2018年05月09日
アイデアよもやま話 No.4011 3000円で1ヵ月飲み放題の居酒屋!

2月5日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で3000円で1ヵ月飲み放題の居酒屋について取り上げていたのでご紹介します。 

 

月に一定の金額を支払えば、あるサービスが1ヵ月使い放題となる、といった定額制のサービスが広がっています。

2月5日、ある居酒屋が業界初の1ヵ月3000円で飲み放題の定額制サービスを始めました。

東京・秋葉原にある居酒屋、柚柚(YUYU)で午後5時から始まった新たなサービス、ビールから焼酎、カクテルまで250種類のアルコールが1ヵ月飲み放題、30日で3000円という安さにお客の反響も上々のようです。

このサービスを運用するのは、全国347店舗の飲食店を展開するアンドモアで、そのうち30店舗の居酒屋で2月5日から「定額制飲み放題」を始めました。

 

ではなぜ、このようなサービスを始めたのでしょうか。

柚柚の秋葉原駅前店店長の村岡 雄介さんは次のようにおっしゃっています。

「もっと気軽に足を運んでいただいて、リピーターとして次にまたご来店いただくという・・・」

 

ファミリーレストランやファーストフードなど外食産業全体の売り上げは3年連続で前年を上回る中、居酒屋だけは前年を下回っている現状があるのです。

ちなみに、2017年外食産業市場動向調査の結果は以下の通りです。

全体売上高 :103.1%(前年比)

居酒屋売上高: 98.1%(前年比)

 

その危機的状況を打ち破ろうとして始めた今回の企画ですが、はたして利益は出るのでしょうか。

導入するにあたって、昨年10月に実証実験を行うと驚きの結果でした。

アンドモアの森本 重久執行役員は次のようにおっしゃっています。

「実際、飲み放題というのが無料になっているので、お客様としては普段頼めないもの、中々出ずらい高単価な商品も出るようになってきたので、・・・」

「飲み放題を引いたとしても、客単価としては変わらないという実績が取れたので、これはいけると。」

 

例えば、一品目は299円の枝豆から699円のマグロとアボカドのユッケに、二品目は499円のから揚げから1029円の厚切り牛タンに、メインの鍋も1人前1199円の鶏すき鍋から1599円の本ズワイガニの海鮮寄せ鍋と、お客の注文は単価の高い料理に変化、客単価も60円のマイナスにしかならないという結果が出ました。

 

飲み代が無料になることで、お得感を感じるお客は自然と料理を高い方へとシフトするといいます。

こうした状況について、森本執行役員は次のようにおっしゃっています。

「こういうきっかけがあることで、「景気は気から」というところにつなげたいなと思っているんですが、そのお客様が「もっと飲みにケーションしようよ」とか、飲みに行って「おいしいものを食べよう」というようなところで、居酒屋業界全体が活性化されればいいなとは思っております。」

 

この居酒屋の狙いについて、番組コメンテーターで野村不動産のチーフ・マーケット・エコノミストの木下 智夫さんは次のようにおっしゃっています。

「顧客データをこのプランで集めて活用していくというのも一つの方向だと思うんですが、やはり消費を刺激するというところが大きいと思いますね。」

「このところ日本の消費者はかなり給料が上がって、全体としては購買力が付いている状態だと思います。」

「で、そういう状況ですから消費者の意欲をうまく突いてあげれば、それなりに消費は出てくるはずで、そうした試みとして注目出来るんじゃないかなと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

今回ご紹介した、3000円で1ヵ月飲み放題の居酒屋のサービスは、居酒屋でお酒を飲むことを好む人たちにとってはお得感のあるとても魅力的なサービスに思えます。

しかも、飲み代が無料になることで、お得感を感じるお客は自然と料理を高い方へとシフトするというのですから、まさにお客にとっても居酒屋にとってもメリットがあるのです。

 

私たち一般消費者は、モノを購入する際に50%引きなどの宣伝文句につられて買い物をし、結果として普段よりも多くの出費をしてしまうことがありますが、こうした商売の背景には、今回ご紹介した居酒屋と同様の計算が働いているわけです。

 

ですから、いかにお客にお得感を感じさせながら、継続的に商売として続けていけるかというのが永遠のビジネスの課題だとあらためて思います。

しかも、今回ご紹介したような商売のアイデアは知的財産として保護されるようなことはないので、すぐに他店に真似されてしまう可能性があります。

ですから、その究極のかたちは、価格競争に振り回されないような独創的で魅力に溢れた商品やサービス、すなわちブランドの確立だと思うのです。

このような究極のかたちこそ継続的な“千客万来”につながるのです。


 
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