8月5日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で“伸びない消費”脱却のカギについて取り上げていたのでご紹介します。
経済財政諮問会議が先週(番組放送時)官邸で開かれました。
安倍総理が議長を務め、国の財政金融などの方針を話し合われました。
政権のアドバイザーとも言える、この会議のメンバーの一人が慶応大学
経済学部の竹森 俊平教授です。
竹森教授は国際経済を専門とし、幅広い知見を持ちます。
日本経済が成長していく上で重要なカギを握るのに中々伸びない消費をいかに克服していくのか、番組でそのヒントを探りました。
内閣府は先週(番組放送時)、今年度の経済成長率の見通しを1.3%から0.9%に引き下げました。
貿易摩擦による中国経済の減速が影響していますが、他の要因として経済財政諮問会議で交わされたのが“伸びない消費”についてです。
この“伸びない消費”について、竹森教授は次のようにおっしゃっています。
「30代も最近ちょっと消費性向が下がり出しているという。」
「(その原因について、)今までのやり方だと段々ダメになっていくのを見ている30代、で50代があまりぱっとしないのを見て、「俺も出世してもたかだかあそこに行けるだけだ」と。」
「どんどん生活が良くなっていく、どんどん自分が出世していくというキャリアパスが見えないということが私は最大の原因じゃないかなと思っているんですね。」
消費性向とは、所得のうち消費に使われる割合のことを指します。
その中身を見てみると、30代の数値が特に低く、2013年以降下がり続けているのです。
自分の力を最大限に発揮出来る働き方が実現出来れば、将来の希望につながり、消費に結びつくというのです。
ただ、ここで疑問が出てきます。
(経済見通しを引き下げて、しかも海外経済がこれからどうなるか分からないという状況の中で、消費税を上げるのかという問いに対して、竹森教授は次のようにおっしゃっています。
「消費税というかたちで財源を保障することであっても、そのサステナビリティ(持続可能性)を強化することは重要じゃないかっていう判断だろうと思います。」
しかし、消費増税によって落ち込みが予想される景気に対して、政府はどう対応しようとしているのでしょうか。
竹森教授は次のようにおっしゃっています。
「財政政策と金融政策が一緒にくっつくような政策であれば更にメニューは広がるわけですけども・・・」
「(その意味で、安倍総理も黒田日銀総裁も「躊躇なく」ということは、まさに財政金融一体的なところも視野に入っているという指摘に対して、)それは一番つながりが強いですよね。」
「金融関係者が言っておられるよりは、手段は沢山あると思います。」
今がデフレにもどるかどうかの瀬戸際という危機感を竹森教授は持っているといいますが、これについて解説キャスターで日本経済新聞
編集委員の滝田 洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「反面教師はリーマンショックの失敗だったと思うんですね。」
「要するに、政府、日銀、特に日銀の対応が後手に回ったっていうのは決定的にまずかったと思うんですね。」
「「過ちは繰り返しません」ということをおっしゃっているんですけども、それを言うためには政府、日銀が果たしてどんな手を打てるのかということを今のうちからはっきりさせておく必要があると思います。」
「でも、それにしても消費税引き上げの直前ですからね。」
「どんなもんかと思います。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
そもそも私たちの暮らしは生活必需品やその他にプライベートで欲しい商品を購入することで豊かになります。
そのためにはそれなりの収入が必要です。
その収入を得るためには働かなければなりません。
しかも、働く場が安定していなければ、安心して消費することは出来ません。
更に病気になった場合、あるいは老後の暮らしを考えると、こうした日々の消費とは別に貯蓄が必要です。
一方、企業側から見ると、需要が見込まれる領域の商品を生産することが投資対効果の観点で問題なければ、そこで初めて商品の開発・販売に結びつけます。
このように見てくると、経済の仕組みに興味が湧いてきます。
そこで、現在の企業環境において、ある企業の視点から、商品の開発・生産、および消費を全くゼロの状態から消費までの一連のサイクルを以下に簡単にまとめてみました。
・ある企業が需要を把握し、あるいは潜在需要を掘り起こし、投資家から資金の提供を受けて、商品開発をし、販売する
・その商品の売り上げ、収益が上がると、それが従業員の収入、次の商品開発、あるいは企業の手持ち資金になる
・その企業の従業員は収入に応じて、消費する
・その消費が新たな需要を生み出し、企業による新たな商品開発につながる
このように見てくると、特に現在のようにテクノロジーの進歩が著しく、それらを活用してビジネスにつなげるベンチャー企業の存在がとても重要になります。
ちなみに、既存のビジネスと最新テクノロジーとを組み合わせた新たなビジネスは、以前お伝えしたように“フィンテック”や“スポーツテック”など“xxテック”と呼ばれています。
そこで、次にこうしたベンチャー企業が存分に活躍出来るための要件を以下にまとめてみました。
・商品開発に必要なヒト・モノ・カネの調達
・ベンチャー企業が事業運営し易い環境
商品開発に必要なヒト・モノ・カネの調達については、実際に投資機関や大企業による支援が進んでいるといいます。
更に資金調達においては、最近クラウドファンディングが徐々に広がっています。
ちなみに、前回ご紹介した古いお酒の風味が変わるフィルター「「金の雫(しずく)」もクラウドファンディングを利用して開発されました。
一方、ベンチャー企業が事業運営し易い環境については、政府や地方自治体がその主な役割を持っています。
特にエネルギーや環境関連など国策に直結するような商品開発については、国は企業規模に係わらずいろいろなかたちで大胆な支援をすべきだと思います。
また、消費を喚起するうえで、国には病気になった場合、あるいは老後の心配をしなくて済むような充実した政策が求められます。
更に、リーマンショックのような経済危機が起きて消費が非常に落ち込んだ場合には、需要の創出を狙いとする大胆な政策が求められます。
国には、こうした経済危機やバブル発生時には、個々の企業には出来ない、総需要をコントロールする、言わばダムのような重要な役割があるのです。
更に、国にはもう1つ大きな役割があります。
それは、経済が安定的に成長するような、実現可能な長期政策を打ち出すことです。
この政策次第で、ベンチャー企業に限らず個々の企業は安心して開発投資を進めることが出来るのです。