2018年05月03日
アイデアよもやま話 No.4006 そもそも憲法とは何なのか?

今日は憲法記念日ですが、ふだん私も含めて一般の方々は憲法についてあまり深く考えることはないと思います。

そうした中、1月27日(土)放送の「報道特集」(TBSテレビ)で憲法改正の是非について取り上げていました。

今年の国会で最大のテーマは憲法改正ですが、その焦点は憲法9条です。

なぜ自衛隊を明記するのか、明記すると何が変わるのかが問われていますが、今回はそもそも憲法とは何なのか、および憲法9条改正についての専門家の見解に焦点を当ててご紹介します。

 

憲法学者で首都大学東京の木村 草太教授は次のようにおっしゃっています。

「憲法は過去に国家権力がやってきた失敗を繰り返さないように、それを禁じるルールを作っておこうということで作られる法です。」

「例えば、戦争しないとか、人権侵害をしない、権力の独裁を許さない、といった過去の失敗を踏まえてのルール作りをしたもので、国の理想を書いたものではなくて、過去の失敗を繰り返さないように国家権力を制限するためのものというふうに説明するわけですね。」

 

なお、憲法9条に自衛隊を明記する案について、木村教授は集団的自衛権の行使容認と安保法制の成立(2015年9月)を踏まえた議論の必要性を指摘しています。

「まず自衛隊を置いてよいと書くだけでは何を自衛隊がやっていいのか分かりませんから、まず個別的自衛権、日本が武力攻撃を受けた時に武力行使が出来るということをきちんと作用として自衛隊が出来る業務の範囲を書かなくちゃいけないですね。」

「また、日本が武力攻撃を受けた時だけでなく、他の国へ武力攻撃があった場合も、それが存立危機事態にあれば集団的自衛権を行使して武力行使が出来るということも書き込んでおかないと、例えば個別的自衛権・集団的自衛権は違憲かという議論は残ってしまいますから、まず任務の範囲を書かなくてはいけないことになります。」

「「自衛隊を明記するだけですよ」と言われれば、「そうか」というふうに納得される国民の方もかなり多いと思いますけども、しかし中身には必ず集団的自衛権が入って来るということなので、これは非常に言い方をごまかしているというふうに思います。」

「ですから、誠実に「集団的自衛権の明記をしたいんです」と言わないと誠実ではない。」

 

木村教授は、現在の改憲論議には政策目標や根拠となる出来事がないと話します。

「憲法改正というのは、歴史的な出来事があって、それを受けてというパターンで、例えば日本の場合の憲法9条というのは誰もが第二次世界大戦を思い浮かべます。」

「あるいは、アメリカ合衆国憲法の第13条、奴隷制の禁止条項を見れば、誰もが南北戦争と奴隷制の歴史を思い浮かべます。」

「私たちの世代が、もしこのまま憲法改正された時に、「なんで(憲法改正)したの?」と言われれば、オリンピックがあったからとしか答えられない、非常に不幸な憲法改正になってしまうわけですね。」

「なので、憲法改正というのは大きな歴史的出来事だったり、きちんとした政策目標があって、後の世代にきちんと説明出来るものでないと非常に恥ずかしいものになるということです。」

 

なお、木村教授にインタビューしたジャーナリストの金平 茂紀さんは、次のように補足しています。

「そもそも9条に自衛隊を明記する理由については、安倍総理は自衛隊違憲論を無くすためだという趣旨のことを言ってましたけども、木村さんは「これまでずっと自衛隊は合憲だと言ってきた自民党のトップが、自衛隊は違憲かもしれない、少なくとも憲法を改正してまでそれを説得しなきゃいけないと言うぐらいに疑いがあるということを公式に認めてしまったことになるわけで、これは極めて不適切じゃないかと指摘しましたですね。」

「それからもう1点、自衛隊が軍隊じゃなくて行政組織の一つだということをこれまで政府は説明してきたわけですけども、ならば自衛隊については9条に書き込むのではなくて、もし書き込むとしても行政の機能について記している72条とか73条の行政の章に位置付けるべきではないのかとおっしゃっていました。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

そもそも憲法とは何かについて、私はこの番組を見るまで大きな誤解をしていました。

憲法とは、国の理想を掲げ、その基本原理を記述したものと誤解していたのです。

しかし、少なくとも民主主義国家においては、憲法の主体はあくまでも国民であり、非常に現実的かつ実践的な内容なのです。

国民の立場からみて、少しでも国家権力が誤った方向にいかないようなリスク対応策として、あるいは不幸にして起きてしまった失敗を二度と繰り返さないための国家レベルの再発防止策として憲法は位置付けられているということなのです。

ですから、憲法は国民にとって、本来国民として自らの身を守るための根源的な手段であるとも言えるのです。

 

また、憲法は国際情勢や社会情勢の大きな流れの変化の中で必要に応じて見直されるべきものであり、従って永久不変ではないのです。

しかも、あらゆる観点から漏れや誤解を生じさせることのないように、改正にあたっては細心の注意が求められるのです。

 

こうした中で、現在憲法9条の改正議論が進められていますが、木村教授の指摘されているように、改正の可否はともかく、平和国家を大前提に政策目標を明確にし、かつ矛盾のないような分かり易い内容での改正に向けた議論を進めていただきたいと思います。


 
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