2018年03月26日
アイデアよもやま話 No.3973 ソニー復活の背景!

昨年12月7日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でソニー復活の背景について取り上げていたのでご紹介します。 

 

昨年12月7日、ソニーが発表したのが腕時計です。

時計部分は普通ですが、ポイントはバンドです。

バッテリーやセンサーなど、スマート機能を全て内蔵しました。

スマホと連動し、電話やメールの着信もバンドのディスプレイに表示されます。

また、歩数計の表示や電子マネーの支払いなども可能です。

従来の腕時計とスマートウォッチを合体させたこれまでにない製品を開発したのはソニー 新規事業創出部wena事業準備室 統括課長の對馬 哲平さんです。

對馬さんは、新入社員時代にアイデアをプレゼンし、開発チームのリーダーになり、4年前の2014年に初代モデルを発表し、今回は2世代目となります。

對馬さんは次のようにおっしゃっています。

「ソニーからいろいろ新しいものが生まれて来ているんですが、その中ですごく大きくなったものとか何十年も残っているものは結構少ないと思うんで、そういうふうな柱となるビジネスをつくれたらすごくうれしいと思っています。」

 

新入社員でもいきなり開発チームのリーダーになれる、そんな仕組みをソニーは4年前に始めました。

新規事業創出プログラム、通称SAPで、社員からこれまでにない製品のアイデアを広く募集し、オーディションに通れば製品化を任されます。

對馬さんは次のようにおっしゃっています。

「雰囲気としては本当にベンチャーに限りなく近いと思います。」

 

ソニー本社の1階にあるクリエイティブラウンジには3Dプリンターやレーザーカッターなどが設置されていて、SAPのメンバーは自由に試作品などを作ることが出来ます。

大企業ならではの強みもあります。

對馬さんのプロジェクトには社内から品質保証や調達、法務など、複数人のプロが集まりました。

更に、大企業ならではのメリットについて對馬さんは次のようにおっしゃっています。

「腕時計部分はシチズンさんに作ってもらっているんですけど、やっぱり門をたたく時も「ソニーです」と言うとある程度信用していただいたりとか、そういうのがやり易かったですね。」

「そこはベンチャーとは違うところだと思います。」

 

そして、昨年12月7日の夕方、SAPの別のチームが新商品の開発会議を開いていました。

テーマはボタンを押すと柄が変わる時計シリーズ「ソニー FES Watch U」(税別4万6000円〜)の新商品についてです。

SAPではアイデアの段階から社外の人を入れて開発を進めます。

この日も3人のバイヤーや8人の一般ユーザーという11人の社外メンバーが参加していました。

 

SAPを通じてこれまで13の新製品が生まれました。

しかし、その裏でオーディションに受かっても製品化されるのはわずか1%というデータもあります。

新しいものを生み出すのは中々大変なのも事実です。

ソニー新規事業創出部 FE事業室の杉上 雄紀統括課長は次のようにおっしゃっています。

「モノを大量につくるのは責任を伴いますし、真剣にビジネスとして立ち上げるためにやっているのでいろんなハードルはあると思いますね。」

 

なお、對馬さんによると、SAPはベンチャー企業と大企業のいいとこ取りをしたような組織で、入社4年目の同期もいれば、一つの部品を何十年も作ってきたベテランの方にも自由に意見を求められる環境にあるといいます。

最近のソニーについて、番組コメンテーターでクレディ・スイス証券チーフ・マーケット・ストラテジストの市川眞一さんは次のようにおっしゃっています。

「SAPはすごく面白いなと思いましたし、ソニーは業績がV字回復ですよね。」

「ですからアナリスト的に言えば、今非の打ちどころがない、マーケットからの評価も高いんだと思いますね。」

「ただ、やっぱり我々の世代のように昔のソニーを知る、ウォークマンが出てきた時を知ってる人間にとってみると、ソニーのブランドバリューは世の中を変える画期的な何かを目指してきたという、そこにあると思うんですね。」

「ただソニーのV字回復の背景っていうのは、一つは経営改革をしっかりやったことと、もう一つは半導体部門、画像センサー部門ですから、そういう意味ではソニーという会社が変わってきたのか、それともこれからSAPなどを通じて新しい世の中を変える何かを打ち出してくるのか、ここが非常に会社の大きな分岐点じゃないかという気がしますね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

そもそもどんな組織においても、何かを開発するうえで、ヒト、モノ、カネを最大限に活用してこそ、最も効果的、かつ効率的に開発を進めることが出来ます。

ところが、一般的に大企業、ベンチャーには次のような強み、弱みがあります。

(大企業の強み)

・ヒト、モノ、カネの獲得のし易さ

・ネームバリューによる他社との協業のし易さ

(大企業の弱み)

・大組織ゆえの開発スピードの遅さ

 

(ベンチャーの強み)

・年齢に関係なく、アイデアが尊重され、開発チームのリーダーにもなれる

・開発スピードの速さ

(ベンチャーの弱み)

・ヒト、モノ、カネ不足

 

こうした観点からすると、今回ご紹介した開発におけるソニーの新規事業創出プログラム、通称SAPは、對馬さんもおっしゃっているように、ベンチャー企業と大企業のいいとこ取りをしたような組織だと思います。

こうした取り組みがソニーのV字回復の一つの柱になっていることは間違いないと思います。

 

日本の全ての企業が大企業、ベンチャーの区別なく、最適な組み合わせのもとに協業を推進していけば、日本の産業は活気にあふれた産業界へと生まれ変わることが出来ると思うのです。

更に、AIやロボットの活用も推進すれば、少子高齢化による労働力不足問題の解決にもつながるのです。

ちなみに、AIやロボットは人の指示により24時間365日休みなく働き続けることが出来るということは以前から言われてきましたが、最近気づいたことがあります。

人はその日の気分や他のメンバーとの相性、あるいは組織内派閥など諸々の理由により作業の生産性やチーム力が左右されますが、AIやロボットは純粋に合理的に作業を進めるので、こうした面でも人に比べて生産性が高いと見込まれるのです。


 
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