2018年09月22日
プロジェクト管理と日常生活 No.559 『古い耐震基準の大規模建物の倒壊リスク!』

今月6日(木)3時過ぎに発生した北海道の大地震など、最近日本各地で地震が起きています。

そうした中、ちょっと古い情報ですが、4月14日(土)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)で古い耐震基準の大規模建物の倒壊リスクについて取り上げていたのでリスク管理の観点からご紹介します。

 

2016年4月に発生した熊本地震では多くの建物が被害を受け、あらためて注目されたのが耐震性です。

古い耐震基準で建てられた大規模な建物のうち、商業施設やホテル、病院などは耐震基準が義務付けられていますが、全国で約1700棟が震度6強以上で倒壊する恐れがあることが分かりました。

若い世代に人気の「渋谷109」が入る道玄坂共同ビル(東京・渋谷)、紀伊国屋書店の入る紀伊国屋ビルディング(東京・新宿)、更にJR新橋駅前にあり、仕事帰りのビジネスマンが立ち寄る居酒屋などが軒を連ねるニュー新橋ビル(東京・新橋)、いずれも耐震性が不足し、震度6強以上の揺れで倒壊の恐れがあると診断されていました。

 

古い耐震基準で建てられ、耐震診断が義務付けられている全国1万棟の大規模建物について、公表結果を集計したところ、17%に当たる約1700棟が震度6強以上の揺れで倒壊の恐れがあることが分かりました。

このうち東京都では42棟あり、詳しい結果は東京都耐震ポータルサイトで見ることが出来ます。

東京の42棟のうち、耐震改修工事の具体的な計画がある建物は13棟に止まり、残る29棟は計画が決まっていないか、検討中だということです。

計画が決まらない理由の一つがテナントなど関係者との調整です。

サブカルチャーの聖地とも言われる中野ブロードウェイ(東京・中野区)の場合、区分所有者が約520人で、耐震工事に消極的な人や簡単に連絡が取れない人がいて、意見の集約が進んでいないということです。

中野ブロードウェイ商店街振興組合の青木 武理事長は次のようにおっしゃっています。

「公表された事実を(区分所有者に)しっかり受け止めてもらう対策を取らずに時間を過ごすことは許されないのかな・・・」

 

ただ、耐震工事の負担は軽くありません。

松山市の道後温泉にある昭和28年(1953年)創業の宝荘ホテルは耐震化のため全面的に建て替えを行っています。

松山市と国から2億5000万円ほど補助金が出たものの、自己負担は約11億5000万円、1年半近く営業休止を余儀なくされました。

宝荘ホテルの宮崎 光彦社長は次のようにおっしゃっています。

「安心して過ごしていただけることはお客様に対する訴求力の1つじゃないかなと。」

「リスクに備えることが経営、特に旅館ホテルのような多くの方にご利用いただく施設としては責務だと思います。」

 

耐震化で課題となる関係者の調整や工事の負担について、専門家である名古屋大学の福和 伸夫教授は次のようにおっしゃっています。

「合意形成をすることが出来るようなコーディネーター役を役所から派遣するとか、都道府県の耐震補助だけでは足りない場合、低利の融資をするとか、皆さんが耐震化を進め易いような環境整備が必要だろうと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

今回お伝えしたように、古い耐震基準で建てられ、耐震診断が義務付けられている全国1万棟の大規模建物について、17%に当たる約1700棟が震度6強以上の揺れで倒壊の恐れがあるいいます。

そして、東京の42棟のうち、耐震改修工事の具体的な計画がある建物は13棟に止まり、残る29棟は計画が決まっていないか、検討中だといいます。

恐らく全国的にみても大なり小なり計画が決まっていないか、検討中の耐震改修工事が必要な建物があると思われます。

しかし、実際に耐震改修工事を進めようとすると、関係者の調整や工事の負担といったような課題があるとの指摘があります。

ですから、しっかりした耐震改修工事を進めるためには中長期計画が必要です。

現状のままでは、特に大規模建物においては昼間の時間帯に巨大地震が起きればかなりの被害が想定されます。

 

一方こうした状況において今必要なのは、状況に応じた最善のリスク対応策を検討すること、そして万一大地震が発生した場合のコンティンジェンシープランを検討しておくことです。

これだけでも何もリスク対応策を検討しておかない場合に比べて、はるかに被害を少なくすることが出来るはずです。


 
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