2018年01月18日
アイデアよもやま話 No.3916 三井不動産によるリアルとネットの融合の試み!

昨年11月1日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で三井不動産によるリアルとネットの融合の試みについて取り上げていたのでご紹介します。 

 

昨年11月1日に大型商業施設ららぽーとなどを展開する三井不動産がEC(electronic commerce)サイト、“&mall”をオープンしました。

ちなみに、ECサイトとは、自社の商品やサービスをインターネット上で販売しているショッピングサイトを意味しています。

衣料品のネット販売が急速に伸びる中で、新たに参入した三井不動産ですが、そこにはリアル店舗とネットの融合を目指すという独自の戦略がありました。

三井不動産の広川 義浩常務執行役員は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「ECの売り上げにフォーカスしているというよりもリアル(店舗)と一緒になって顧客ニーズに応えていきたい。」

「顧客満足が高まっているかを確認する良いチャンスかなと思っていまして・・・」

 

“&mall”には現在三井不動産が展開する商業施設のテナントを中心に200のショップが出店、1年後には400に倍増させる予定です。

三井不動産は、国内外で114の商業施設を展開、会員の数はおよそ1千万人に達し、テナントが売り上げる総額は年間1兆1700億円に上ります。

しかし、品切れなどによる販売ロスがなければ、売り上げが更に1割以上増える見込みと見られ、EC参入には失った販売機会を拾い上げる狙いがあります。

三井不動産の広川 義浩常務執行役員は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「お客様がリアル店舗で来店されて、欠品やサイズが合わなくて買えなかったりすることが起きてまして、リアル施設と共生型のECを作ることが欠品など応えられると・・・」

 

実際に店舗に来店して購入したい商品のサイズが合わず、“&mall”を使って望みのサイズが見つかって注文すると自宅に届けられ、その店の売り上げとして評価されます。

また、画面に表示されたQRコードを経由すれば、お客が後で購入した場合も店の売り上げになるなど、リアル店舗での接客が反映されるように工夫されています。

お客にファミリー層の多いナノ・ユニバースのららぽーと豊洲店では、大きいサイズが特に品切れになりやすく、“&mall”への期待が高まります。

こちらのお店の足立 洋平さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「お取り寄せをしないといけないというケースになった場合に、わざわざもう一度ご来店いただかなくてもご自宅に配送が出来るという。」

「お店での売り上げに入ってきますので、スタッフにとってのモチベーションにもなりますし、そういったところでスタッフもやりがいを感じられる取り組みなのかなと。」

 

また、“&mall”にはお客が商業施設の店舗を訪れる前に在庫を確認出来る機能や店員のコーディネートを見られる機能もあります。

店舗に足を運んでもらうための仕掛けが多く盛り込まれています。

 

三井不動産は、テナントの売り上げを伸ばすことでEC、リアル店舗のかたちに係わらず収益につなげる狙いです。

三井不動産の広川常務執行役員は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「ECモールが加わることによって、よりお客様が来やすい、より楽しんでいただけるショッピング環境が拡充されるのかな。」

「リアル(店舗)との共生にこだわって、リアルを成長させるととも“&mall”を発展させていきたいなと。」

 

番組コメンテーターで野村不動産のチーフ・マーケット・エコノミストの木下 智夫さんは次のようにおっしゃっています。

「(不動産会社の三井不動産はなぜ今リアルとネットの融合を図ろうとしているのかという問いに対して、)三井不動産の今回の試みは小売店舗用不動産の収益性に対する危機感を反映するんじゃないかと思うんです。」

「実は、アメリカでは小売り用店舗が不振に転じています。」

「商業不動産の価格上昇率を2015年9月と2017年9月で比較してみると、概ね好調は維持されているものの(アパートなど他の商業用不動産に比べて)小売り用に関してはもう伸びなくなってしまっているというところなんです。」

「(その理由について、)この2年間の間にアメリカでは小売店舗を巡る環境が大きく悪化してきたんです。」

「インターネットを通じた販売が増えて、やはり小売店舗の売り上げが圧迫されて、最近では百貨店が閉店するようなケースも相次いでいる状況ですね。」

「アメリカでこういった状況が起きているわけなんですが、いずれは日本にも来る可能性が高い。」

「日本でもやはりネットを通じた販売がどんどん増える傾向がありますから、そうすると今後不安になるわけなんですが、三井不動産の試みはこういった将来の課題に対して今から手を打っていこうということで、大変注目される動きだと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

実は私もファッションの量販店やアウトレットなどで気に入った洋服のサイズや色が見つからず、購入しなかったことが何度かあります。

また、どうしても購入したいと思った時には多少サイズが合わなくても購入してしまったこともあります。

 

そこで、この番組を通して、あらためてAI(人工知能)やロボットなどの技術革新が進む中で今後の販売スタイルが満たすべき要件について考えた結果を以下にまとめてみました。

・顧客は出来れば実際に商品を見て、手に取ったり試着した後で購入したいこと

・顧客はリアル店舗を訪れる際には、顧客はあらかじめ在庫を確認出来ること

・実際に店舗に行かなくても気に行った商品を購入出来ること

・実際に試着出来なくても、ネット上などバーチャル空間で試着したイメージを確認出来ること

・LやMなど個々のメーカーの洋服のサイズに関係なく、自分の実際の身長や胴回りなどのサイズにフィットする洋服を容易に見つけられること

・あらかじめサイズや色の好みなどを登録した会員に対しては、お好みの商品を提案出来ること

・訪れたリアル店舗で気に入った商品が品切れでも他のリアル店舗、あるいはECサイトなどでその商品を探し出して提供すること

 

以上、まとめてみましたが、今はネット販売からリアル店舗へという流れと、リアル店舗からネット販売へのという流れが相互に行きかっている状況だと思います。

そして、今回ご紹介した三井不動産のきめ細かな取り組みはECというかたちを取ったリアル店舗からネット販売へという流れの一つの典型例だと思います。

しかし、三井不動産の取り組みも関連するリアル店舗という枠内でのことです。

ですから、顧客の立場に立った販売スタイルの進化型は、いくつかの販売企業、およびメーカーが在庫などの情報を共有することによって、より一層顧客が満足出来るようなサービスの提供につながっていくと期待出来ます。


 
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