2019年03月22日
アイデアよもやま話 No.4283 レシートがお金を生み出す!?

前回、個人情報がお金を生む「情報銀行」についてお伝えしました。

そうした中、3月11日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でレシートがお金を生み出すサービスについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

皆さんはお財布の中についついレシートが溜まってしまうということがありませんでしょうか。

もらっても後で捨てるのがほとんどだったレシートがお金を生み出す“打ち出の小槌(こづち)”となるかもしれません。

 

ついつい溜まってしまうレシート、そんな厄介者をお金に変える取り組みをしている人がいます。

それは、現在18歳、4月からは大学生の山内 奏人さんです。

ワンファイナンシャル(ONE FINANCIAL)株式会社(東京都港区)の社長で、3年前に高校生の時に起業しました。

山内さんは次のようにおっしゃっています。

「今まで捨てていたものがお金になるというのは、結構ユーザーにとっては分かり易いのかなと思っていて、そういう体験をテクノロジーやビジネスの力を使って世の中に実装していくのって凄い美しいし、楽しいなと思っていて・・・」

 

実は昨年6月にリリースした「ONE」というレシート買い取りアプリが大きな話題を呼びました。

そのアプリとは、どんなレシートでも写真を撮って送るだけで1枚当たり最大10円がもらえるというものです。

利用者が殺到し、アップストア(App Store)の無料ランキングではリリース直後に1位を獲得しました。(2018年6月13日時点)

しかし、ある理由からサービスを1日で停止することになりました。

山内さんは次のようにおっしゃっています。

「数万人だったらそのまま続けられたと思うんですけど、数十万人の方に毎日お使いいただくようになってしまった、良い意味でも悪い意味でも。」

「うちの資本力や態勢的にも(サ−ビスの継続は)ちょっと厳しいところがあったので・・・」

 

そこで山内さんは、1日に買い取るレシートの枚数に上限を設けることでサービスを再開しました。

 

しかし、どうやってレシートはお金を生み出すのでしょうか。

まず買い取ったレシートから購入した日時と店舗名、商品名をデータ化、そこへ事前に登録されたユーザーの性別や生年月日、住所などのデータを合わせて企業に販売しています。

山内さんは次のようにおっしゃっています。

「いつ誰がどんなものをどんな決済手段で買ったかみたいなデータが集まってくるので、「レシート1枚しかありません 10円で買って下さい」は多分成り立たないです。」

「でも例えば「レシート10万枚があります 100万円で買って下さい」は結構成り立つと思っていて・・・」

 

例えばビールなど、特定のジャンルや商品に絞ったデータを抽出することも可能、企業はこうしたデータを商品開発や市場価格の調査などに活用するといいます。

山内さんは次のようにおっしゃっています。

「データは石油だみたいなと皆さん言われると思うんですけど、石油というより原油に近いような、本当にそのままだと何も使えない状況なので、それをうまく加工したり、いろいろな情報と紐づけたりすることによって、データの価値を上げていくということをしています。」

 

レシートをビジネスに活用する動きは広がっています。

今年2月に「ラクテン パシャ」を始めた楽天もその一つです。

レシートを撮影して送ることで楽天ポイントがもらえるサービスです。

ただし、どんなレシートでもいいわけではなく、あらかじめ参加企業が設定した商品の中から購入し、そのレシートの写真を送るというものです。

楽天 PPAPインキュベーション課の山口 高志さんは次のようにおっしゃっています。

「ある企業様においては、新商品を販売する時において、まずお試しの購入(の場)を作りたいというところ、更にはどういった人が買っているのか、特定データを見たいというところで利用される・・・」

 

この日、楽天の担当者が向かったのは、食品メーカーのオハヨー乳業株式会社(東京都千代田区)です。

昨年12月に発売した機能性ヨーグルトで「ラクテン パシャ」の活用を始めました。

オハヨー乳業 マーケティング戦略本部の阿部 克也さんは次のようにおっしゃっています。

「なかなか機能性商品というのが内容認知がされづらくて、そこが非常に課題になっているので・・・」

 

楽天の山口さんは次のようにおっしゃっています。

「かなり多くの方が今回初めて買いましたというところで、新規の購買の促進という観点でも想定されていた効果が見られているんじゃないかなという・・・」

 

企業は商品をお客に知ってもらえることに加え、レシートから得た情報と楽天の会員情報から紐づけられた属性データを収集出来るのです。

更に同じタイミングで簡単な質問に答えてもらうことで、データの価値がより高まるといいます。

オハヨー乳業の阿部さんは次のようにおっしゃっています。

「購買データやPOSデータは、弊社がデータを持っているわけではないので、そのデータを弊社が取得するまでには時間がかかって商品発売から1ヵ月ほどかかってしまうのが、楽天さんのサービスを使うことですぐに(消費者を)理解出来る、そうすればすぐに対応出来るというところがメリットですね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

前回ご紹介した「情報銀行」、あるいは今回ご紹介したレシートデータの収集など、一般的な個人情報や購買履歴などを収集・加工する事業はどんどん広がっていくと見込まれます。

当然、その中にはSNSなどからの個人情報も含まれます。

その背景には、企業の売り上げの伸び悩み対策、あるいは更なる売り上げ向上といった狙いがあります。

企業側からすれば、まさに“敵(消費者)を知れば百戦危うべからず”なのです。

そして、こうしたビッグデータは、一企業だけで集められるものではありません。

しかし、複数のビッグデータ収集企業から多くの個人情報を特定企業が購入して活用すれば、個々の購入者の消費動向を知ることが出来、売り上げ増に結び付く商品開発をより的確に、しかもより早く出来るようになります。

こうした企業の取り組みは購入者にとってもより良い商品を購入するうえで悪くはありません。

しかし一方で、こうした企業の動きにより、私たち一人ひとりの個人情報は限りなく“丸裸状態”になっていきます。

ですから、個人情報の“見える化”には私たち購入者にとってメリットがある反面、個人情報の悪用リスクが高まるということを忘れてはならないのです。


 
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