる理由はそれほど高くはないと思います。」

「一般的に流通しているようなものを多くの方に販売するという目的であれば、アマゾンの方が適していると思いますよね。」

 

ショッピファイはネット通販業界の新たな勢力となるのかについて、ネット通販業界に詳しい株式会社フラクタ(FRACTA)(東京・渋谷区)の河野 貴信社長は次のようにおっしゃっています。

「(ショッピファイは)楽天、アマゾンの対抗としての色合いが強く見えちゃうと思うんですけど、真の目指す未来は全く別軸の新しいビジネスのかたちの基盤になっていくんじゃないかと僕個人は思っています。」

「日本のものが世界中で売れていくためのベースになったということは出てくるんじゃないか。」

 

私たちはインターネットで買い物をする時に、だいたい大手の通販サイトに行って商品を選ぶということが多いですけども、そうした買い物の仕方が変わってくる可能性があります。

シュリンクスのように、大手の通販サイトを撤退してしまうお店もありますが、多くのお店は大手の通販サイトにいながら、自社サイトも充実させていくという2本柱にしていくようです。

 

こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。

「ショッピファイなんですけども、カナダの会社なんですね。」

「カナダは国が小さいから越境のEC(Eコマース)がすごく盛んなんですね。」

「それで、やっぱり通貨や言語を複数で運用してるんです。」

「だから日本の中小企業にとっても海外展開するうえで非常に大きなプラットホームに、ツールになると思いますね。」

「これは中々面白いと思います、」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

確かに、大手の通販サイトだと各サイトの仕様に合わせたデザインになってしまい、自社のブランドイメージなどを伝えづらいと思います。

またユーザーの視点でも、例えばアマゾンで商品を購入する場合、アマゾンというブランドが前面に出ているように感じられ、同じ商品であればどの業者が最も安くて、安心出来そうかという尺度で購入商品を選択してしまいます。

しかし、ショッピファイではブランド独自のデザインでサイトを展開することが出来るので、ブランド力のある企業はこちらの方がブランドを前面に出すことが出来ます。

更に大手通販サイトは売り上げによって販売手数料を設けているケースが多い一方、ショッピファイは販売手数料は設けず、月額料金、約3000円のみで利用出来るのも魅力です。

 

こうしたことから、佐藤さんも指摘されているように、一般的に流通しているような商品については、アマゾンの方が適しており、商品のブランド力がある企業はアマゾンからショッピファイにシフトしていくように思われます。

同時に、購入者の観点からは、どの通販サイトで買うのが一番安くて、安心出来るかという基準も無視出来ません。


 
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