2018年05月19日
プロジェクト管理と日常生活 No.541 『長時間労働対策の第一歩は“労働時間の視覚化”』

3月17日(土)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で長時間労働対策として 労働時間の視覚化について取り上げていたのでご紹介します。

 

長時間労働による過労死を防ぐため、厚生労働省は今国会に提出する方針の働き方改革関連法案で、企業が労働者の労働時間を客観的に把握するよう、初めて法律に盛り込む方針を固めました。

 

働き方改革関連法案では、裁量労働制を巡って厚生労働省の労働時間調査に誤りと見られるケースが見つかり、適用業務の拡大の削除が決まりましたが、与党から裁量労働制で働く人たちの健康確保の対策を図るべきだという意見が出されていました。

これを受けて、厚生労働省は長時間労働により労働者が健康を害することを防ぎ、医師との面談などの対策につなげるため、働き方改革関連法案で企業が労働者の労働時間を客観的に把握するよう、初めて法律に盛り込む方針を固めました。

厚生労働省は昨年ガイドラインを策定し、企業が労働時間を適正に把握する責務を明記しましたが、その後も適切な労務管理が行われていないケースも少なくないということで、今後は省令でパソコンの使用履歴といった、把握のための具体的な方法についても定めるということです。

対象となる労働者は、一般労働者、裁量労働制で働く人、それに法律上労働時間の制限がない管理職なども含む予定で、厚生労働省は与党内の調整を進めることにしています。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

まず、裁量労働制を巡って厚生労働省の労働時間調査に誤りがあったことがこの法案を国会で検討するうえでの大きな阻害要因となりました。

3月22日付け日本経済新聞のネットニュース(こちらを参照)によれば、厚生労働省の「2013年度労働時間等総合実態調査」で、裁量労働制で働く人の方が一般労働者より労働時間が短いとしていましたが、不適切なデータが相次ぎ発覚しました。

その結果、政府が今国会の提出をめざす働き方改革関連法案から、裁量労働制の関連部分を全面削除する事態になったのです。

 

プロジェクト管理に限らず、物事の検討を進める上で現状を把握することが出発点です。

現状を誤認すれば、その後の検討は誤った結果につながっていくのです。

しかも、常識的に考えればすぐにおかしいと思われるようなデータを厚生労働省が国会に提出したことは法案を通すための意図的なものだったと思われても仕方ありません。

 

さて、本題ですが、そもそも働き方改革の狙いは何でしょうか。

私は以下の2つと考えます。

・あらゆる働く人たちのワークライフバランス、および健康維持を促進すること

・あらゆる働く人たちがより生産性を上げることが出来るような労働環境を整備すること

 

そこで、今回のテーマである労働時間に絞ってみると、そもそも人はロボットや機械のように24時間、365日働き続けるようなことは出来ません。

また、最低限、食事や睡眠に費やす時間が必要です。

更に疲労の蓄積は精神的な病気や過労死につながる可能性を大きくします。

そして、働き方改革の狙いの一つであるワークライフバランスが確保出来なければ、豊かな暮らしを手に入れることは出来ないのです。

そこで、唯一の例外は趣味と仕事がたまたま完全に一致している人たちですが、それでも家族との団らんなどのコミュニケーションが不足すれば、家庭崩壊をもたらしかねません。

 

このように考えを進めていくと、自ずと長時間労働対策をどうすべきかが見えてきます。

労働時間把握の対象者は、政府が予定しているように、一般労働者、裁量労働制で働く人、それに法律上労働時間の制限がない管理職なども含むべきなのです。

労働者の保護というと、一般的に経営層は含まないで議論が進められがちですが、経営層においても労働時間をきちんと把握し、過労に至らないように管理されてこそ、心身ともに充実した状態でベストな判断が下せると期待出来るのです。

また、AIやロボットなどの技術革新のスピードが速いビジネス環境における企業のかじ取りを担う経営層の役割の重要性はこれまで以上に高まると予想されるので、経営層の健康維持は不可欠なのです。

そのためにも経営層の労働時間管理を手薄にすべきではないのです。

ですから、原則として全従業員の労働時間を視覚化して、正しく管理することは働き方改革を進めるうえでの第一歩なのです。


 
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