2018年09月17日
アイデアよもやま話 No.4123 驚異の生物工場 その1 お米が生物工場に!

5月22日(火)放送の「クローズアップ現代+」(NHK総合テレビ)で生物工場について取り上げていました。

そこで4回にわたってご紹介します。 

1回目はお米による生物工場についてです。

 

イチゴの細胞に犬の遺伝子の一部を組み込むと、炎症を抑える物質が沢山作られます。

これをすり潰して凍結乾燥すると、犬の歯周病薬になるのです。

このように生物に別の生き物の遺伝子を組み込み、重要な物質を作る工場に変えてしまうことが生物工場と呼ばれています。

他にも唾液やヤギが薬の工場になったり、大腸菌がプラスチックになったり、驚くようなことが既に実現し、画期的な医薬品や素材が続々と作り出されているのです。

生物工場は世界でも大注目、2020年には4兆円の市場になると試算されています。

アメリカのバイオベンチャーのある男性研究員は次のようにおっしゃっています。

「非常に興奮しています。」

「生物による新たな産業革命です。」

 

脅威のテクノロジー、生物工場、番組ではその最前線に迫ります。

薬もモノもなんでも作り出してしまうという生物工場、私たちの身近なところにもどんどん広がってきています。

 

お米を生物工場にしたのは、茨城県つくば市にある農研機構(農業・食品産業技術総合開発機構)です。

主席研究員の高野 誠さんは次のようにおっしゃっています。

「ここにあるお米が昨年収穫した“スギ花粉米”になります。」

 

見た目はごく普通のお米、実はその名の通り、含まれているのはスギ花粉の成分です。

従来の治療にも花粉の成分を少しずつ摂取して体を慣れさせ、発症を抑える舌下免疫療法や皮下免疫療法などがあります。

ところが生物工場の技術でその成分を含むお米を作れば、毎日の食事がそのまま予防につながると考えたのです。

 

このお米の作り方、やはり稲に別の生物の遺伝子を組み込むのだそうです。

まず稲の遺伝子にスギの細胞から取った花粉成分を作る遺伝子を組み込みます。

これを育てていくと、収穫したお米の中に大量の花粉成分が作られるのです。

一度遺伝子を組み込んでしまえば、後は稲を普通に育てるだけです。

これまで治療に使われてきた花粉成分よりも安く、簡単に生産することが可能だといいます。

高野さんは次のようにおっしゃっています。

「本当にもう桁違いに沢山できることが分かっています。」

「生物の力を借りることによって、複雑な物質が非常に安いコストで出来るということがありますので、それを利用しない手はないなというのはありますね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

医食同源という言葉がありますが、今回ご紹介した“スギ花粉米”を食べればそのまま花粉症の予防につながるというのですから、人工的に医食同源を可能にしてしまう遺伝子組み換え技術の応用と言えます。

そして、こうした技術は様々な医療法に応用出来そうです。

しかも、生物の遺伝子を活用したとてもシンプルで安価な技術のようです。

ですから、まさに生物による新たな産業革命と言えます。

 

ここで思い起こされるのは、これまで何度となく繰り返しお伝えしてきた“アイデアは既存の要素の組み合わせである”という言葉です。

生物の遺伝子の組み合わせにより、無限ともいえる医療法を手に入れることが出来るのです。

ただし、こうした医療法には副作用など、ヒトへの影響など安全面や環境への影響に問題がないかなどの徹底的な事前調査が求められます。


 
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