2020年03月08日
No.4584 ちょっと一休み その711 『新型コロナウイルス問題に見るデマの怖さ!』

中国発の新型コロナウイルス肺炎については、いつ収束するのか未だ見当がつかない状況です。

そうした中、3月1日(日)付けネットニュース(こちらを参照)で「コロナよりも怖いのは人間」というタイトル記事に目が留まり、なるほどという思いを持ちました。

というのは、あるテレビニュース番組を見ていたら、あるドラッグストアの店員が正確ではありませんが次のようにおっしゃっていました。

「マスクが売り切れと言うと、高齢の男性が怒鳴り散らし、レジの置いてあるところを足で蹴ったのです。」

「本当に怖い思いをしました。」

 

私自身(横浜市内在住)もいつもとは違う光景を目にしました。

2月28日(金)の朝9時過ぎ、太極拳をやりに行っている横浜中華街の一画にあるドラッグストアには既に10人ほどの行列が出来ていました。

恐らくマスクを買うための人たちだろうと思いました。

そして、太極拳を終えて、10時過ぎにいつも通っているスーパーの売り場に行くと、そこは明らかにいつもとは違う光景でした。

売り場は人で溢れるような状況で、いつもは入り口近くに何台も並べられているカーゴが1台もなく、何人かの人がカーゴが運ばれて来るのを待っているのです。

私もその中の一人でした。

次に人ごみをかき分けて買い物を済まし、レジに並ぼうとしたらどこがレジ待ち行列の最後か分からないような状況でした。

しかも多くの買い物客のカーゴには溢れるばかりの商品が積まれていました。

なので、レジまでたどり着くまでには20〜30分ほどかかるのでは感じたほどです。

このような状態ではたまらないと思いつつ、レジの方を見ると、これほどの混雑なのにレジの一部は閉まったままです。

なぜこれほどの混雑なのに店員を手配しないのかと思っていたところ、暫くして店員がそのレジに入り、受け入れ準備完了で開きました。

その直後、たまたまそのそばを歩いていた一人の買い物客がそのレジに買い物かごを置くのが見えました。

すかさず、私は急いでその後に並んで幸いにも思っていた以上に早くレジを済ますことが出来ました。

 

不思議に思ったのはその後です。

そのレジの両サイドの長い行列から私の後に誰もこのガラガラのレジに移動する買い物客が見当たらないのです。

そこで、たまたま眼の合った隣のレジに並んでいた買い物客に声をかけるとようやくその人が移動して来て、その後は徐々にこのレジも行列が出来ました。

 

この人間の心理は一体何なのか、集団心理の一つなのでしょうか。

私なりにこの状況を考えてみた結論は、大勢の人たちが同じ行動をしていると、つい自分も同じ行動をしてしまい、しかも大勢の人たちの中で自分という個の意識が集団の中に埋没してしまい、その結果判断能力が欠如して、本来の自分であれば合理的な別の行動があると判断出来るはずなのに、そうした行動に出ることが出来ない傾向にあるということです。

 

次に疑問に思ったのは、なぜ前日まではいつもの混みようなのに、急に2月28日に大勢の買い物客が殺到したのかです。

思い付いた理由を以下にまとめてみました。

・新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、いつ収束するのか分からない

・マスクの約8割は輸入されている

・こうした状況から、感染予防のため、多くのお店でマスクの売り切れ状態が続いている

・その後、「トイレットペーパーは中国から輸入されているので輸入が止まる」、「マスク増産のおかげで、トイレットペーパーの材料がなくなる」、「マスク増産のせいで、トイレットペーパーの生産が減る」、「トイレットペーパーがなくなる」といったようなデマが拡散した

・米子医療生活協同組合の一人の職員などによる2月27日の次のSNS投稿がその日のうちに一気に全国的に拡散した(3月4日(水)放送の「直撃ライブ グッディ!」(フジテレビ)より)

「コロナで品薄になる品予測を根拠付きでお伝えします。」

「次は、トイレットペーパーとティッシュペーパーが品薄になります。」

「製造元は中国です。」

「生産元がトイレットペーパーやティッシュペーパーを生産をそもそもしないのが根拠です。」

「品薄になる前に事前に購入しておいた方が良いですね。」

・なお、このSNS投稿記事について、米子医療生活協同組合は3月4日にホームページでデマであったことを謝罪している

・安倍総理が2月27日に「来月2日から全国全ての小学校・中学校、それに高校と特別支援学校について、春休みに入るまで臨時休校とする」と要請した

・この安倍総理の発言が一部の商品の需要増につながるという妄想と多くの販売店での以前からのマスクの売り切れ状態がリンクして多くの人たちの不安感を高め、一斉に買い物に走らせた

 

このように新型コロナウイルスの感染拡大でいつ収束するのか分からない状況と、その影響によるマスクの品不足に端を発したデマとが相まって一部の商品に飛び火して品薄状態が続いているのです。

 

ちなみに、2月28日のスーパーでの買い物後、その日のうちにいくつかのスーパーやドラッグストアに行ってみましたが、見事にマスク、トイレットペーパー、ティッシュペーパーは売り切れで、「入荷未定」という張り紙がありました。

そこで、その夕方、千葉県外房にある実家近くの親戚に状況を問い合わせたところ、やはり同様の状況だということでした。

また週明けの3月3日に自宅近くのドラッグストアに行ったら、「本日の入荷分は全て売り切れ」という張り紙がありました。

ですから、日本各地で今も同様の品切れ状態が続いていると容易に想像出来ます。

 

こうした状況から、いくら安倍総理が「マスクは増産中、トイレットペーパーやティッシュペーパーの原料は国産で在庫も十分にあるから心配しないように」と声高に国民に訴えても、現実の売り場では毎日のように入荷されても個々の店舗においては、その量はわずかなのですぐに売り切れ状態になってしまうのです。

しかし、3月5日、3月6日と最寄りのスーパーに買い物に行ったら、トイレットペーパーとティッシュペーパーについては山のように積まれていました。

しかし、一部の商品については“1家族1箱まで”というように制限が加えられていました。

ですから、安倍総理の訴えていたように、これらは在庫も十分で単に物流がネックだったのです。

一方、マスクについては相変わらず品薄状態で、売り出される日のドラッグストアでは開店前からかなりの行列が出来ています。

また、一部の病院や介護施設などでは、既にマスクの在庫がほとんどない状態に追い込まれていると報じられています。

 

そして、世界各国でも徐々に感染者が増えていることから、世界保健機関(WHO)は2月24日、感染が拡大している新型コロナウイルスについて、各国は、今後起こり得るパンデミック(世界的流行)への「準備段階」に入るべきだとしています。

 

さて、これまでも、またこれからも新型ウイルスの感染者が現れ、パンデミックのリスクがいつ発生するかもしれないのです。

こうした状況から、日本は今大きな問題になっている新型コロナウイルス肺炎のような伝染病対策について真剣に取り組むべきなのです。

実際に政府内ではようやくこうした動きが出てきました。

今回の新型コロナウイルス肺炎における政府の対応にはバタバタした感じを受けますが、これを機会にしっかりとしたパンデミック対応策を構築していただきたいと思います。

 

いずれにしても、いくらデマと言われても多くの人たちは現実にマスクなどが最寄りのスーパーやドラッグストアで売り切れ状態であると分かれば、とりあえず「どこかで買っておかなければ」という意識が働いてしまいます。

ですから、いかにデマの拡散を早期に食い止めるかがとても重要なのです。


 
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