2020年01月08日
アイデアよもやま話 No.4533 回転寿司でスイーツ競争!?

昨年9月3日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で回転寿司のスイーツ競争について取り上げていたのでご紹介します。 

 

回転寿司と言えば、1皿100円や高くても300円くらいのものが多いですが、くら寿司が来週(放送日時点)500円以上という価格が高値のスイーツをメニューに加えます。

実は今、回転寿司大手の間でスイーツを巡る激しい争いが繰り広げられています。

午後1時過ぎ、東京・渋谷の渋谷109の前にできた沢山の人だかり、回転寿司のくら寿司が昨年9月9日から販売する高級スイーツを無料で提供しました。

最高級の「たっぷり完熟マンゴーカフェ」は518円、また大粒のタピオカを使った「黒糖タピオカミルクティー」も518円、昨年9月20日から販売する「モンブランカフェ」にいたっては金箔が載って734円もします。

今までくら寿司で出していた一番高いスイーツでも302円、なぜ高級スイーツを出したのでしょうか。

くら寿司の辻 明宏さんは次のようにおっしゃっています。

「今までメインターゲットとしてこなかった若いお客様を意識して、くら寿司を利用されなかった人にも足を運んでいただいて、・・・」

「(お寿司目当てでなくてもいいことなのかという問いに対して、)そうですね。」

「本当にこのスイーツだけでも満足していただけるようなものを完成させた自負はありますので。」

 

消費増税を控えた新たなお客の取り込み、昨年9月3日のキャンペーンを渋谷109で行ったのも若い女性を意識してのものです。

このキャンペーンに来た若い女性の反応は上々のようです。

 

そのくら寿司の強力なライバル、スシロー、2年前スシローカフェ部というチームを立ち上げ、専門のパティシエを中心にスイーツを開発してきました。

280円(税別)と安い「光るゴールデンタピオカミルクティー」、7月の発売当初に全店舗合計で1日4万5000杯も売り上げた人気商品、スシローの売りは本格的なスイーツを低価格で提供すること、どの商品も100円から300円の設定です。

商品数も豊富で、和風から洋風まで常に約20種類は揃えています。

価格を安く、種類も豊富にすることで老若男女、幅広いお客にもう一皿食べてもらい、客単価アップにつなげる、これがスシローのスイーツ戦略です。

スシロー PR課の平野 叶恵さんは次のようにおっしゃっています。

「お寿司を食べて、もう(おなか)いっぱいだけど、この商品だったらもう1つ」みたいなところで、あえてターゲットを絞らず、いろんなファンの方に楽しんでいただけるようにスイーツは考えております。」

 

こうした状況について、番組コメンテーターで大和総研チーフエコノミストの熊谷 亮丸さんは次のようにおっしゃっています。

「(回転寿司2社が同時に次々に戦略を広げていくのは偶然ではないはずという指摘に対して、)キーワードが原価率というのがあるんですね。」

「回転寿司の原価率がどういう状況かというとですね、適正ゾーンは42〜50%、これよりも高いとお店は儲からないし、安いと不味いのでお客さんが来なくなるんですね。」

「やっぱりここ(適正ゾーン)に綺麗に落とさないといけないんですね。」

「で、いろんな商品があってマグロとかウニは原価率が高い(80%)。」

「これを目玉にお客さんを集めて、来た人たちに原価率の低いものを買ってもらって(味噌汁は10%、ツナマヨ 、玉子は20%)、最後に適正ゾーンに着地をすると。」

「一般論として言うと、スイーツは30%ぐらいの原価率で低いと言われているんですけど、今回のケースはちょっと高い印象を受けるんですよ。」

「恐らく、原価率、採算を度外視して高めにしている。」

「なぜそうしているかというと、いわゆるF1という若い女性を呼び込む。」

「例えば、午後の暇な時間に稼働率を上げるだとか、インスタ映えだとか、もしくは海産物は中々差別化が出来ないのでスイーツで差別化をすると。」

「非常に興味深いビジネスモデルですね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

私も月に1回くらいのペースで回転寿司に行きますが、このお寿司の原価率はどの程度かなんて考えながら食べたことはこれまでありませんでした。

しかし、お店にとっては原価率とどのようなネタのお寿司をどのくらいの価格で提供するかを適正に決定出来るかどうかは死活問題です。

同時に、同業他社との競争もあります。

そうした中、お互いに他店にはない特徴を出すことも求められます。

 

こうした状況において、くら寿司は若いお客様を意識して高価格帯の高級スイーツをメニューに加え、一方、強力なライバルであるスシローでは幅広いお客様をターゲットに本格的なスイーツを低価格で提供するという戦略を取っているのです。

 

それにしても、回転寿司の原価率の適正ゾーンは42〜50%であり、マグロやウニは原価率が80%、一方で味噌汁は10%、ツナマヨ 、玉子は20%という数字はとても興味深いです。

味噌汁や小さい子どもの定番である玉子はお店にとってはまさにドル箱といえます。

一方、マグロやウニのお寿司はお客にとってはコストパフォーマンスが高いと言えます。

実際に、お客は一般的に食べたお皿の色と枚数で支払額がざっといくらになるかを意識するので、高めの価格のネタと低めのネタをほどよく選んで食べていると思います。

結果的にお店側の狙う原価率の適正ゾーンにはまっているのかもしれません。

一方、もし支払額を気にしながら、安いお皿のお寿司だけを選んで食べていたら、結果としてコストパフォーマンスはとても低くなってしまうのです。

しかし、あまりコストパフォーマンスを気にしながらお寿司を食べたら、食事を楽しめなくなってしまいそうです。

ですから、こうした意識はほどほどにした方が良さそうです。

 

さて、こうして見てくると、同じ回転寿司でも、それぞれどの顧客層をターゲットにしているのか、そしてどのネタで来客を取り込もうとしているのか、あるいはどのネタで全体の帳じりを合わせようとしているのかなどを考えてみるのも面白いと思います。


 
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