2019年09月25日
アイデアよもやま話 No.4443 官民で取り組むロケツーリズム!

5月17日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で官民で取り組むロケツーリズムについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

映画の代表的なシーンで有名になったある海水浴場は、昨年の夏の来場者数は前年に比べて1.5倍増えました。

映画やドラマのロケ地を市町村が誘致して、地域の活性化を図ることをロケツーリズムといいます。

5月17日、経済産業省でこのロケツーリズムを推し進めるため、映画やテレビの制作者とロケを誘致したい市町村のトップが会するマッチングイベントが開かれました。

国が後押しする理由は何なんでしょうか。

 

太平洋を望む外房にある千葉県いすみ市、4年前から市を中心に地元の商工会などが一緒になり、ロケを積極的に誘致してきました。

いすみロケーションサポートの出口 幸弘会長は次のようにおっしゃっています。

「是枝監督の「万引き家族」のワンシーンがここ(海水浴場)で撮られました。」

 

昨年、カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した「万引き家族」で、家族全員が海で遊ぶシーンが撮影されたこの海岸、作品の世界観に合った場所を探していた制作サイドのリクエストに応えるため、市の職員が海岸線を歩き回って、候補地をピックアップ、最終的に是枝監督がゴーサインを出し、ロケが実現しました。

 

一方、テレビ局が市内で行いたいと申し入れて来たロケも積極的に支援します。

いすみ市内にある源氏食堂は、4年前に人気ドラマ「孤独のグルメ Season5」で松重 豊さん演じる主人公、井之頭五郎が仕事の合間に立ち寄る店として登場しました。

元々は地元の人もあまり知らないようなお店でしたが、ドラマの放送直後から多くのお客が訪れるようになったといいます。

源氏食堂の店主、斉藤 起み子さんは次のようにおっしゃっています。

「今は(お客が放送前の)10倍、「孤独のグルメ」のおかげです。」

 

取り組みを始めてから200件を超えるロケ(207件 2015年〜現在)を受け入れて来たいすみ市、訪れる観光客数も2013年〜2017年までの4年間で約31万人から約41万人へと約10万人増加しました。

いすみ市が多くロケを誘致出来るのは、撮影に関する交渉から許可取りまでをワンストップで幅広く対応するサポート体制にあるといいます。

出口会長は次のようにおっしゃっています。

「あらゆることに対してスムーズに、スピーディに対応しているというところですかね。」

「それが年々ロケが増えている要因でもあると思います。」

 

また地元グルメの差し入れをして、撮影現場をもてなすことで、ロケ隊のリピートにもつながっているといいます。

いすみ市の早川副市長は次のようにおっしゃっています。

「トップが「これは地域のプロモーションのためにやるんだ」というふうに言うことによって、地域は一体となって動ける。」

「ここは大きいと思います。」

 

こうしたロケ誘致による地域活性を国も後押ししています。

5月17日、経済産業省(経産省)の会場に集まったのは、ロケを誘致したい自治体のトップたちと映画監督やテレビのプロデューサーなど250人以上で、マッチングイベントが開かれました。

熱心にアピールしているのは、京都府京丹波町の太田町長です。

京丹波町はロケ誘致用のパンフレットも作成、町には大がかりなセットが作れる敷地もあるといいます。

実は京丹波町は2004年に鳥インフルエンザが発生した養鶏場があった場所で、その跡地をロケ地として活用しています。

他にも映画「本能寺ホテル」(2017年公開)の炎上シーンの撮影など、周りに民家がない環境を生かしたロケを誘致出来ているといいます。

太田町長は次のようにおっしゃっています。

「町民の方にとっても、この映画がこの町でロケされたというのは誇りになるようでして、かなり盛り上がっている・・・」

 

一方、制作者側もロケ地の候補探しには苦労するといいます。

ある映像制作関係者は次のようにおっしゃっています。

「日本は海外と違って協力的ではないので、(ロケ地探しは)いつも悩ましいと思いますね。」

 

別の映像制作関係者は次のようにおっしゃっています。

「一番は地域の方々に協力いただけるような宿泊施設や食事などの問題もありますので・・・」

 

自治体側と制作者側のトップ同士がつながることによって、様々な交渉や段取りがスムーズになるのです。

経産省が初めて共催に名を連ねた今回のイベント、第3回「市町村長ロケ地TOP会談」、この取り組みを全国に広げたいといいます。

経産省クールジャパン政策課の三牧 純一郎課長は次のようにおっしゃっています。

「地方創生は安倍政権のメインの課題でもありますし、自治体と民間の番組制作の方々がやる取り組みを国としてサポートすると・・・」

 

番組コメンテーターで早稲田大学ビジネススクールの入山 章栄教授は次のようにおっしゃっています。

「(マッチングイベントの有効性について、)日本の今抱えている本質を解消する動きだと思うんですね。」

「つまり、もっと都市と地方の間で出会いの場をつくるべきなんじゃないかなと。」

「今回のケースも日本の都市部の映画製作会社と地方でそういった人たちを誘致したいって、お互いにニーズとシーズがある。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

確かに大きな話題になった映画やドラマのロケ地は観光誘致のきっかけになります。

一方、そうしたロケ地探しは制作会社にとって負担になっているといいます。

ですから、経産省主導でロケを誘致したい自治体のトップたちと映画監督やテレビのプロデューサーなどによるマッチングイベントを開催したことは意義があると思います。

 

しかし、こうしたワンショット的な取り組みと並行して、常態的にネット上にロケを誘致したい自治体と映画やテレビドラマの制作者側がそれぞれマッチング出来るようなサイトが立ち上がっていれば、タイムリーにそれぞれが負担が少なく、しかもスムーズにロケ地の決定がなされます。

しかもこれらのロケの候補地が時代劇や風景の特色などで分類されていれば、制作者側は効率よくロケ地を絞り込むことが出来ます。

 

ということで、こうした常態化したマッチングサイトを立ち上げることは、より多くの国内外の制作者とロケを誘致したい自治体の双方にとってメリットがあり、結果として新たな観光地の掘り起こしにつながると思うのです。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています