2018年03月10日
プロジェクト管理と日常生活 No.531 『世界のビジネス界で影響を増す地球温暖化対策 その2 国際的な取り組み!』

これまで何度となく地球温暖化問題についてお伝えしてきましたが、その最新状況について2回にわたってご紹介します。

2回目は国際的な取り組みについてです。

 

昨年11月4日(土)付け読売新聞の朝刊記事でパリ協定の経済への影響について取り上げていましたが、地球温暖化対策を進めるうえでの国際的な枠組みに焦点を当ててご紹介します。

 

まず、京都大学の諸富 徹教授のインタビュー記事からです。

諸富教授は、CO2排出量を抑えても経済成長は可能であると唱えています。

「炭素生産性」とは、CO2を1トン排出するのに対して、どのくらい国内総生産(GDP)を作り出せるのかを見る指標です。

この数字が大きいほど生産性が高いと判断するのです。

こうした“見える化”によってCO2排出量の経年変化、および地球温暖化対策における他国との相対的な比較が出来るのです。

 

ちなみに、主要国の数字を折れ線グラフでみると、日本は1990年代前半までは先進国中、スイスに次ぐ世界最高水準でしたが、その後他国に抜かれ、ドイツ、最近では英仏に大きく差を開けられています。

 

欧州各国は、北欧が先鞭をつけて、CO2排出量を減らすために炭素税を導入し、政策的に再生可能エネルギーの普及を促進しました。

その結果、CO2排出量が頭打ちになる一方で、GDPは伸びる現象が8年ほど前から明確に見え始めました。

データから分かったことは、従来、温暖化対策を行うと経済の競争力が失われると言われてきましたが、そうではなかったことです。

CO2排出量を抑える政策の設計さえうまく行えれば、むしろ経済にプラスに働くのです。

ですから、日本国内においても、この認識を産業界、企業、働く人たちで共有し、どのような政策が必要かの議論を進めるべきだとしています。

 

次に、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の高橋 則広理事長のインタビュー記事からです。

GPIFは2015年、国連が提唱する責任投資原則に著名しました。

気候変動に代表される環境問題、女性の社会進出や人権のような社会問題、法令順守に代表される企業統治への取り組みを重視した投資を行うもので、3つの課題の英語頭文字から「ESG(Environment Social Governannce)投資」と呼ばれます。

2016年4月現在、世界全体で1700以上の投資家、運用機関などが著名しており、運用資金の総額は68兆ドルに達しています。

 

2008年のリーマンショックを機に、身の丈以上の投資で破たんを招いた資本主義のあり方が根本から問われる中でESG投資は拡大しました。

途上国を含む全ての国が参加するパリ協定は、ESG投資の重要な柱である企業の環境配慮を後押ししてくれる強力な援軍になりました。

2017年6月にアメリカのトランプ大統領がパリ協定離脱を表明した後もESG投資への関心は拡大していますが、その背景にはESGへの配慮は企業活動の規制ではなく、むしろビジネスの機会と考える企業が増えている事情があります。

GPIFが現在、国民から預かっている運用資金の総額は157兆円です。

この巨額の資金を頻繁に売り買いすることは難しいため、運用機関を通じて国内外の企業に幅広く、長期間投資し続ける仕組みになっています。

 

ESGへの対応が不十分な企業は、深刻な環境汚染を引き起こしたり、企業不祥事を起こしたりすることで、大きな損失を招く可能性が高くなります。

企業がESGへの配慮を強め、健全な経営を続ければ、年金の運用も安定し、結果として年金を受け取る国民の利益にもつながります。

ESG投資は、長期的に日本経済を下支えする大きな力になると思います。

 

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

 

現在、地球温暖化は人類の抱える最大級の問題の一つといえます。

そうした中、CO2排出量を抑える政策の設計さえうまく行えれば、むしろ経済にプラスに働くことを証明してくれた北欧諸国の成果は今後の世界的な地球温暖化対策の取り組みにとってとてもプラスに働くと期待出来ます。

 

同様に、気候変動に代表される環境問題、女性の社会進出や人権のような社会問題、法令順守に代表される企業統治への取り組みを重視した投資を行うESG投資は、企業の健全な運営を支援し、その結果として年金の安定的な運用、および年金を受け取る国民の利益にもつながるといいます。

 

ということで、地球温暖化問題は国際的に各国の政府による制度設計、および投資機関や投資家の投資方針、および企業経営者や私たち消費者の地球温暖化問題に対する強い危機感によって解決出来ることが見えてきました。


こうした見方はプロジェクト管理における課題や問題、およびリスクといった個々の管理をするうえにおいても基本的な考え方としてとても大切だと思います。
個々の管理において、組織、あるいは誰がどのように関係するのか、そしてそれぞれは何が出来るのかといったことを詰めていくことによって、より良い対策を検討することが出来るようになるのです。

 
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