2018年06月08日
アイデアよもやま話 No.4037 “三方良し”の画期的な”野菜シート”!

3月15日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で画期的な”野菜シート”について取り上げていたのでご紹介します。 

 

フレンチレストラン、ビストロ イル・ド・レ(東京都渋谷区)は、日本を代表する有名シェフ、坂井 宏行さんがプロデュースするお店です。

ここでちょっと変わった食材を使い始めています。

料理を彩るオレンジや黄金のシート、食べてみると美味しいと評判です。

口の中で溶けるという、このシートの正体はニンジンや大根です。

エグゼクティブシェフの工藤 敏之さんは次のようにおっしゃっています。

「健康志向だし、非常に好きな食材に出会いました。」

 

これは野菜で出来たシート、その名も「ベジート」です。

長崎県平戸市に“野菜シート”を製造する株式会社アイルの本社があります。

社員6人のベンチャー企業、社長の早田 圭介さん(52歳)は父から食品卸の会社を引き継ぎ、3年前に“野菜シート”の開発に成功しました。

早田さんには“野菜シート”を開発したある想いがありました。

ある農家の畑では、大きさやかたちが揃っていないとスーパーには買い取ってもらえないため、そのまま畑に捨て置いてしまうのだそうです。

早田さんは、こうした不揃いのニンジンを仕入れています。

農家にとっては、ニンジンだけでも1ヵ月に約2万円の収入になるそうです。

早田さんが不揃いのニンジンを引き取れる理由がありました。

工場でニンジンは全て熱湯でゆで、そしてミキサーでどろどろに、ペーストにするのでどんなかたちのニンジンでも大丈夫なのです。

これを厚さ0.1mmに伸ばして乾燥させるのですが、乾燥させる技術は独自技術のため撮影NGです。

待つこと15分、“野菜シート”が出来上がってきました。

保存料や着色料を一切使わないので野菜そのものの味がするそうです。

 

早田さんは捨てられていた野菜を活用することで、農家たちを救いたいと考えていました。

早田さんは次のようにおっしゃっています。

「農業は非常に収益率が悪い産業だと思いますので、そこが少しでも収益率がアップしていくと魅力的な産業になる可能性は十分あるので、(“野菜シート”は)その一助になると思います。」

 

もう一つ、この“野菜シート”を作った狙いがありました。

早田さんが訪ねたのは小さな子どものいる友人のお宅、実はこの家の子どもはニンジンが嫌いなのです。

こんな子どもたちにこそ“野菜シート”を食べてもらいたいと早田さんは思っていました。

試しに、手巻き寿司に“野菜シート”を巻いてみると、4歳の男の子から「美味しい」という声が返ってきました。

こちらのお宅の奥様は次のようにおっしゃっています。

「便利ですよね。」

「こういうもので野菜が取れるならですね。」

 

生ニンジンと“野菜シート”、同じ100gに含まれる栄養素を比べてみると以下の通りです。

       生ニンジン  ニンジンシート

β-カロテン 9100μg  4150μg

タンパク質    0.6g    6.7g

植物繊維     2.7g   43.5g 

 

ニンジンシートは、β-カロテンは半分になるものの、タンパク質や植物繊維はかなり多く摂取出来ます。

水分を抜くことで凝縮されるのだそうです。

 

2月下旬、宮崎県三股町、早田さんは更に農業を助けようと動いていました。

ベーカリー梅茂登のカット野菜を作る工場、こちらのほうれん草にも捨ててしまう部分があるといいます。

根元に近い茎の赤い部分やほんの少し枯れてしまった葉、更に黄緑色の新芽まで捨てなければならないといいます。

これらは栄養価は変わらないといいます。

こちらの工場の捨ててしまうほうれん草の茎や葉は1日に軽トラック2台分、これも全て買い取ることにしました。

ほうれん草を会社に持ち帰り、早速“野菜シート”の試作に挑戦しました。

初めて扱うほうれん草はバラバラになり、うまく剥(は)がせません。

ペーストを均等に伸ばせなかったため、破れ易くなっていたのです。

そこで、更に細かく繊維を切ることにすると、色の感じも良く、うまく剥がれるようになりました。

他にもトマトやカボチャ、更には梅干しまで9種類の“野菜シート”の開発に成功しました。

これを持って早田さんが向かったのは、流通大手のイトーヨーカドー(東京都千代田区)です。

大根とニンジンのシートを使った料理を用意していました。

イトーヨーカドー加工食品部のマーチャンダイザー、越智 敏行さんは試食の結果について次のようにおっしゃっています。

「野菜嫌いのお子さんでも十分にいけますよね。」

「色鮮やかになるので、お子さんがお弁当が楽しくなるような、高揚するようなワクワク感が出るような気がします。」

 

イトーヨーカドーでのテスト販売が決定、早田さんは今後も農家やお客が喜ぶ商品を作っていきたいと考えています。

早田さんは次のようにおっしゃっています。

「売り手良し、買い手良し、世間良しという“三方良し”の原理、これをどんどん進めていきたい。」

 

この“野菜シート”は日本の食卓を変えるかもしれません。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

今回ご紹介した“野菜シート”の素晴らしさについて、以下にまとめてみました。

(現状の問題点)

・大きさやかたちが揃っていない不揃いの野菜は農家の畑に捨て置かれる

・カット野菜を作る工場などでも野菜を捨ててしまう部分がある

(メリット)

・保存料や着色料を一切使わないので野菜そのものの味がする

・生野菜に比べて、栄養素であるタンパク質や植物繊維をより多く摂取出来る

・収益率の悪い農家やカット野菜を作る工場などの収益率アップにつながる

・レストランなどの新たな食材になる

・野菜の嫌いな子どもなどが抵抗なく野菜を食べられるようになる

・生の野菜に比べて保存期間が長くなる

・国内外を問わず、世界中の農家に”野菜シート”の技術を展開出来るので新たな雇用機会を増やす

・”野菜シート”の世界展開により、野菜資源の有効活用が図られ、その分省エネや地球環境問題の解決に貢献出来る

 

ということで、”野菜シート”はまさに“三方良し”なのです。

早田さんには是非国内展開、更には世界展開を目指して”野菜シート”の普及に取り組んでいただきたいと思います。


 
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