2019年09月13日
アイデアよもやま話 No.4433 “地上最強”の断熱材が世界を変える!?

少し古い情報ですが、3月6日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で“地上最強”の断熱材について取り上げていたのでご紹介します。

 

東京都内にある、大手住宅設備メーカーのショールーム。全自動で開閉が出来るシャッターや100種類以上のドアなど、新築やリフォームのための様々な設備が展示されています。

その中でも特に、お客の目を引く展示物があります。

YKK APが開発した未来のドア「アップデートゲート」です。

AIを搭載していて、前に立つだけで顔認証によって開閉する扉に、音声認識で住人が外出する際にその日の天気予報などの情報を表示してくれます。

しかし、この未来のドア、最大の特徴はある新素材を使っていることです。

YKK APの事業開発部長、東 克紀さんは次のようにおっしゃっています。

「ここに採用しているのが「エアロゲル」でありまして、地球上で最も性能が高い断熱材を採用しています。」

 

この窓に使われる「エアロゲル」という新素材、実はあるベンチャー企業が製造しました。

それがあるかどうか分からないほど透明な物体、地球上で最高性能を誇るという断熱材を作り出したベンチャー企業とは、東京・虎ノ門に本社を置く、2012年創業のティエムファクトリ株式会社です。

 

ティエムファクトリを訪ねた番組のフィールドキャスターは早速そのエアロゲルを見せてもらいました。

すごく透き通っており、これが「世界最強」の断熱性能を誇る素材だというのがにわかに信じられない様子です。

 

それならばと創業者の山地 正洋社長が用意してくれたのが、小学校の理科実験でおなじみのアルコールランプです。

その炎の上にエアロゲルの板を置き、フィールドキャスターがおそるおそる板の上に手を置いてみると、全然熱く感じません。

 

更に、エアロゲルと一般的なガラスで、氷を上に載せて比較してみると断熱性能は一目瞭然、エアロゲルに載せた氷は全然溶けませんが、ガラスの方はみるみる氷が溶けていきます。

いったいなぜ、このような断熱性能を実現出来るのでしょうか。

実はこの素材、目には見えないほど微細な編み目の構造をしています。

そのため体積の約95%が「空気」、その空気が熱を遮断しているのです。

その性能は、建築物の断熱材としてよく使われる「グラスウール」の約3倍、断熱性能でこのエアロゲルを超える物質は、地球上に存在しないといわれています。

 

しかも「透明」なため、他の断熱材に比べ活用の幅が格段に広いのです。

最も期待が大きいのが「窓」です。

家の中で最も熱が逃げる部分は窓ですが、この素材で断熱性能を高めれば、光熱費が半分以下に削減出来るといいます。

山地社長は次のようにおっしゃっています。

「今のところ世界中の窓に搭載出来れば、1兆円ぐらいの市場を獲得出来ると我々は考えています。」

 

更にこのエアロゲルには「板」にする以外にも活用法があります。

山地社長は次のようにおっしゃっています。

「これはエアロゲルを細かく砕いたもので、我々はパウダータイプと呼んでいます。」

 

実は「粉末」にしても、その断熱性能は変わらないのです。

エアロゲルの粉末をまぶした水滴と、何もしていない水滴を、熱したフライパンの上に乗せてみると、ただの水滴がどんどん蒸発していく横で、エアロゲルに覆われた水滴はコロコロと転がるだけで全く蒸発しません。

この粉を他の素材に混ぜることで、様々なモノに断熱性能を加えられるといいます。

山地社長は次のようにおっしゃっています。

「例えば、繊維や樹脂に混ぜることによって、身近なところでいうとクーラーボックスや冷蔵庫とか様々な用途に用いることが出来ます。」

 

実は、エアロゲルは山路社長らが一から生み出したものではありません。

1931年にアメリカの研究者が発明した素材なのです。

その後、NASAが実用化に成功し、スペースシャトルの断熱材などに利用されました。

しかし、非常に高価で、誰もこれを実用的なコストで作ることが出来なかったので、世の中に広がらなかったのです。

 

高コストの原因は、その製造過程にありました。

エアロゲルは原料となる薬品を混ぜ、一度固めて、更に乾燥させれば出来上がります。

しかし、その「乾燥」の際に特別な装置を使う必要があり、そこにコストがかかっていたのです。

ところが、山地社長らはこの課題を克服すべく、原料の種類や配合などを工夫し、特別な装置を使わなくても常温・常圧で乾燥させることに成功し、低コスト生産を実現しました。

