2018年11月19日
アイデアよもやま話 No.4177 普及の遅い霞が関のテレワーク!

7月24日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で経済産業省(経産省)でのテレワークの取り組みについて取り上げていたのでご紹介します。

 

東京オリンピックの開幕まで後2年となった7月24日、東京スカイツリーではカウントダウンのイベントが開かれました。

しかし、オリンピック期間中には交通規制に伴う通勤ラッシュの悪化なども懸念されています。

そこで注目されているのが職場に出勤しないでインターネットを使って自宅などで仕事をするというテレワークです。

政府は企業にこのテレワークを呼びかけていますが、制度がある企業はまだ9%というデータもあります。(国土交通省平成29年度テレワーク人口実態調査より)

そうした中、深夜までの国会答弁書の作成などでテレワークとはほど遠かった霞が関のある省庁が改革に乗り出しました。

はたして旧態依然とした働き方の霞が関でテレワークは普及するのでしょうか。

 

東京渋谷区の住宅街、ここに住む経産省化学物質管理課の西村 栄利子さんは2歳の娘を育てながら働いています。

西村さんが待っていたのは出社している同僚からのビデオ電話、経産省で行われている会議に出席するためです。

西村さんはパソコンなどを活用して、家や社外で仕事をするテレワークを行っています。

会議は離れていても内容を共有出来るように工夫がなされています。

出席者が持ち寄った会議用の電子資料、ここにそれぞれが変更点やアイデアを書き込みます。

すると、その内容が全員の電子資料に反映されます。

出席者が1枚の資料を見ているのと同じ感覚です。

会議はおよそ15分で終わりました。

西村さんは次のようにおっしゃっています。

「(テレワークは)最初はすごく特別な感覚かなと思っていたんですけど、やってみるとあまり職場と変わらない・・・」

 

在宅勤務などのテレワークを推進しようと、経産省は省内のノートパソコンを軽量なタブレットに替え、職員が自宅に持ち帰れるようにしています。

「月に1日は在宅勤務を」と職員に呼びかけています。

国が進める「働き方改革」に足並みを揃えようという狙いです。

西村さんは省内の環境の変わり方に驚いているといいます。

「(家にいながら仕事が出来るということについて考えられたかという問いに対して、)正直全然考えられませんでした。」

「(在宅勤務では)家事とか普段職場にいたら全然出来ないことを隙間時間で出来るので、育児と仕事の両立の上では不可欠な働き方の選択肢の一つと思っていますね。」

 

経産省は民間企業とのやり取りにもテレワークを用いることを始めました。

経産省情報政策局総務課の吉田 泰己さんはイタリアとのウェブ会議を利用しています。

吉田さんがビデオ電話で話しているのは、イタリアに出張中のベンチャー企業の日本人女性です。

これまでは打ち合わせのたびにわざわざ足を運ぶ必要がありました。

テレワークの導入が移動の時間や費用を減らすことにつながると、現場は期待しています。

吉田さんは次のようにおっしゃっています。

「出張しなくていい案件というのもこれ(テレワーク)でカバー出来る部分も増えてくると思うので、労働の質や時間の短縮、出張コストの削減みたいなところで全体的に生産性が上がっていくんじゃないかなと思います。」

 

実は「世界銀行2018ビジネス環境ランキング」によると、日本は起業のし易さで190ヵ国中106位と低迷しています。

それを証明するものが経産省の地下室の倉庫にあります。

経産省情報プロジェクト室長の中野 美夏さんは次のようにおっしゃっています。

「(倉庫の棚いっぱいの書類を指して、)これはごく一部です。」

「見えている限り、およそ会計関係の手続き書類を持っていると。」

「各省庁も同じように持っていると思います。」

「手続きが進むにつれて、計画の変更があると足して足してとやっていくと積み上げると結構な分量になってしまうと。」

 

