2019年04月23日
アイデアよもやま話 No.4310 無人化を可能にする考えるロボット − その画期的な特徴!

1月7日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で無人化を可能にする考えるロボットについて取り上げていました。

そこで、今回はそのロボットの画期的な特徴に焦点を当ててご紹介します。 

 

人手不足が叫ばれる今、注目を集めるのが産業用ロボットです。

しかし、ある作業がネックとなり、導入が進まない事態となっているのです。

それはティーチングと言われる作業です。

これはロボットにどのような作業をさせるか、事前にプログラミングをするものなのですが、多くの費用と時間がかかります。

ただ、手間をかけても出来る動作は一つだけです。

例えば箱をアームでつまむ動作は箱の大きさが変わっただけでも対応出来ないのです。

この弱点を克服しようとあるベンチャー企業が立ち上がりました。

 

新潟県見附市にある日用品の卸売りを手掛けるPALTAC(パルタック)株式会社の倉庫、増え続けるドラッグストアからの注文に対応するため、昨年稼働しました。

1日に1万箱以上もの商品を出荷しています。

今後も倉庫を増築する考えですが、商品の積み下ろしといった重労働がネックとなり、人手が思うように確保出来ないといいます。

PALTAC 研究開発本部の馬場 和弘さんは次のようにおっしゃっています。

「物流業界では多種多様なケース(箱)を扱いますので、ケース(の大きさ)が次々に変わっていきます。」

「そのケースを正確に認識してコンベアにピッキングするのが今まで難しかったんですけども、・・・」

 

従来のロボットにティーチングを施した場合、順序正しく並んだ商品を取ることは出来ても、箱の向きが変わっただけで対応出来なくなってしまうのです。

商品の配置は常に変わるため、以前、産業用ロボットの導入を考えた際にティーチングし切れないと判断し、導入を諦めたといいます。

 

しかし、日本のあるベンチャー企業がこの問題を解消しました。

箱を吸引して持ち上げるのですが、自分で考える力があるため、どんな状況にも対応出来るといいます。

小さな箱の場合は吸引ノズルが他の箱に当たらないように考えながらピッキングします。

馬場さんは次のようにおっしゃっています。

「生産能力は従来の人と比べて2倍から4倍、労働不足解消だけでなく、更に生産性もアップする・・・」

 

都内墨田区にある隅田倉庫株式会社の中に産業用ロボットの知能を開発するベンチャー企業、株式会社MUJINのオフィスがあります。

MUJINでは工場や倉庫などで行われる作業を研究し、ロボットを制御するシステムを開発しています。

こちらのCEO、滝野 一征さん(34歳)は次のようにおっしゃっています。

「工場の中にはいろんな作業があるんですけども、バラバラに入った部品をつかんでどこかに置いていくという作業が沢山あるんですね。」

「事前にロボットにどういうふうに動かなきゃいけないかを膨大にティーチングしないといけないですね。」

 

「(リングのような部品の)端をつかむ時は外れやすいので、それは自分で考えてゆっくり、そうっと置いていく。」

 

しかし、MUJINの技術を使えば、2週間ほどで自分でどんどん判断して勝手にやってくれるようになります。

こうした動きを可能にするのがMUJINの制御装置です。

カメラの映像などからモノの状況を把握し、動作を考えるAI、人工知能を搭載しているのです。

ロボットの自律制御を可能にするモーションプランニングというAI技術を駆使しているため、ティーチングが不要なのです。


なお、このシステムを作り上げたのがMUJINのCTO(技術責任者)、ロセン・デンコウさん(35歳)です。
アメリカの名門工科大学で博士号を取得したAIのスペシャリストです。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

まず驚いたのは、現在の一般的な産業用ロボットではティーチングに多くの費用と時間がかかり、しかも出来る動作は一つだけという状況です。

ですから、AIに大きな関心が寄せられている状況においても産業用ロボットに十分活用されず、導入が進まない事態となっているわけです。

 

そうした中、ロセンさんはロボットの自律制御を可能にするモーションプランニングというAI技術を駆使してティーチングを不要にし、考えるロボットを実現する技術を確立させたのです。

この結果、労働不足解消だけでなく、生産性向上にも寄与するとPALTAC 研究開発本部の馬場さんはおっしゃっています。

ですから、ロセンさんによるこの発明は産業用ロボット業界における画期的な出来事と言えます。

それを示しているのは、ロセンさんの発明した制御装置は世界大手のFANUCなど主要メーカーのロボットに導入されているという事実です。

 

ですから今、安倍政権により進められている成長戦略、あるいは「働き方改革」を進めるうえで、ロセンさんの発明は貢献するものと大いに期待出来ます。

更に、この技術を発展させることによって、いずれ世界中の多くの工場や物流倉庫などが完全自動化されることも夢ではなくなります。


 
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