9月1日(土)放送の「NHKスペシャル」(NHK総合テレビ)では「MEGAQUAKE「南海トラフ巨大地震 “Xデー”に備えろ」」をテーマに取り上げていました。
そこで、番組を通して、南海トラフ巨大地震発生のリスク対応策について4回にわたってご紹介します。
4回目は巨大地震の前兆を捉える最新の研究についてです。
どうすればより正確に巨大地震の前兆を捉えられるのか、最新の研究が進んでいます。
岐阜県の旧神岡鉱山の跡地にある地下トンネルでごくわずかな地震の兆候を捉えようという試みが行われています。
東京大学の新谷 晶人教授が開発しているのは、レーザーを使って地盤のごくわずかな動きを観測する超高精度の装置です。
巨大地震が起きる直前、震源域で岩盤がごくわずかにずれ動き始める可能性があると考えられています。
こうした現象を捉えるのが新谷さんの目標です。
この観測装置の精度は従来の10倍を誇ります。
これまでの装置では観測出来る地盤の動きはおよそ1000分の1ミリでした。
ところがこの装置は10万分の1ミリの動きも捉えられるというのです。
高い精度を実現するため、装置の全長は1.5kmにも及びます。
その内部ではレーザー光が反射を繰り返しています。
地盤がわずかでも動くと、レーザー光が反射して戻るまでの時間が変化する仕組みです。
新谷さんはこの装置を南海トラフの震源域の近くに設置し、これまで観測されたことのない巨大地震の前兆を捉えたいと考えており、次のようにおっしゃっています。
「微小な変動が地震の前に起こるかもしれませんし、新しいデータを取れるような期待があります。」
巨大地震の前兆を宇宙からの目で捉える挑戦も進んでいます。
オーロラが舞う地球と宇宙の堺目、電離層、電気を帯びた粒子、電子が無数に漂っています。
北海道大学の日置 幸助教授は巨大地震の前に電離層で異変が起きると考えています。
東日本大震災の当日、2011年3月11日、東北地方上空の電離層で観測された電子の数の変化ですが、巨大地震が発生するおよそ40分前から異常な変化が起きていたというのです。
日置さんは次のようにおっしゃっています。
「極めて重要なことかなとこの時点で思いましたね。」
もしこれが巨大地震の前兆だったのなら、直前に地震を予測出来たのではないか、2000年以降に起きたM8以上の巨大地震を調べた日置さんは同じような変化をいくつも見つけました。
2004年にインド洋大津波を起こしたスマトラ島沖のM9.1の巨大地震では、上空の電子は地震の1時間以上前から変化していました。
また、2014年に起きたM8.2のチリのイキケ巨大地震、この時も地震発生のおよそ20分前から変化が現れていました。
同じような変化を分析した13の巨大地震のうち10で確認しました。
電離層の異常は地震の前触れではないのか、日置さんは慎重に検証を重ね、南海トラフ巨大地震の予測につなげたいと考えており、次のようにおっしゃっています。
「この情報を生かすことが震災で亡くなった方へのこちらが出来る最大になると。」
「科学が地震による被害者を少なく出来ることを夢見て仕事をしていきたいと思います。」
日本に迫りくる未曽有の国難、南海トラフ巨大地震、“Xデー”が訪れる前に今何が出来るのか、問い続けることが私たちの未来を変えるカギになるのです。
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
今回は、地下トンネルでごくわずかな地震の兆候を捉えようという試み、そしてオーロラが舞う地球と宇宙の堺目、電離層の異変という巨大地震の前兆を捉える2つの最新の地震予知の方法のご紹介でした。
少しでも早く巨大地震発生の予知が出来ることは、それだけ避難などの適切なリスク対応策を取ることが出来ます。
ですから、こうした地震予知の研究は今後ともより高い精度を目指して進めていただきたいと思います。
また、こうしたデータをもとに“臨時情報” (巨大地震が発生するかもしれない予兆を捉えて公表する情報)が全ての国民に的確に伝わるような仕組みの確立も必要です。
しかし、それだけで万全とは言えません。
私たちは日頃から以下のような備えをしておくことが被害を少しでも食い止めることが出来るのです。
・電気、ガス、水道が止められても最低でも3日間くらいは自給自足の生活が出来るような備えをしておくこと
・すぐに安全な場所に避難出来るように、日頃から緊急避難セットを準備しておくこと
・避難場所や避難経路、および避難場所までにかかる時間などを確認しておくこと
・家族間などの連絡方法を確認しておくこと