中小企業の補助金申請などに必要な書類がなんと分厚いことか、行政手続きの煩雑さに加えて時間も相当かかることから日本は世界に後れを取っているのです。

そこで経産省は現在、中小企業の補助金申請を分かり易く簡素化するためのアプリを開発中です。

 

ITを積極的に使うことで役所も企業もより効率的な仕事が出来るというのです。

中野さんは次のようにおっしゃっています。

「こういうインターフェイスを通じて質問をするですとか、遠方の方とかにとってみると役所のハードルが下がってくるので、いろんな方が参加し易いかたちになってくるのかなと。」

 

経産省が働き方の見直しを進める一方で、7月20日(金)の午後11時50分過ぎに厚生労働省(厚労省)ではこうこうと明かりが灯っていました。

財務省でも総務省でも同様でした。

7月24日の会議で、世耕経済産業大臣は次のようにおっしゃっています。

「(取り組みに関して経産省だけでなく、霞が関全体でやらないと効果がないのではという問いに対して、)確かに霞が関はまだまだテレワークは遅れている面があると思いますが、テレワークでも支障なく業務が遂行出来るんだということを他省庁にもしっかりお見せをして、他省庁がそれを真似ていただくことで広がっていくことも期待したい。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組を通してまず感じたことは、「世界銀行2018ビジネス環境ランキング」での日本は起業のし易さが190ヵ国中106位という現状です。

このことは起業に伴う制度の煩雑さや要する時間、コスト、あるいは支援の仕組みに改善の余地が大いにあることを意味しています。

この問題は、主に国や自治体が主体性を持って解決に取り組むことが求められます。

 

次に、あらためて安倍政権の進める「働き方改革」におけるテレワーク活用の必要性を感じました。

なお、テレワークのメリットについて以下にまとめてみました。

・自宅に限らず、社外のどこでも仕事が出来ること

 ⇒ ・自宅では家事や育児などと仕事との両立が図れること

   ・旅行などプライベートな外出先でも仕事が出来ること

   ・専業主婦にも新たな仕事の道が開けること

   ・電子データ化によるペーパーレスの促進

・通勤や出張などに伴う時間やコストの削減

⇒ ・時間の節約分を様々なプライベートタイムとして活用出来ること

 

一方で、社外のどこでも仕事が出来るテレワークでは機密情報の保護対策が一段と求められるようになります。

 

さて、こうした状況を今回ご紹介した霞が関に当てはめてみるととんでもなくスローなペースに驚かされます。

というのは、私が以前勤務していた外資系IT企業では、今回ご紹介したような経産省の取り組みは既に20年ほど前に始められていたからです。

また、とても残念なのは、中央官庁が率先してITなどの最新技術を取り込んで生産性向上を図ろうという気概が見られないことです。

どちらかというと“石橋を叩いて渡る”という組織風土が感じられます。

 

ということで、「働き方改革」をより有効にそして、より素早く国内に浸透させるうえで重要なことは、中央官庁が率先してテレワークなどを通しての省内のみならず対外的なやり取りにおける業務改革を進めることだと思います。

そして、その改革の結果を企業にも展開するための支援活動を行うことだと思います。

それによって、中央官庁は深夜勤務などから解放され、働き易い職場に変身出来るので優秀な人材が集まって来るはずです。

同時に、企業に対しても「働き方改革」の具体的な姿を提示し、そのメリットを実感させることが出来るのです。

 

日本は以前から一部の企業を除いて、総じて生産性が低いと言われてきましたが、中央官庁が率先して真摯に「働き方改革」を進めれば、日本の企業全体に波及し、日本全体の働き方が変わることが出来るのです。

 

ということで、「働き方改革」を進める安倍総理には「先づ隗より始めよ」の精神で身近な中央官庁でも精力的に取り組んでいただきたいと思います

同時に中央官庁で働く方々にはこうした気概を持って、深夜残業からはかけ離れた働き方でスマートに働ける環境を自ら構築し、国内企業の手本となって欲しいと思います。


 
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