新型コロナウイルスは今やパンデミック(世界的な大流行)状態の真っただ中にあります。
そうした中、3月22日(日)放送の「NHKスペシャル」(NHK総合テレビ)で「“パンデミック”との闘い」をテーマに取り上げていました。
そこで6回にわたってご紹介します。
1回目は、日本がパンデミックにまでならない理由についてです。
パンデミックの中心とも言われるヨーロッパ各国の感染者数の推移ですが、イタリア、スペイン、フランス、ドイツなどで急に伸び方が増えていますが、現実にオーバーシュート(爆発的な感染者数の増加)が起きていて、予断を許さない状況です。
こうしたヨーロッパの状況に比べて、日本は何とか持ちこたえている理由について、(新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する厚生労働省対策推進本部)クラスター対策班所属の東北大学教授、押谷
仁さんは次のようにおっしゃっています。
「アメリカでもオーバーシュートが起きていると考えられていますけれども、ヨーロッパとかアメリカでは移民の数が多くて、この人たちは医療へのアクセスが非常に悪いと。」
「更に、EUが国境を無くしてしまったということも非常に大きな影響があるんだと思います。」
「で、一方で日本では多くの人が医療にアクセス出来る。」
「同時に医療現場の医師の診断能力が非常に高いと。」
「そういうことによって、早期にクラスター(感染者集団)を見つけて、クラスターをつぶしていくということが可能になっているんだと思います。」
「(日本もPCR検査(微量の検体を高感度で検出する手法)の数が少ないので見逃している感染者も多数いるのではないかという指摘があるが、)本当に多数の感染者を見逃しているのであれば、日本でも必ずオーバーシュートが起きているはずです。」
「現実に日本ではオーバーシュートが起きていません。」
「日本のPCR検査は、クラスターを見つけるためには十分な検査がなされていて、そのために日本ではオーバーシュートが起きていないと。」
「実はこの感染、このウイルスでは80%の人には誰にも感染させていません。」
「つまり、全ての感染者を見つけなきゃいけないという率ではないんですね。」
「クラスターさえ見つけられていれば、ある程度制御は出来る。」
「で、むしろ全ての人がPCR検査を受けるとなると、医療機関に多くの人が殺到して、その中には、ほとんどの人は感染していない。」
「で、一部の人が感染している。」
「そこで医療機関で感染が広がってしまうという懸念があって、むしろPCR検査を抑えていることが、日本がこういう状態で踏みとどまっているという、そういう大きな理由なんだと考えられます。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
また、4月15日(水)付けネットニュース(こちらを参照)でも同様のテーマに触れていました。
そこで、これらの2つの内容から日本が今でもパンデミックにまでならない理由について以下にまとめてみました。
・多くの人が医療にアクセス出来る
・同時に医療現場の医師の診断能力が非常に高い
・こうした結果、早期にクラスターを見つけ、クラスターをつぶしていくということが可能になっている
・日本のPCR検査は、クラスターを見つけるためには十分な検査がなされている
・クラスターさえ見つけられていれば、ある程度制御は出来る
・全ての人がPCR検査を受けると、医療機関に多くの人が殺到して、そこで医療機関で感染が広がってしまうという懸念がある
・日本人の生活習慣
風邪や花粉症対策で日頃からマスクを着用
帰宅後は玄関で靴を脱ぎ外出着から着替え、寝る前に必ずお風呂
人と人が対面するときに握手や抱擁はほとんどせず、距離を置きながらお辞儀をする「どこでも自動ドア」が設置されている。
「人に迷惑を掛けない」意識によって、政府が強い指示を出さなくても、日本ではきちんと社会の自粛が成立する
確かに日本は今のところ新型コロナウイルスのオーバーシュートにならずに何とか踏み止まっている状態ですが、その要因として上記の項目が考えられているのです。
しかし、気になるのは感染経路不明の感染者の拡大、および感染者の全国的な拡大です。
いくらクラスターが把握されても、一方で感染経路不明の感染者が拡大すれば、オーバーシュートにつながる可能性が大きくなります。
そこで医療機関に行かなくても出来るPCR検査(ドライブスルー検査やウォークスルー検査)を増やすことが検討されています。
ということで、パンデミックにつながるオーバーシュート阻止のキーポイントは感染経路不明の感染者をいかに少なくするか、および感染者の早期発見ということになると思われます。