2018年05月22日
アイデアよもやま話 No.4022 始動する次世代のイノベーターを生み出す取り組み!

2月16日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で始動する次世代のイノベーターを生み出す取り組みについて取り上げていたのでご紹介します。

 

今までにない革新的なものを生み出す人をイノベーターと呼びますが、日本はこのイノベーションの火種はあるけれども火を起こすところまでには至っていないということが言われます。

そこで、日本政府は世界に通じる次世代のイノベーターを生み出すためのプロジェクトを進めています。

なぜ日本にはイノベーターが育ってこなかったのでしょうか。

 

経済産業省が主催する「始動Next Innovator 2017」成果報告会が都内で2月16日に開催されました。

200を超える応募者の中から選ばれた20人がシリコンバレーで2週間のプログラムを体験し、SNSなどのデータからAIで人材を選び出し、企業とマッチングさせるベンチャーや、救急病院でより多くの患者を受け入れられるよう、AIでオペレーションを効率化するサービスを提供しているベンチャーが参加しました。

主催した経済産業省にはある危機感がありました。

経済産業省の福本 拓也新規産業室長は次のようにおっしゃっています。

「どんどん新しい事業をつくっていかないと、もう滅びるんじゃないかなと。」

「とにかくイノベーターを日本から生み出さないといけない。」

 

実際にシリコンバレーに行った参加者は何を感じたのでしょうか。

ベンチャー企業、ドクターズプライムの田 真茂代表は次のようにおっしゃっています。

「どんどん失敗をしていってサービスを良くしていこうというような文化、失敗を推奨する文化がある。」

「失敗を許容する組織の体制も社員にとって重要かなと思います。」

 

このプロジェクトに参加したのはベンチャー企業だけではありません。

東芝のグループ企業、東芝デジタルソリューションズの金子 裕紀さんが開発しているのはスマホのアプリで、簡単に自分の声を登録出来て、使えるような世界を作ろうとしています。(このアプリの具体的な内容については次回ご紹介します。)

 

世界初のアプリを目指す金子さん、プロジェクトに参加して感じたことについて、次のようにおっしゃっています。

「例えば決裁者が10人いて、10人全員がゴーとならないと進まないとなると、新しいものが何も出来ないと思っていて、10人中3人くらいが面白いねというのが本当はちょうどいいはずなんですけど、それだと中々大企業だと突破出来ないので、その辺りをこれから文化として変えていかないといけない。」

 

この取材を担当した番組サブキャスターの大浜 平太郎さんは次のようにおっしゃっています。

「確かに大企業はこういったイノベーションの分野は苦手だって言われてるんですけど、ただ話を聞いてみると役割がありますよと。」

「例えば、先ほどの音声のビジネスでいうと、当然悪用されないためのセキュリティ対策も重要になってくるんですよね。」

「そういったものをバッチリつくるのは大企業が得意なんだと。」

「また、音声の権利、勝手に使われると怖いですよね。」

「で、声の権利はあるんだけども、これって厳密にいうと声じゃなくて、声の元の音素と言うらしいんですけど、その音素をどうやって権利化するかということも考えなくちゃいけなくて、そういうの大企業が得意なんだそうですよ。」

「よく言われますけど、大企業とベンチャー企業の補完関係をどうやってつくっていくのかが大事なんでしょうね。」

 

番組コメンテーターで早稲田大学ビジネススクールの入山 章栄准教授は次のようにおっしゃっています。

「(こうした取り組みがあれば、日本でもイノベーションが増えていくのではという問いに対して、)私は非常に期待しています。」

「従来の、欧米で言われているイノベーションは、大企業の中にはイノベーションの種はないんだと、だから外のベンチャーに出資をして彼らとコラボレーションして彼らの知を取っていくというオープンイノベーションの考え方なんですね。」

「それに対して、経済産業省と「WiL(ウィル)」(国内最大規模のベンチャー投資ファンド)が主導しているプログラムの考え方は、イノベーションの種は日本の場合はまだ大企業の中にあるんだ。」

「ただまだそれが息苦しい大企業の中だと、ちょっと言い方が悪いですけど、ちょっと腐ってきていると。」

「ですから、大企業の人材を外に出して、シリコンバレーのようなところの空気を吸わせて、イノベーティブになってもらって、大企業に還流してもらうという考え方なんですね。」

「ですから、非常に日本型のイノベーションだと考えられますので、私は非常に期待しています。」

「(出先で当然いろんな知り合いも増えて帰って来るのではという問いに対して、)そうですね。」

「(また戻って来た時に再び腐らないようにすることも大切ではという問いに対して、)そうですね、その辺りの仕掛けも期待したいところですね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

これまで何度となく繰り返しお伝えしてきたように、現在はインターネットをベースとした、AIやロボット、IoTなどの技術を活用したイノベーション、すなわち新しい産業革新の時代の真っただ中に私たちは生きていると思います。

そして、個々の技術革新は5年、10年というようなサイクルでとても速いスピードで進んでいます。

 

こうした時代においては、ゆったりとしたスピードの従来の技術革新時代とは明らかに異なる研究開発の進め方が求められます。

要するに、従来の日本企業が大成功を収めて来た、時間をかけて高機能・高品質の製品を作り上げることから、機能や品質に多少難があっても短期間で製品を市場に投入するという進め方です。

同時に、そもそもイノベーションには試行錯誤や失敗がつきものなのですから、こうした状況に対応した組織や体制へのシフトです。

今回ご紹介した経済産業省が主催する「始動Next Innovator 2017」プロジェクトは、まさにこうした政府の危機感から生まれたものと言えます。

 

そして、こうしたイノベーションへの企業としての対応ですが、番組でも指摘されていましたが、まとめると次のようなことが言えると思います。

・大企業の研究開発担当者をシリコンバレーのように外部の空気に触れさせて、社内にイノベーターとしての人材を育成すること

・大企業とベンチャー企業が協業して研究開発を進めること

 

そして、一般的な傾向として、日本では前者の方法が、欧米では後者の方法が取られているといいますが、こうした傾向に囚われずに臨機応変に必要に応じて、国内外を問わず、大企業とベンチャー企業の協業による研究開発が進められるべきだと思います。

実際に、国内外を問わず、技術革新の進歩に応じてこうした取り組みをしている企業が多く見受けられます。

 

こうして見てくると、日本もシリコンバレーなどに負けないように、最先端技術開発を進めているより多くのベンチャー企業が日本で活動してみたいと思わせるような環境づくりを政府が積極的に進めることが国内企業に刺激を与え、協業の機会を提供するなどのメリットをもたらすのではないかと思えます。


 
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