2018年05月28日
アイデアよもやま話 No.4027 AIの活用事例 (5) その1 AIが宿泊施設の需要を予測して“適正価格”を決定!

これまでAI(人工知能)関連の動向について何度かお伝えしてきましたが、その第5弾として今回は4回にわたってご紹介します。

1回目は、2月27日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)を通してのAIによる宿泊施設の“適正価格”の決定についてです。 

 

番組でも何度か取り上げていたように、これまでタクシーなどでAI(人工知能)に乗客の需要を予測させる活用の仕方が広がっています。

そして、今度は更にAIが需要を予測して“適正価格”を決めるという動きも出始めています。

 

東京・台東区にあるゲストハウス、IKIDANE HOUSE 浅草旅籠では簡易的なドミトリー(相部屋を前提とした部屋)を16室、また外国人好みの和風の個室を20室揃えています。

この施設、実はAIを活用しています。

ネット上で管理している日々の料金表に提示された金額のほとんどをAIに任せて出しています。

予約状況の画面を見ると、赤や水色で塗られた数字が並びます。

これらは全てAIが導き出した“適正価格”だといいます。

更に、赤色はもう少し金額を上げる必要があることを示し、水色はもう少し下げた方が稼働率が上がるとAIが自動的に提示しているのです。

AIが予約の埋まるペースを計算し、早く埋まりそうな部屋は価格を上げ、予約が入りにくい部屋は価格を下げるという提案をするのです。

近隣のイベント状況や競合ホテルの予約状況なども分析してAIが最適な料金を設定することで、このゲストハウスの稼働率は常に80%を超えているといいます。

 

このAIのシステムを開発したのは、AIベンチャー、メトロエンジン株式会社の田中 亮介社長です。

田中社長は、AIを使うことで人が価格設定をする手間を省くだけではなく、収益も伸ばせると話します。

「今まで人の手で行っていたが故に、大きな需要を見逃してしまったりだとか、知らない間に予約が埋まっていたりだとか、そういった大きな機会損失が発生していたんですね。」

「客室単価設定を適切に行うことで、収益そのものの向上が望めるんじゃないかと。」

 

一方、宿泊料金が閑散期には下がる、繁忙期には上がることで知られるビジネスホテルチェーンのアパホテルですが、フロントの裏側では支配人が真剣な表情でパソコンに向かっています。

アパホテルでは、各店の支配人が11ヵ月先までの稼働率を予測し、1日ごとに宿泊料金を決めます。

こちらでは、シングルルームの上限を3万2400円とし、24段階に細かく分けて設定します。

アパホテルの首都圏にある26のホテルを統括する首都圏地区第一ブロック総括支配人、村田絋詞さんは次のようにおっしゃっています。

「大規模なコンサートであったりとか、海外の祝日であったりとか、今は受験シーズンとか桜のシーズンだったりとか、支配人ごとに異なるかもしれませんが、私の場合は毎日2〜3時間かかります。」

 

支配人の負担を減らそうと、アパホテルでは料金設定を任せられるAIの開発に向けた検討が始まっているといいます。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

そもそもホテルなどの宿泊業では、収益を最大化させるためには需要を予測して1日ごとの“適正価格”を決定することが求められます。

しかし、そのために近隣のイベント状況や海外の祝日、受験シーズン、あるいは競合ホテルの予約状況まで考慮して1日ごとに“適正価格”を決定する作業はかなりのハードワークになります。

そうした中、AIによる蓄積された過去の様々な観点からの分析データのフル活用で“適正価格”を決定することが出来ます。

 

しかし、なんでもかんでもAIに任せれば済むということではないのです。

どういうデータを収集してどのようなアルゴリズムで何を決めるのかを明確にし、それぞれのデータを実際に収集して分析することをAIに指示しなければ、AIを実際に活用することは出来ないのです。

そこで、AIのシステム開発が新たな業種として誕生しているのです。

そして、この新たな業種は今のところ無限の可能性を秘めていると思います。


 
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