2018年01月28日
No.3924 ちょっと一休み その631 『 好奇心 ⇒ 感動 ⇒ 目標 ⇒ アイデア ⇒ 実行 ⇒ 達成!』

昨年10月27日(金)放送の「報道ライブ INsideOUT 寺島実郎の未来先見塾〜週刊寺島文庫〜」(BS11イレブン)で今回の番組ゲストは建築家、安藤 忠雄さんでした。

そこで、今回は感動することの大切さに焦点を当ててご紹介します。

 

番組での寺島さんと安藤さんのやり取りの一部を以下にご紹介します。

(寺島さん)

「今や、AI、すなわち人工知能の時代が来て、建築の世界もコンピューターがバンバンバンバン入って来てると思うんですよ。」

「で、今後AIが更に進化してきた時に、ディープラーニングなんかで例えばこのスペースで周りの環境条件を全部インプットして、この要件の中で最適解の建物を設計してみろということをAIに指示したとしたら、それはそこそこのレベルの、このスペースを最大限に活用したこれだけの効率的な、しかも施設の様々な素材から何から全部を提案してくるようなAIのモデルがまさにシンギュラリティの議論があって、人間の能力を超えるんじゃないかってことが迫ってきた時に、例えば建築家っていうジャンルの仕事において、AIがどんどん入り込んで来た時に、本当の意味で生身の人間だとか、あるいは自分の背負っている歴史だとか、その時代だとかと向き合いながら戦っている建築家の仕事はどう変わっていくのか。」

「つまり、もはや建築家の時代は終わるのか、そのあたりのことを安藤さんはどう思っているんだろうと思ってですね。」

(安藤さん)

「確かにAIで今言われたようにデータ入れると答えが出てくるんですよ。」

「そうしたら、人間は何をするのかというと、人間っていうのは思ったように出来ないでしょ。」

「だからいろいろ出来事が起きるように、建築もそういうもんなんです。」

「合理的で機能的で経済的なだけでいいのかと。」

「そのもう一つ向こうはやっぱり想像力なんですよ。」

「想像力を育んでいく家を作る、町を作っておかないと、次の時代ないですよね。」

「町中AIのモノでできていくと、何の感動もない。」

「で私、感動というものは人間の想像力をちょっと刺激すると思うんですよ。」

「そういうところを100に1つあれば、それに行かな仕方がないと。」

「で、ほとんどの建築はAIで出来てしまいます。」

「だから、そういう意味での建築の職業は無くなると思います。」

「だから、私たちはそこを合理的で機能的で、例えば住吉の長屋(安藤さんが1976年に設計した有名な建築物)はすごい評判悪かったんですよ。」

「なんであんな使いにくい、暑いの寒いの、怒られましたよ。」

「だけど考えてみたら、人間でそういうもんでしょ。」

「だから人間を考えるための家を作る人間を考えるための建物を作りたいというふうに言ってますと。」

「地球の中でそれを心配している人いっぱいいるんですよ。」

「そういう人たちから来ますから、我々の場合はギリギリ。」

「これからの若者はどう生きるんだということを考えにゃいけませんね。」

(寺島さん)

「先ほどまさに子どもたちに向き合って考える力みたいなものを身に付けさせなきゃいけないという話をされたんですけども、AIというのは目的手段合理性って僕はよく言ってるんですけど、AIに目的を与えて、その目的の中でビッグデータを分析させて一つ解を求めさせたら人間の能力を超えていくと思うんだけれども人間に必要なのはコンピューターに指示、テーマを設定する能力が大きく問われてくるというかですね。」

「で、子どもたちも含めて我々だってそうですけども、テーマを設定する能力をどうやって磨くんだっていうところに大きな問題意識を持ってなきゃいかんていうかですね。」

「そういう意味で、例えば子ども図書館(*)なんていって、一生懸命大阪でおやりになろうとしていることを僕は非常に共感するんですけど、どういうふうな想いで子ども図書館なんて考えておられるんですね。」

(安藤さん)

「やっぱり子どもが本を読んで考える時間がもうないんですよ。」

「偏差値教育が高いから塾へ行く、(なので時間が)ほとんどないと。」

「だけど、それでは人間に対する愛情のある子どもたちが出来ないと思うんですね。」

「その人間に対する愛情のある子どもたちというのは活字から生まれるだろうと。」

「で、夏目漱石とか正岡子規の交流を見てて、もうホロホロするんですよ。」

「それいいなと。」

「で、昔漱石が歩いたロンドンを歩いたことがあるんですが、良い時代、ま時代が違いますから、違うんですけど、そういうことが少しでも係わるヤツがいれば、ものを考えて生きる人間がいれば、私たちも自分たちの可能な力の中で子ども図書館を作りたいと。」

