2月16日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)を通して、前回は経済産業省主導による次世代のイノベーターを生み出す取り組みについてご紹介しましたが、今回はその成果の一つとして、文字を打つだけで声を再生するアプリについてのご紹介です。
東芝のグループ企業、東芝デジタルソリューションズの金子 裕紀さんが開発しているのはスマホのアプリで、簡単に自分の声を登録出来て、使えるような世界を作ろうとしています。
自分の顔を加工して楽しむアプリは多く存在しますが、自分の声を登録すれば、文字をタイプした時に自分の声で読んでくれるというものです。
まず静かなところで自分の声を録音します。
読んだのは、「お待たせしました」や「ありがとうございます」など、わずか10の文章だけです。
その一つ一つの声がクラウド上で分析されます。
「コエを育てる」をタップするとたった15分で完了です。
そして、文章を打ち込み、「読み上げ」をタップすると、“何となく自分の声”というレベルで文章を読んでくれます。
そこで、更に40の文章を追加で録音し、再度「読み上げ」をタップすると、かなり本人の声に近づいています。
更に、100や200の文章を追加で録音すると、もっと本人の声に似てくるといいます。
更にこのアプリ、喜びや怒りや悲しみなど、感情設定も出来ます。
このアプリの将来性について、金子さんは次のようにおっしゃっています。
「これからAIとかロボットが普及していく中で、音声のインターフェースもどんどん普及していきますので、自分の好きな声を選びたいとか、メッセージが届いた時に本人の声で読んでくれた方が嬉しいよねっていうのがあると思うので。」
「怪我とか病気で声を失っている方も、ここ(スマホ)に先に声を登録しておけば、テキストを押すだけで、自分の声でコミュニケーションが出来るみたいな・・・」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
番組でも指摘されているように、今回ご紹介した文字を打つだけで声を再生するアプリは怪我とか病気で声を失っている方にとってとても有効だと思います。
他にも、芸能人などの有名人の声を使ったコマーシャルなども、本人が自分の声で直接録音しなくても、いかようにも本人の声を活用することが出来ます。
ですから、身近なところでは自分の好きな芸能人などの声で自分に言って欲しい言葉を言ってもらうことも出来るようになります。
あるいは、声による他人へのなりすましも容易に出来てしまいます。
しかし、他人の声のなりすましは一歩間違えると犯罪に使われてしまうリスクがあります。
ですから、こうした新しいアプリの普及には、ケースに応じて制度の見直しやリスク対応が求められます。
今回ご紹介したアプリには、まさにこの両者が求められます。
1つ目は、前回も触れていた音素(声)の権利化です。
写真は権利化されていますが、音素については権利化されていません。
しかし、このアプリの登場により、音素の権利化が必須となります。
そうでないと、芸能人などの声が勝手にこのアプリで使われてしまうことになります。
2つ目は、このアプリを活用した犯罪のリスク対応策です。
例えば、先ほども触れたように、他人の声が勝手にアプリで使われてしまいます。
あるいは、他人の声を真似たオレオレ詐欺などの犯罪に使われるケースも出てきます。
ということで、技術革新の速いスピードの時代には、各企業の開発スピードに応じて、関係省庁による制度や法律面などでの素早いサポートが求められるのです。