2018年11月28日
アイデアよもやま話 No.4185 ”奇跡の糸”が世界を変える!? その3 体調管理への応用!

7月31日(火)放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)で「銀メッキ繊維」について取り上げていたので5回にわたってご紹介します。

3回目は体調管理への応用についてです。 

 

繊維メーカー、ミツフジ株式会社(東京都千代田区)の3代目社長、三寺 歩さん(41歳)はある特殊なシャツを作ろうとしています。

その秘密兵器は銀メッキを施した特殊な繊維、すなわち「銀メッキ繊維」です。

「銀メッキ繊維」を生かした「シャツ型ウエアラブル端末」には医療の現場も大きな可能性を見出しています。

着るだけでいつでも体のデータが取れることに期待を賭けているのです。

熊本大学医学部付属病院の宇宿 功市郎教授は次のようにおっしゃっています。

「24時間、何日間か(「シャツ型ウエアラブル端末」で)測ってもらうと、どういう時に不整脈が起きてどういうふうなことだったかが分かるわけですよね。」

「これだったら自由にいつでも検査してもらえるので、そういう意味でも有用性は高いと思っています。」

 

そんなミツフジに助けを求めに来た企業があります。

相談に来た前田建設工業の担当者は次のようにミツフジに訴えます。

「現場のニーズとしては、やはり夏場の体調不良、特に熱中症に代表される症状なんですけども、これが一番問題。」

「仕事に支障をきたす体調不良も検知出来るとすごくありがたいなと。」

 

ミツフジのシャツで作業員の体調管理をしたいというのです。

茨城県取手市、350人が働くゼネコン、前田建設工業の建設現場です。

 

他の職種に比べ熱中症による死傷者が多い建設業、炎天下での作業は常に危険と隣り合わせです。

こちらでは様々な熱中症対策を打ってきました。

それでも完全に防ぐことは難しいといいます。

前田建設工業の担当者は次のようにミツフジに訴えます。

「熱中症というのは本当に個人個人の体調のことだなと思いまして、これがやっぱりどうしても聞き取れない。」

「いくら口で言っても抑えられない。」

 

これに対して、三寺さんは次のようにおっしゃっています。

「外から見ても中々分からないというのは、体の状態を見てあげるものがあればより良いですよね。」

 

三寺さんは北九州市にある産業医科大学を訪ねました。

こちらにある人工気候室では、温度や湿度をコントロールし、様々な気候条件を作り出すことが出来ます。

設定したのは熱中症を起こし易い環境です。

この環境で体を動かすと、心臓の動きにどんな変化が起こるか「シャツ型ウエアラブル端末」でデータを取ろうというのです。

併せて体の内部の温度、深部体温も測りながら体調の変化の兆候を探ります。

実験を始めて1時間、深部体温が38℃まで上昇しました。

熱中症になる直前の体の状態、そのデータを取ることが出来ました。

しかし、予期せぬトラブルが起きました。

「シャツ型ウエアラブル端末」のデータが突然大きく乱れてしまったのです。

運動の最中に電極がわずかにずれたのが原因でした。

対策を迫られた三寺さんと父の康廣さんは石川県かほく市にある町工場、竹中繊維を訪ねました。

竹中繊維は父、康廣さんの頃から長年の付き合いがあります。

得意とするのは伸縮性のある生地です。

伸びる電極を一緒に作ってきました。

竹中さんは改善案をイラストで描き始めました。

それは従来の発想を覆す大胆なアイデアでした。

 

その日の夜、東京のミツフジ本社に戻った三寺さんは社員を集め、驚きの提案をしました。

従来のウエア、10万着の生産計画を中止し、改良を施したものに変更しようというのです。

実はこの会議は本来、「量産決定会議」だったのですから、会議の参加者は唖然です。

しかも2週間という短期間で改良版への変更をやりたいと伝えたのです。

三寺さん、ギリギリの決断です。

早速製作をスタート、社員自ら試作品を着て確認を繰り返します。

 

こうして7月下旬、茨城県取手市の建設現場に新しいウエアが届けられました。

熱中症の経験がある作業員も試すことになりました。

新しい改良型ウエアラブル端末では金目の電極部分が替えられていました。

今までは伸縮性がある一方、激しい運動をすると電極がずれてしまうという問題がありましたが、新しいウエアは電極部分だけあえて伸縮性の低い素材に変更しました。

電極を固定させるのが狙いです。

この日の気温は35.8℃、暑さは厳重警戒レベルです。

現場を走り回ることが多いという作業員ですが、三寺さんはデータに乱れがないことを無事確認出来ました。

着心地も問題ないというのが被験者である作業員の評価です。

実は今回スマホの表示に工夫を加えていました。

今までの実験で得た結果をもとにその場で自分の健康状態を確認出来るようにしたのです。

体調指数が高いと調子は良好、一方数値が低くなると赤く変化し、休息を取るよう促します。

現場責任者である関口 孝浩所長の評価は上々、ウエアラブル端末による体調管理に新たな可能性が見えて来たようです。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

どのような問題を解決するうえでも、まず原因の特定から始めます。

ですから、健康管理も個人個人の体調を把握することから、病気の症状が出る前に、あるいは病気の症状が出たとしてもすぐに適切な対応をすることが出来ます。

そういう意味で、「シャツ型ウエアラブル端末」は体調指数を計ることで自分の健康状態を確認出来るのです。

そして、この情報によっては本人が自分の体調を確認出来るだけでなく、IoTにより個々の企業内の健康管理部署や医療管理関係機関に情報が送られることにより、体調に異変があれば、速やかに対応することが出来ます。

ですから、作業環境の厳しい建設関係などの現場で働く作業員だけでなく、猛暑や厳しい寒さの続く冬の季節に限らず、高齢者など一般の人でもこの「シャツ型ウエアラブル端末」を普段から着用するような暮らしになれば、日本のみならず世界中の人たちの健康管理は格段に向上するはずです。

 

ということで、「シャツ型ウエアラブル端末」は健康管理に革命をもたらす可能性を秘めていると思います。

 

同時に、従来のウエア、10万着の生産計画を中止し、短期間で改良を施したものに変更しようと決断した三寺さんは、決断力のある素晴らしい経営者だと思いました。

ですから、三寺さんには是非とも安価で着易いように「シャツ型ウエアラブル端末」の更なる改善を施し、世界展開していただきたいと思います。


 
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