「で、可能な限り大きく広げたいと思って手を上げたら結構上海でも作りたい、台北でも作りたい、シカゴでも作りたいというんですね。」

「作ったら今度建物なんかできますよ。」

「それを育てていくチームがあるから・・・」

「いっぱい言うてくるんですよ。」

「僕ね、始めたらね、ボランティアでやりたい。」

「だいたいうまくいきませんね、そのボランティアは。」

(寺島さん)

「僕、安藤さんの会話の中でいつも感じるのは“おもろいやないか”っていう空気感ね。」

「それって結構“面白いじゃん”っていう気持ちで前のめりになって突っ込んでいくっていう感覚が安藤さんが漂わせている空気だと思うんですけども、書いておられる中に、若い人たちに対して、“青いリンゴ”で居続けろっていうことを言っておられるんです。」

「これも非常に分かる。」

「だから僕、安藤さんが年齢を重ねてこれだけの実績を上げながらもまだ“挑戦”って言ってるんだぜってのが僕は今回の安藤忠雄展(安藤忠雄展 ― 挑戦 2017年9月27日〜12月18日)を見ての想いなんですけども、想像力だとかいう言葉を見つめながら“青いリンゴ”であれって言っておられる気持ちを最後にお聞きしたい。」

(安藤さん)

「私やっぱりね、日本にはよく「あの人人間出来てきたな」と(言いますが、)人間出来てきたなという年齢の時は65歳ぐらいで寿命だった時ですよ。」

「今、女性は95、6歳(85、6歳?)まで、男性は90歳(80歳?)過ぎまでいくでしょ。」

「その時に最後まで“青いリンゴ”の方がいいと思うんですよ。」

「最後まで希望を持って、死ぬまで青春を持つためにどうするかということを子どもの頃にしっかりと本を読んで、楽しいことを探し回って日本中グルグル歩いたら結構楽しいですよ。」

(寺島さん)

「そうですね。」

「だからそういう意味でも我々もいい年恰好であるけれども、“青さ”っていうのを残して、「アイツいつまでも青いよね」と、「なんかスジ通しているよね」っていうのを含めて、そういうことを思いながら展覧会を見せていただいたということで・・・」


* こども本の森 中之島(仮称)といい、安藤さんが大阪府に寄付し、2019年度に完成予定の子どもの図書館

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

お二人の対談を通して、好奇心 ⇒ 感動 ⇒ 目標 ⇒ アイデア ⇒ 実行 ⇒ 達成という図式が思い浮かんできました。

 

安藤さんは“おもろいやないか”という意識を常日頃持たれているといいますが、これはすなわち好奇心の旺盛さだと思います。

また、安藤さんは何歳になっても感動することの大切さを「いつまでも“青いリンゴ”」という例えで表現されていますが、そのきっかけは子どもの頃の読書、あるいは子どもたちに感動を与えやすいような建物などの環境を考えておられます。

こうしたことから、安藤さんは子ども図書館の建設を通して、好奇心旺盛で感動し易い子どもたちの育成を支援しようとされていることが理解出来ます。

 

さて、安藤さんのおっしゃる「感動は人間の想像力を刺激する」というのは全くその通りで、誰でも感動することからあれこれ想像し、自発的に何かに取り組むことの大きなきっかけになります。

そして、その何か、すなわち目標を自発的に設定すれば、その達成に向けていろいろなアイデアが浮かんできます。

そして、その実行においても誰かから指示されることに比べればはるかに“やる気十分”で取り組むようになります。

ですから、途中であきらめることなく、目標達成に向けて最後までやり抜く可能性が高くなります。

そして、目標達成した時の達成感、あるいは満足感が自信につながり、新たな目標に向けた取り組みにつながっていきます。

 

さて、いくらAIやロボットが進歩しても、これらには好奇心や感動するという感情を持つことはないと思われます。

ですから、先ほどの図式、好奇心 ⇒ 感動 ⇒ 目標 ⇒ アイデア ⇒ 実行 ⇒ 達成に照らしてみると、将来的に好奇心 ⇒ 感動 ⇒ 目標までが人間の行動領域であり、アイデア ⇒ 実行 ⇒ 達成が人とAIやロボットとの共同作業の領域という住み分けが主流になっていくと想像されます。

 

ということで、お二人の対談の中でも強調されているように、子どもの頃に好奇心や感動する心を持たせる環境づくりが今後増々大切になっていくと思われます。


 
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