2019年06月27日
アイデアよもやま話 No.4366 インフルエンザでも働け!?

2月20日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で について取り上げていたのでご紹介します。 

 

1月、東京の地下鉄の駅でインフルエンザに感染している女性が出勤途中に線路へ転落し、電車にはねられ死亡するという事故がありました。

女性はホームで振らついて前にしゃがみ込み、そのまま線路に転落したということです。

人手不足が叫ばれる中、体調が悪くても無理をして出社した経験があるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そして、その一方で会社側がインフルエンザでも働くよう強要するケースもあるといいます。

こうした時代に働く人や企業はどうすればよいのでしょうか。

 

年間80万人以上が訪れる子どもの職業体験施設、キッザニア東京(東京都江東区)、目立つのはマスクをしたお客です。

入場口にあるのが体温を検知するサーモグラフィーです。

お客に自分の体温や体調を把握してもらおうという狙いです。

また館内のいたるところにお客が使えるアルコール消毒液を設置しています。

一方、職業体験をサポートするスタッフは常に子どもと近い距離で接しなくてはなりません。

このためキッザニアではスタッフがインフルエンザを移してしまわないよう対策に力を入れています。

スタッフは仕事の前に必ず体温を測り、平熱を確かめなくてはなりません。

最も力を入れているのが予防接種です。

キッザニアでは正社員だけでなくアルバイトを含む全ての従業員を対象にインフルエンザの予防接種費用の半額を補助しています。

キッザニア東京の佐藤 徹太郎運営部長は次のようにおっしゃっています。

「大半はアルバイトの方が多いですから、(インフルエンザが)まん延した場合、その日に必要な人数がそろわないという恐れが実際にはあると思いますので、移してもダメ、移されてもダメ、念には念をいうことでいろいろなことをやっております。」

 

今年、インフルエンザは爆発的な猛威をふるい、ピークの感染者数は過去最多となりました。

人手不足が叫ばれる中、休みが取りにくい空気が職場にはあるといいます。

労働相談を受けている総合サポートユニオンの池田 一慶執行役員は、インフルエンザに関する相談は近年多く寄せられるといいます。

例えば保育園で働く女性の場合、インフルエンザで休むとしたら有給扱いには出来ず、欠勤扱い、そして減給になるといいます。

 

また介護職に就く女性の場合は、同僚から数時間は勤務交代するので早く職場に来るよう諭されたといいます。

池田さんは次のようにおっしゃっています。

「保育園とか介護だと子どもや老人がいたりするので、そうすると子どもが感染したら死ぬ場合がありますよね。」

 

更に建設業で事務職を務める20代の女性は、インフルエンザのために1週間欠勤の旨を伝えると、「遠隔でやって欲しい」と言われたといいます。

40℃の熱があるにもかかわらず、自宅での仕事を強要されたのです。

池田さんは次のようにおっしゃっています。

「1人欠けたら大きな事態になるような、余裕のない状態で働かせているということが今全般的にブラック企業と言われるようなところで起きているんですね。」

「休んだことに対してものすごく叱責を受けたりとか、休むようなやつは要らないと言って解雇になったりとかですね。」

 

社員を無理やり出社させ、インフルエンザのような感染性の強い病気をまん延させた場合、労働安全衛生法に違反する可能性もあるとされています。

しかし、池田さんは次のようにおっしゃっています。

「ブラック企業は平気で(法を)破ってしまうので、専門家や労働組合とかNPOであるとか、助けを得ることが重要かなと思います。」

 

ただ健全な経営をしていても人手不足に悩む企業が多いのも事実です。

こうした中、対策を取っているのがソフトウェアの開発を手掛けるアステリア株式会社(東京都品川区)です。

平野 洋一郎社長は次のようにおっしゃっています。

「少数精鋭でやっていますので、そこの影響が大きいということもありますけども、やはりインフルエンザにかかってしまうと自分の仕事だけでなくて、周りにも影響したりしますので・・・」

 

今、IT業界ではエンジニアなどの人手が慢性的に不足しています。

そこで、この会社ではインフルエンザの予防接種費用を従業員とその同居家族全員分、全額負担しています。

契約社員や派遣社員だけでなく、フリーランスとしてこの会社に出入りしている人も対象です。

アステリアに出入りする従業員とその同居家族は約250人いて、インフルエンザの予防として約100万円分の費用を会社が負担しています。

平野社長は次のようにおっしゃっています。

「会社としては出費ですけども、特に今のような働き手不足のようなことになると、それを出してでもしっかり仕事が進む、働く人が確保出来る方がより優先順位が高くなってくるのではないかと考えています。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

今、政府の掲げる「働き方改革」が進められていますが、現実は働く環境がとても厳しいことが番組を通して伺えます。

インフルエンザに着目しても、インフルエンザで休むと欠勤扱いになったり、インフルエンザのために休むと伝えても「遠隔でやって欲しい」と言われるというような事例があるのです。

また、総合サポートユニオンの池田さんは、余裕のない状態で働かせている状況が今全般的に起きており、休んだことに対してものすごく叱責を受けたりとか、休むようなやつは要らないと言って解雇になる、そしてブラック企業は平気で法を破ってしまうとも指摘されています。

 

そもそも最近は特に大企業の場合、多少改善されてきているようですが、それでも多くの企業の中には有給休暇は冠婚葬祭や風邪などの病気のためであり、その他の理由では休みを取りにくい雰囲気があるようです。

 

しかし、冷静に考えてみれば、インフルエンザにかかった従業員が出社すれば、当然普段よりも生産性が落ちますし、病状を悪化させます。

更に周りの従業員にも移してしまうリスクが生じ、会社全体の生産性ダウンにつながる可能性があるのです。

ですから、インフルエンザにかかった社員は強制的に休ませるという方が会社側の判断として妥当なのです。

ところが、人手不足という状況下で近視眼的に考え、誤った判断をしてしまう会社が少なからずあるというのが現状なのです。

 

ではこうした状況の打開策としてどのようなものが考えられるでしょうか。

私は大きく2つのことがあると思います。

まず1つ目は、会社自体による業務プロセスの改善です。

具体的には、業務プロセスの見直しといかに機械化、あるいはシステム化により生産性を向上させるかです。

今は労働生産性向上を支援するいろいろなアプリが市販化されています。

ですから、これまで全く業務プロセスの改善をしてこなかった会社がこうした取り組みをすれば、間違いなく労働生産性は少なくとも1割程度の向上が見込まれます。

更に業務によっては、AIやロボットの導入なども考えられます。

なお、こうした取り組みに自信のない会社は外部のコンサルタント会社に依頼するのも有効だと思います。

こうした取り組みにより、多少なりとも人手不足は解消されれば、一人くらい従業員がインフルエンザで休んでもなんとか日常業務をこなせるようになるはずです。

更に、インフルエンザのような流行病予防対策としては、キッザニアやアステリアのように予防接種費用を従業員とその同居家族全員分、全額と言わないまでも負担することが妥当な判断なのです。

またこうした会社の対応は、従業員のやる気にもつながるはずです。

 

さて2つ目は、国による法的な規制です。

有給休暇の最小取得日数や取得率、あるいは時間外労働時間の上限規制をし、その規制を破った会社にはそれなりの罰則を下すということをしっかりと実施すべきです。

いくら法的な規制がしっかりしていても、規制を破った会社に対しての罰則がきちんと実行されなければブラック企業は後を絶たないからです。


 
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