2018年03月09日
アイデアよもやま話 No.3959 人間の脳とAIがつながったら・・・ その5 進化の目的の一つは「超越」!?

昨年12月29日(金)放送の「人間てナンだ? 超AI入門 特別編」(NHK総合テレビ)で人間の脳とAI(人工知能)がつながったらという衝撃的な内容について取り上げていたので5回にわたってご紹介します。

5回目は進化の目的の一つは「超越」であるという考え方についてです。 

 

なお、番組の出演者は、東京大学大学院 特任准教授で進行役の松尾 豊さん、サイエンスライターでインタビューアーの吉成 真由美さん、そしてインタビューを受けるのはシンギュラリティという言葉の生みの親で発明家であり世界のAI研究の最前線を走る未来学者、レイ・カーツワイルさん、世界的な言語哲学者、ノーム・チョムスキーさん、そして理論物理学者、リーマン・ダイソンでした。

 

世界的な言語哲学者のノーム・チョムスキーさんは次のようにおっしゃっています。

「(2016年)11月8日に世界気象機関が気候変動について悲惨な未来予測を発表した。」

「あれは非常に重要なレポートだった。」

「だが驚くべきことに7日に会議が始まり、8日にレポートが出て、なんと翌日の9日に会議は停止した。」

「会議における全てを崩壊させようとしたのは、世界一強大で自由世界のリーダーたる国(アメリカ)だった。」

「メディアはほとんど報道しなかった、信じられない。」

「これは過去20万年における人類最大の危機に違いない。」

「我々は地質学者が言うところの新しい時代区分にいる。」

「「人新世」、すなわち人類が地球環境に大きな影響を及ぼす時代だ。」

「科学者たちが同意するのは、第二次世界大戦後を「人新世」とすることだ。」

「それは核の時代でもあるね。」

「人類が地球を滅ぼす力を備えた時代だ。」

「これは自然淘汰の結果などではなく、人類の選択の結果だ。」

 

また世界的な未来学者、レイ・カーツワイルさんは次のようにおっしゃっています。

「19世紀のテクノロジーに固執してはなりません。」

「例えば化石燃料などはシェールガスなど、残量は十分ありますが、環境に良くない。」

「しかし再生可能エネルギー資源にはほとんど限界がない。」

「指数関数的に増加している。」

「我々も何年か前から研究しているが、ナノテクノロジーを太陽光発電に導入することを推進してきた。」

「それによってコストは一挙に下がる。」

「太陽光発電で供給されるエネルギーは2年ごとに倍になるだろう。」

「20年以内に人間が必要とするエネルギーの全てを太陽光で賄えるようになるだろう。」

「他にも風力や地熱を利用すれば、必要なエネルギーの何千倍ものエネルギーを供給出来る。」

「テクノロジーの進化が無尽蔵のエネルギーをもたらすわけだ。」

 

人間は重力の壁も突破して、無限のエネルギーを手に入れてその未来は無限大でしょうか。

これについて、レイ・カーツワイルさんは次のようにおっしゃっています。

「進化には目的があると思う。」

「それは「超越」することだ。」

「情報の海から「超越」を生み出すのだ。」

「例えば音は「超越」して音楽にすることが出来るよね。」

「「超越」は進化の目的の一部に違いない。」

「我々は宇宙の情報を読み解くことが出来る。」

「情報をあやつることが進化にとって必須条件だね。」

「(人間が宇宙の中心にいて、宇宙の進化に影響するのは傲慢ではないかという問いに対して、)人類は地球規模で環境に作用する能力を手に入れつつある。」

「自分たちが作り出したテクノロジーで自滅する可能性も確かにある。」

「全人類を滅亡させる恐れがある核兵器さえ作り出してしまった。」

「でも我々は他の生物が出来ないことを出来る。」

「私は人類は生き残れると楽観的に見ている。」

「太陽系、銀河系・・・と最終的には宇宙全体に作用して宇宙の進化を方向付けるのがゴールだ。」

「それは「傲慢」ではなく事実を観察して言っているのだ。」

「進化の過程でもはや避けては通れないことだ。」

「「シンギュラリティ」が究極的に意味するのは自らを改良していけるほど知能の高いテクノロジーを生み出すこと、そしてAIが自己改良し続ける、これが「シンギュラリティ」だ。」

 

「(人生の意味は何だと考えているのかという番組最後の問いに対して、)自己増殖を繰り返し、進化に向かうのが生命だと思う。」

「人生の意味はあくまで「超越」だ。」

「新たな情報の構築物を作り続けることだ。」

「ヒトは自然の創造物だが、それがテクノロジーを生み出し、更に音楽、芸術、文学、科学・・・とそれらを生み出すことは新たな「超越」を行うことだ。」

「これが人生の目的だと思う。」

 

世界的な理論物理学者のフリーマン・ダイソンさんは次のようにおっしゃっています。

「確かなのは、この世に心や精神が存在するということです。」

「でもそれらがどのように生まれているかは分からない。」

「これは完全なるミステリーです。」

 

宇宙はなぜ存在するのか、人類の行き着くところを誰も知りません。

 

番組の最後に、東京大学大学院特任准教授の松尾 豊さんは次のようにおっしゃっています。

「レイ・カーツワイルさんの語る人類の未来、AIと融合し、そのテクノロジーを含んで宇宙全体に広がっていくという新しい未来の像、私はかなり信ぴょう性があるんじゃないかと思っています。」

「こういった未来がいつ来るのか、これは直近のAIのテクノロジーの進展と混同してはいけないと思っています。」

「おそらく100年とか、もっと数百年先の話かもしれませんけれども、私はこういう未来が来るのを大変楽しみだと思っています。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

まずノーム・チョムスキーさんのおっしゃるように、人類は地球環境に大きな影響を及ぼす存在になってしまいました。

更に、大量の核兵器保有により人類は全ての生物はおろか地球を滅ぼすほどまでの力を獲得してしまったのです。

ですから人類の選択次第で、人類は自らを滅亡させることが出来るという事実を真摯に受け止めることが何よりも重要だと思います。

 

一方、エネルギー問題について、レイ・カーツワイルさんは20年以内に人間が必要とするエネルギーの全てを太陽光で賄えるようになるという、とても楽観的な予測をされています。

私がこれまで太陽光発電についてお伝えしてきた開発状況からすれば、20年以内は無理にしても、遅くとも今世紀中にはこの予測は実現されているように思います。

 

さて、最近、2045年にはAIが人間の脳を超えるという意味で「シンギュラリティ(技術的特異点)」という言葉は大変な脚光を浴びています。

しかし、この言葉の提唱者、レイ・カーツワイルさんの思い描いているのは、2045年はあくまでもその一里塚なのです。

その先に、AIなどのテクノロジーの進化とともに新たな「超越」を繰り返し、究極的には人類は宇宙全体を把握し、全宇宙規模で活動する存在になると考えているようです。

ということで、2045年は人類の歴史において、とてもエポックメイキングな年になりそうです。

 

さて、フリーマン・ダイソンさんのおっしゃる心と精神の存在ですが、今は完全なミステリーですが、テクノロジーの進化により、遠い将来いずれは解明される時が訪れるような気がします。

そして、その後の人類がこうした事実にどう向き合っていくのかにとても興味が湧いてきます。


 
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