2019年05月25日
プロジェクト管理と日常生活 No.594 『ファーウェイ幹部逮捕に見る通信インフラ独占による国家安全保障への影響!』

昨年12月13日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で中国の通信機器メーカー大手、ファーウェイ幹部逮捕事件について取り上げていたのでご紹介します。

 

ファーウェイのスマホについて、今アメリカは安全保障上のリスクがあるとして、このファーウェイ製品を政府機関では使わないよう、アメリカだけでなく日本などの同盟国にも呼びかけています。

 

ファーウェイは今や世界第2位のスマホメーカーです。

日本国内のシェアもアップルの44.7%に次ぐ12.4%の2位で、大手キャリアだけでなく格安スマホに至るまで多くのキャリアが採用しています。

商品比較サイト、価格コムでは人気ランキングのトップ3を独占しています。

そのファーウェイ商品について、アメリカが事実上排除を呼びかけたことで、販売現場では何が起きているのでしょうか。

 

大手キャリア3社と格安スマホ、2社を扱うテルル西新井本店(東京都足立区)では、昨年夏頃からファーウェイのスマホの販売が増え、今ではおよそ15%を占めているといいます。

ファーウェイのスマホはアップルに比べて安価で機能も優れているものが多く、コストパフォーマンスの良さか売れ行きは上々でしたが、一連の騒動を受け、お客から問い合わせが相次いでいるといいます。

ソフトバンクなどのキャリアから販売店に対して、「セキュリティについてはキャリア独自のチェッに合格している」と通達が来ているといいます。

しかし、テルル モバイル事業部の小池 醸さんは次のようにおっしゃっています。

「具体的な情報が出てくれば、もっとお客様に対しても詳しい説明が出来るんですが、まだちょっとそこが不透明な部分がありますので少し困っております。」

 

こうした中、アメリカでは昨年12月12日、ファーウェイ問題に関する公聴会が開かれました。

FBIの幹部は次のように証言しています。

「中国製品を使うと個人情報が中国政府に利用される恐れがある。」

「それは非常に危険なことだ。」

「(FBIが警鐘を鳴らしたのは中国のある法律で、)数年前に施行した中国のサイバーセキュリティ法により、中国政府は通信事業者を通して利用者のデータに好きなようにアクセス出来るようになった。」

 

ファーウェイに関しては、政治についてもリスクがあると専門家は指摘します。

NRIセキュアテクノロジーズのセキュリティコンサルタント、時田 剛さんは次のようにおっしゃっています。

「どこかのコンピューターから通信を受け付けて、それに対して応えを返す必要がないのにも係わらず、ポートが開いていたという問題があります。」

 

ポートとは、通信の出入り口のことで、スマホではメールやインターネットなど外部と通信を行うたびに特定のポートを利用しています。

しかしファーウェイが指摘されているのは、用途が不明の空いているポートが存在することだといいます。

そのポートを利用することで情報を抜き取ることが可能になってしまうのです。

時田さんは次のようにおっしゃっています。

「最大の深刻な問題でいくと、外部からスマホにアクセスして電話帳であったり様々なデータを抜き出すとか、マイクが当然スマホには付いていますのでリモートから直接手を下すことなく、周囲の状況を聞き取るなんていうことが出来ると思います。」

 

このような問題は開発や設計上のミスとして生じることもあり、ファーウェイのケースもミスなのか、意図的なのかは分からないといいます。

ただ、スマホメーカーにとって空いているポートを意図的に用意する理由はありません。

時田さんは次のようにおっしゃっています。

「(もし意図的にこうしたポートを付けていたとすると、背景には中国政府がいるというようなことになってしまうことについて、)可能性としては(あります)。」

 

一方ファーウェイは、中国政府から指示されたことはなく、「安全保障上の脅威になるとの疑惑を断固否定する」としています。

 

日本でもファーウェイを締め出す動きが広がっている状況について、解説キャスターの山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。

「(番組の中で放映した)今のVTRは端末の話が中心でしたけども、もう一つは通信インフラのところですね。」

「(携帯電話の)基地局(携帯通信インフラ)の世界のシェアなんですけども、ファーウェイが27.9%で世界1位なんですね。」

「このインフラのどこかで抜かれるかもしれないとか、サイバーアタックを受けるかもしれないとか、そういう懸念がされているわけですね。」

「その他に入っている中に、ZTEという中国のメーカーがありますね。」

「(ファーウェイや中国政府は、安全上のリスクが存在する証拠はないと言っているが、)証拠があるかないかは関係なくて、どのメーカーだって同じような脆弱性はあるわけですね。」

「ただ中国の場合、共産党と企業との関係を問題視しているわけです。」

「つまり、2017年の中国共産党の会議(7中全会)の中で「あらゆる活動への党の指導を確保する」という声明が出ている。」

「つまり、習近平体制になってから、共産党による企業への介入が強まっています。」

「つまり、データを出しなさいと言われたら、今拒めない関係にあるわけです。」

「そこを日本もアメリカも問題視しているわけですよね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

なお、昨年12月7日(金)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)によれば、日本政府は各省庁が通信機器を調達する際の内規について、調達価格のみを基準としてきた従来の方針を改め、安全保障上のリスクも考慮に入れるよう改める方向で検討に入りました。

ただ具体的な脅威が明確になっていないため、ファーウェイなどといった具体的な企業名を明示することは避ける方針です。

一方、中国政府はこういった日本の動きに対して、外務省報道官が次のような声明をしています。

「日本政府が中国企業に公平な環境を提供し、両国の相互関係を損なわないよう希望する。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

今や、ネット社会の浸透、およびスマホやパソコンなどの通信機器の浸透により、これらは社会インフラの一つとしてしっかりと根付いています。

ですから、これらは一般家庭や企業のみならず公官庁にとっても不可欠な存在です。

そうした中、こうした中での情報のやり取りが特定の組織、あるいは国に筒抜けになっている可能性があるという事態は、個人情報の保護や国家安全保障の観点から大問題です。

 

そこで無視出来ないのは共産党による1党独裁国家、中国の動きです。

中国のサイバーセキュリティ法により、中国政府は通信事業者を通して利用者のデータに好きなようにアクセス出来るようになりました。

しかし、ファーウェイは、中国政府から指示されたことはなく、「安全保障上の脅威になるとの疑惑を断固否定する」としています。

しかし、ファーウェイのスマホは、用途が不明の空いているポートが存在し、そのポートを利用することで情報を抜き取ることが可能になってしまうといいます。

こうした動きとは別に、特に注目すべきは習近平国家主席による覇権主義的な様々な取り組みです。

この取り組みがどんどん成果を上げ続けていけば、やがて中国共産党による世界制覇につながるのです。

ですから、このような動きを自由主義陣営としては見過ごすことは出来ません。

こうした観点からトランプ大統領の強引とも言える言動に民主党側も賛同していることは理解出来ます。

 

こうした状況を踏まえると、やはり国家安全保障の観点から特に中国における政府やスマホなど、通信機器メーカーの動きに注意を払うことを怠ることは出来ません。

同時に、トランプ大統領がファーウェイ製品を政府機関では使わないよう、アメリカだけでなく日本などの同盟国にも呼びかけていることは理解出来ます。

 

このように今や通信機器は日常的な暮らしの利便性を高めると同時に、軍事的な観点からとても重要な位置を占めるようになってきているのです。

ですから、国家安全保障におけるリスク対応策として、どのメーカーの通信機器を使用すべきかの選択がとても重要になっているのです。


 
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