2018年06月01日
アイデアよもやま話 No.4031 電力の2019年問題!

2月28日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で電力の2019年問題について取り上げていたのでご紹介します。 

 

一般家庭で太陽光発電をして、余った電力を電力会社が高く買い取る制度が2019年に節目を迎えます。

この制度が始まったのは2009年のことでした。

そしてこの制度は10年間なので、始めからこの制度を利用していて、2019年に対象外となる世帯がおよそ37万世帯に上ります。

その後は電力を販売する企業を自ら探さなければならないとも言われています。

これが「2019年問題」なのです。

 

タイムリミットが迫って来る中、これを商機と捉えた企業が本格的に動き出しました。

2月28日から3月2日にかけて、世界最大級のエネルギー総合展、「スマートエネルギーWeek」が東京ビッグサイトで開催され、世界33ヵ国、1580社が参加しました。

次世代エネルギーが注目される中、風力発電設備や太陽光パネルなどの展示が多く見られました。

中には、太陽光パネルや風力発電設備を搭載した、自律型のエコハウスも展示されていました。

更に、バッテリーを搭載することで、外からの電力供給が無くても生活が可能だといいます。

ちなみに、この卵型のかたちをした建物を販売しているのは株式会社YBM JAPANです。

 

さて、今回の展示会で多くの企業が力を入れているのがバッテリーです。

その理由は「2019年問題」です。

2009年に始まった太陽光発電の余剰電力買取制度、FITですが、固定価格の買取期間は10年で、来年には契約切れの家庭も出始めます。

そこに目を付ける企業が余剰電力を蓄電するためのバッテリーの販売に力を入れているのです。

オムロンが2017年の夏から販売を始めたのが既にある太陽光発電システムに後付け出来るバッテリーです。

電気を売るのではなく、日中の発電で余った電力を充電し、夜間に自家消費します。

「2019年問題」の影響で、多くのユーザーから引き合いがあるといいます。

 

その「2019年問題」、一般の人はどのように考えているのでしょうか。

都内在住のTさんのお宅は4人家族です。

太陽光発電を導入する前の1ヵ月の電気代は2万円を超えていましたが、今年2月分はおよそ1万4000円でした。

昼間の電気はほとんどが自宅の太陽光発電を利用しています。

Tさん宅では、東京電力に余剰電力を48円(1kwh当たり)で売電していますが、今年2月分は6240円でした。

この48円は2009年から続いていますが、その期限が来年、2019年に終了してしまいます。

2019年以降の売電価格は決まっていませんが、10円ほどになるのではと言われています。

 

現在、Tさん宅では、家庭用の電気料金は24円(1kwh当たり)なので、48円(1kwh当たり)で売電した方が利益になります。

しかし、FIT制度が切れて、例えば売電価格が10円となった場合、売電するよりも自家消費した方が電気料金が安くなるので、バッテリーの購入を検討しています。

 

太陽光発電を取り巻く環境が急激に変化する中、企業は今後新たに設置する家庭向けの商品開発に力を注いでいます。

ハンファQセルズジャパン株式会社の東 洋一執行役員は次のようにおっしゃっています。

「太陽光発電の電力を高く買ってもらえなくなる時代がすぐそこまで来ています。」

「でも実は一番安いエネルギーになっていくのは太陽光だと思っています。」

 

「蓄電池(バッテリー)とセットにして上手に電気をためてコントロールしながら使ってく。」

「住宅用も大型発電システムも全部そういうふうになっていくと思います。」

 

ハンファQセルズジャパンは太陽光パネルのセルを従来の半分にすることで、電流の抵抗を減らし、高い発電量を実現しました。

このパネルとセットで販売したいのがバッテリーシステムです。

電力変換効率が96.5%と業界トップクラスのバッテリーシステムにより、太陽光から得られるエネルギーを最大限活用することが出来るのが特徴といいます。

 

新電力ベンチャー企業の株式会社Looopもバッテリーを売り込み、買い取り制度の期限切れのお客を取り込む狙いです。

Looopの蓄電池事業部の堤 教晁部長は次のようにおっしゃっています。

「こちらの蓄電池は業界初のAIを搭載した蓄電池になります。」

「ご家庭の電気の使用状況や電気代プランなどを家庭ごとにシミュレーションしまして最適な充放電を行います。」

 

実証実験では、AIを搭載したことで電気代を約10%削減出来たといいます。

「(更に、)我々は電気小売りもやっておりますので、当社の蓄電池を導入いただいたお客様には2〜3割、通常の電気代よりも削減する料金プラもご提案しております。」

 

「2019年問題」に向けて、企業の生き残り戦略が加速しています。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

太陽光など再生可能エネルギーによる発電量の余剰電力を通常の電力料金よりも高い金額で一定期間電力会社が買い取るという制度(FIT)は、割高の再生可能エネルギーによる発電装置を普及させるためには有効な手段の一つだと思います。

しかし、だからといって、FIT期間後は買い取り価格が10円程度というのは下げ過ぎで、せめて20円程度にならないかと思います。

 

なぜならば、余剰電力用のバッテリーの価格が4kwhの容量でも100万円を超える高額で、とても投資対効果の観点で割に合わないからです。

しかも、これだけの容量では到底余剰電力の受け皿としては不足です。

ですが、10kwh程度のバッテリー容量になると、300万円近くと更に高額になってしまいます。

このような状況では、バッテリーの購入を諦めて、せっかくの余剰電力が10円程度の安い価格で買い取られてしまいます。

 

ですから、関係省庁には、FIT期間後の買い取り価格をせめた20円程度に設定するか、あるいはバッテリー購入時の補助金制度などを設け、太陽光発電を設置してもトータルでマイナスにならないような枠組みを検討していただきたいと思います。

現状のままでは、再生可能エネルギーの普及のスピードが落ちてしまい、政府のエネルギー政策の目標を達成することもおぼつかなくなると思います。


 
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