昨年11月19日(日)放送の「サンデーモーニング」(TBSテレビ)で進化する殺人ロボット兵器について取り上げていたのでご紹介します。
昨年11月13日(月)に国連で人工知能(AI)を搭載し、兵士に代わって敵を殺傷する、いわゆる「殺人ロボット兵器」の規制に関する初めての専門家会議が開催されました。
今回の国連会議のポイントはAIです。
現在、無人機による攻撃は遠隔操作、つまり遠くから人間が最終判断を行っています。
しかし、AIの進歩によってAIが攻撃対象を自ら判断して攻撃することも可能になりつつあります。
こうした人間の意志を介在させずに敵を殺傷する兵器を「殺人ロボット兵器」といいます。
この規制に向けて議論が始まったわけです。
こうした「殺人ロボット兵器」はまだ実戦配備はされていませんが、アメリカ海軍の無人艦艇「シーハンター」は2,3ヵ月間の自律航行が可能で、敵の潜水艦を探知することが出来ます。
将来的には武器を搭載する可能性もあるといいます。
一方、韓国では非武装地帯(DMZ)に無人兵器「SGR−A1」が配備されていますが、周囲4kmを監視しながら近づいてきた物体が人間なのか動物なのかを区別することが出来ます。
アメリカのメディアはこのロボットの判断でマシンガンの使用も可能と報じていますが、韓国側はあくまで攻撃の最終判断は人間が下すとしています。
またロシアの銃器メーカー、カラシニコフ社が昨年7月に公開した「無人銃撃システム」は、過去の事例から学び、自律的に攻撃対象を特定し、攻撃の可否判断が可能としています。
イギリスの武器メーカーによると、こうした「殺人ロボット兵器」の開発を行っている国は40ヵ国以上に上っていて、実際にどこまでAI搭載の「殺人ロボット兵器」が開発されているかははっきりとは分からないといいます。
この「殺人ロボット兵器」を巡っては意見が分かれていて、それぞれ以下のように主張しています。
(擁護派)
・兵士の負担軽減
・兵器の小型化によるコスト削減
・燃費向上
・他の技術開発の支援
・市民の犠牲の減少
・誤爆の減少
(反対派)
・「殺人ロボット兵器」は火薬、核兵器に次ぐ第3の革命兵器になり得ること
・独裁者やテロリストなどの手に渡るのは時間の問題
今回の専門家会議ではアメリカやロシアなどの擁護派は規制に否定的、一方途上国など反対派は規制に賛成と、意見がまとまらず、来年以降も議論を継続するという報告書を採択しました。
こうした状況について、番組コメンテーターでジャーナリストの青木 理さんは次のようにおっしゃっています。
「これは本当に恐るべき話で、実際にアメリカで使われている無人爆撃機なんかは、本土から遠隔操作するわけですよ。」
「そうすると、ルポを読んだことがあるんですけども、普通に朝出勤をして遠隔操作で空爆をして、夜家に帰って家族団らんをしているなんていうようなことが行われているんですよ。」
「殺される方は生身の人間なんですよ。」
「だから圧倒的な非対称ですよね。」
「だから更に進化していくのは間違いないので、どうやって規制するのか、禁止にするのか、軍事力行使のハードルがものすごく下がりかねないわけです。」
「アメリカなんかは自国の兵士を犠牲に出来ないから軍事力戸惑うと言うんだけども、これになってくると「やちゃえ」って話、ハードルが下がるのでこれどうするかって本当に人類が考えなくちゃいけない当面の大きなテーマですよね。」
また、番組コメンテーターで毎日新聞社 特別編集委員の岸井 成格さんは次のようにおっしゃっています。
「武器開発って始まっちゃうと止まんないんですよ。」
「これから武器輸出もどんどんなるでしょ。」
「恐ろしい時代ですよね、これ。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
対戦国がお互いに「殺人ロボット兵器」を使用した戦争を想像してみて下さい。
一見、お互いに戦争ゲームをしているように見えますが、戦況が進むにつれて生身の人間が攻撃目標となり、被害が広がっていくと思われます。
ですから、番組でも指摘されているように、「殺人ロボット兵器」の投入によりゲーム感覚で戦争が出来るようになると戦争への突入を決断する際のハードルが低くなってしまうと懸念されるのです。
戦争に“良い戦争”と“悪い戦争”があるわけではありませんが、大量の「殺人ロボット兵器」の投入により大量の人が無機質な兵器の犠牲になる殺伐とした光景は想像を絶します。
世の中から戦争を無くすことは無理だと思いますが、せめて犠牲を最小限に食い止めるような国際的な取り決めが必要だと思います。
そう意味で、「殺人ロボット兵器」の規制に関する国際的な専門家会議が初めて開催されたことはとても価値があると思います。