2月4日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でパソナによる定年後の人材の積極採用について取り上げていたのでご紹介します。
2月4日、ある企業による採用説明会が開かれましたが、参加しているのはベテランの方々ばかりです。
定年を70歳まで延長する動きが進む中、経験豊富なシニアを“金の卵”ならぬ“銀の卵”として積極的に採用する会社が登場しています。
人材派遣大手のパソナグループが開いたのは、定年退職した後も仕事で活躍したい人たち(65歳未満も可能)を対象としたエルダーシャイン制度の説明会です。
パソナグループのエルダーシャインチームのチーム長、岩佐 実さんは説明会で次のようにおっしゃっています。
「「社員」と英語の「Shine」をかけて、また新たな気持ちで輝いて活躍いただきたい。」
この日の説明会には約200人が参加し、会場は満席でした。
営業や財務といったこれまでの経験を生かすものなど、5つのコースがあり、契約社員として入社します。
フルタイムで働いた場合、月給25万円以上になるといいます。
この会に参加した元自衛隊の男性(68歳)は次のようにおっしゃっています。
「70歳になっても80歳になっても体が続くんだったらやりたいなと。」
また、元外資系人事の女性(67歳)は次のようにおっしゃっています。
「お金を稼ぎたいというよりも、社会とつながっているっていうのが必要かなというふうには思います。」
実はこの制度、昨年(2019年)に続いて2回目、司会を務める男性もその一期生で、元は自衛官だったといいます。
昨年は80人が入社しましたが、今年は拡大し、通年で160人を採用する予定です。
パソナグループの南部 靖之代表は次のようにおっしゃっています。
「今は定年ていう、法律じゃないんだけども、これが足かせになってますよね。」
「やっぱり人っていうのは、自分が役立つ、自分が働ける、頑張れるっていう場があるって思った瞬間に蘇るんです。」
今回の説明会は一期生が中心となって準備を進めてきました。
会場で記録用の写真を撮影している花房 一夫さん(62歳)もその一人です。
この番組は昨年の入社式を取材、花房さんは緊張した様子で臨んでいました。
花房さんは定年まで営業一筋で大手電機メーカーに勤務、働く意志はあるものの、年齢を理由に面接を受けられなかったため、エルダーシャインに応募しました。
説明会の前日、仕事場(東京・千代田区)を訪ねてみると、エルダーシャイン2期生向けの研修について積極的に意見を出していました。
岩佐さんは次のようにおっしゃっています。
「受け身じゃありませんから、自分でお調べになられたりとか、質問をして下さったりとか、それでどんどん先に仕事が進んでいくんですね。」
「思うゴールに向けて、みんなで進んでいけるかなというところはすごく心強いです。」
パソナグループでは今回採用する2期生からは、グループ内に止まらず、外部の企業にも派遣する計画です。
花房さんはこうしたエルダーシャインのスキルを求める企業の発掘も担当することになりました。
この新たな業務について、花房さんは次のようにおっしゃっています。
「もう大好き。」
「照れくさいですが、私が「エルダーシャインの一つのサンプルです」というふうな話をして回っています。」
手帳を見せてもらうと、派遣先の候補となる企業訪問で予定はいっぱいです。
経験を積んだベテランの働く場所を外部への派遣まで広げることでエルダーシャインのニーズはより高まると見ています。
南部代表は次のようにおっしゃっています。
「第二の人生は全く違ったかたちでもいい。」
「みんなが選択して自分のしたいことが出来る、そういう時代が僕はもうすぐ来ると思いますね。」
こうしたシニアの方々に活躍してもらうためにはいくつかのポイントを押さえておく必要があるといいます。
「まず業種や職種の適正ということですけども、現実に多いシニアの再雇用は、清掃とか警備とか割と単純労働が多いんですね。」
「でも本来であれば、自分の経験が生きる仕事に就いた方がはるかにやりがいにつながる。」
「それから2点目、派遣先のチームとの相性なんですけど、例えば若い20代のチーム、10人の中に一人でぽーんと放り込まれても中々馴染めなかったりするから、その相性も大事。」
「それから(3点目は、)働き方の柔軟性、例えば「週3日だったら頑張れるんだけどな」みたいな人も多いということなので、こういうところをどうマッチングしていくか、その精度を上げていくかということは本当に社会的な課題だと思います。」
「で、人材のプールとそれから派遣先の仕事のプールが大きくなれば精度も上がるので、そういう意味では大手の人材派遣会社が取り組む意義が大きいかなというふうに思います。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
今は新型コロナウイルス問題の影響で、多くの企業は新たな人材確保どころではない状況です。
しかし、「雨の止まない日はずっとは続かない」と言われるように、いずれ新型コロナウイルスも収束を迎える日がやって来ます。
その時には、それまでの反動で需要が高まり、きっと人材が必要になります。
また、少子高齢化の進行とともに日本企業の人材不足は長期的な問題として残るのです。
そうした際に、定年退職後の高齢者の中には、番組の中でもおっしゃられているように、「お金を稼ぎたいというよりも、社会とつながっていたい」と思っている、心身ともに元気な方々は少なからずいらっしゃると思います。
こうした方々に働く場を提供することは、人材不足という労働問題を解決するうえで採用する企業にとっても採用される高齢者にとってもとても有効です。
しかも、企業が必要とする職種と高齢者の現役時代のスキルがマッチすれば、その経験が生かされ、企業は自らによる人材育成の必要がなく、即戦力の優れた人材を確保出来ます。
一方、採用される高齢者も無理なく与えられた業務をこなすことが出来ます。
こうした観点から、今回ご紹介した人材派遣大手のパソナグループが取り組み始めたエルダーシャイン制度はとても理に適っていると思います。
また、こうした取り組み以外にも、政府は65歳まで定年延長という制度を検討中といいます。
しかし、考えてみれば、南部代表も指摘されているように、何歳になっても心身ともに健康で働く意欲のある方々はいらっしゃるはずです。
また、こうした方々は一般的に相対的に優れた能力やスキルを持っていると期待出来ます。
更に、新型コロナウイルスの影響で、在宅勤務も徐々に定着していくと思われます。
このように雇用する側、雇用される高齢者側、双方にとって高齢者の活用は長い目で見ればとても有益な取り組みなのです。
なお、南部代表はシニアの方々に活躍してもらうために次の3つのポイントがあると指摘されています。
・現役時代の経験が生かせる仕事に就く
・派遣先のチームとの相性を考慮する
・働き方に柔軟性を持たせる
ということで、高齢者の働き方のポイントを考慮しつつ、「まず隗より始めよ」ということわざにもあるように、官庁などの公共機関が率先して高齢者の採用に積極的に取り組んでいただきたいと思います。