山地氏らの試算によれば、従来のエアロゲルのつくり方に比べ、コストは60分の1ぐらいのコストに落ちたといいます。

これでようやく、一般社会での実用化が視野に入ったのです。

 

山地社長がこのエアロゲルの研究を志したのは、京都大学で研究員だった6年前(当時36歳)です。

山地社長の当時の研究テーマはエアロゲルとは違う、レーザー関係で、断熱材には縁もゆかりもありませんでした。

 

当時、山地社長は年に数百もの物質にレーザーを照射し、その活用法を模索していました。

そうした中、エアロゲルにレーザーを照射したところ、空気のように軽い物質の誕生を迎えました。

この時について、山地社長は次のようにおっしゃっています。

「これは世界を変える大きなことだと思いましたので、そこに携わることが出来たら面白いなとその時すぐに思いました。」

 

触っただけで大きな可能性を感じた山地社長は、すぐに大学の職を投げ打って、2012年にティエムファクトリを創業しました。

6年を経て量産化が視野に入り、開発を始めてから6年。いま急ピッチで取り組むのは、独自に開発した低コスト生産の技術による量産化です。

機械での自動生産に向けた開発を進める一方、茨城県に工場建設のための土地を確保し、「低コスト量産」の実現は目前です。

そして企業からの問い合わせが増えています。

山地社長は次のようにおっしゃっています。

「一番多いのは自動車業界、EV(電気自動車)になると、エアコンを使えば使うほど航続距離が短くなってしまうという大きな悩みがある。」

「(エアロゲルで)覆って高い断熱空間を作るというのが大事になる。」

「(エネルギー効率が高まって)CO2の削減目標にも大きな貢献が出来ると思っています。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

私の知る限り、今回ご紹介したエアロゲルはほとんど世の中に知られていないと思います。

しかし、このエアロゲルは間違いなくとんでもなく画期的な断熱材です。

建築物の断熱材としてよく使われる「グラスウール」の約3倍の断熱性能、しかも「透明」なため、他の断熱材に比べ活用の幅が格段に広いのです。

家の中で最も熱が逃げる部分は窓ですが、この素材で断熱性能を高めれば、光熱費が半分以下に削減出来るといいます。

それ以外にも、実は「粉末」にしても、その断熱性能は変わらないのです。

エアロゲルの粉末を他の素材に混ぜることで、様々なモノに断熱性能を加えられるといいます。

ですから断熱機能を必要とするあらゆる分野に適用することが出来るのです。

結果として、エアコンなど冷房や暖房といった温度調節の必要な装置の電気消費量を大幅に削減出来、従って電気料金の削減や地球温暖化対策としても有効なのです。

 

さて、このエアロゲルの実用化に至る経緯ですが、エアロゲルは山路社長らが一から生み出したものではありません。

エアロゲルは1931年にアメリカの研究者が発明した素材なのですが、非常に高価で、誰もこれを実用的なコストで作ることが出来なかったので、世の中に広がらなかったのです。

ところが、山地社長が京都大学で研究員だった6年前(当時36歳)に研究テーマはエアロゲルとは違うレーザー関係で、実験の過程でエアロゲルにレーザーを照射したところ、偶然空気のように軽い物質を発見したのです。

また、高コストの原因は、その製造過程にありました。

ところが、山地社長らはこの課題を原料の種類や配合などを工夫して克服し、従来のつくり方に比べ、コストは60分の1ぐらいという低コスト生産を実現しました。

こうして一般社会での実用化が視野に入り、今や「低コスト量産」の実現は目前といいます。

そして、世界中の窓に搭載するだけで1兆円ぐらいの市場を獲得出来ると試算されています。

ですから、窓以外の分野への適用を考えれば新たに数兆円くらいの市場が見込まれると思います。 

ということで、近い将来、世界中の人たちは様々な分野でエアロゲルの恩恵にあずかれるようになると期待出来ます。


また、今回ご紹介したエアロゲルのように発明した時点では、技術的に無理であったり、あるいはコスト的に見合わず、実用化に至らなかった発明はあると思います。

ですから、一定の市場の見込まれる発明については、定期的に実用化の可能性の観点から見直してみることが必要だと思います。


 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています