昨年10月10日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で「自動ドローン」の農業での活用について取り上げていたのでご紹介します。
今、ドローンが様々な用途で活躍し始めていますが、今回新たにドローンを使った米農業の支援システムが登場しました。
このシステムはお掃除ロボットのように完全に自動で田んぼを飛び回って、農家の労力を大幅に減らそうというものです。
このドローンには水車状の歯車が装着されており、農薬やモミの量をここで正確にコントロールしています。
こうした仕掛けを持っているのは世界でうちだけというドローンを開発したのはベンチャー企業の株式会社ナイルワークスです。
柳下 洋社長は自社の専門分野であるAI(人工知能)をドローンで生かそうと考え、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「3次元空間を自由に動ける時に、荷物を配達したり設備を点検するのではなく、作物がどういう状態かを鳥やチョウチョや虫の視点から作物を見て、その知見を使って農業を効率化しようと思ったわけです。」
「上から見ることで、これだけ植物がよく分かるんだということに人類が気付いた時に新しい農業がそこから生まれる。」
ナイルワークスが目指すのは、農業の働き方改革です。
ドローンが稲の30cm上を完全に自動で飛行し、薬剤を散布します。
飛行するエリアはアプリで管理されていますが、11種類のセンサーによって飛行の水平位置の誤差はわずか2cmといいます。
更に特徴的なのは、カメラで稲を撮影し、稲を1株単位で診断していて、成長状態に合わせて肥料や農薬散布の提案をしてくれるといいます。
このドローンの価格は350万円で2018年5月に全国の農家に対して試験的に販売し、2019年には500台の販売を目指します。
この事業の拡大に向けて、今回ナイルワークスは第三者割当増資を実施し、産業革新機構や住友商事、JA全農などの企業や団体から総額8億円の支援を受け、更に開発を進めるといいます。
産業革新機構の浜辺 哲也専務は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「こういうベンチャー投資でもって日本の未来を切り開いていくということが役割でございますので。」
「高齢化とか就業人口が減っているという問題がある中で、今回ナイルワークスがドローンを使うことによって圧倒的に農業の生産性が上がるということを期待しています。」
さて、自動運転やドローンにはAIやIoT(モノのインターネット)が欠かせないですが、番組コメンテーターで日本総研の理事長、高橋
進さんは、こういったものが実際にサービスになっていく流れについて次のようにおっしゃっています。
「例えばドローンの話でいうと、まずドローンを飛ばしていろんなデータを得るとか、畑のデータとか作物のデータとか虫のデータ、天候のデータ、GPSのデータ、いろんなデータが必要ですよね。」
「まずこうしたデータを取るわけですよ。」
「次にそのデータをコンピューターに送り、ここでいろんなデータを整理してビッグデータにする。」
「で、どのデータとどの現象がくっ付いているとかということを学習させて、そして最後はAIを使ってソリューションする、答えを出す。」
「今回の場合はナイルワークスという企業が答えを出したんですね。」
「そして、それをもう1回ドローンで実際に農薬散布だとかいろんなことに実装してみると、実際にやってみると。」
「で、多分1回ではうまくいかなくて、こういうプロセスを何回か繰り返すことで本当にいいサービスが生まれてくると。」
「これAIとかITの場合はだいたいどんなことをやってもこういうプロセスになるということなんですね。」
「ところが今回の場合はナイルワークスというベンチャーがAIを利用した解析をクリアしたわけですけども、日本全体でみると実はデータを集めるところもいいし、社会実装も出来るんだけども、AIを使った解析がものすごくまだ弱いんですよ。」
「結局、日本の中に人材がいないんですよ。」
「だから外国の企業と組んだり、得意なベンチャーと組んだりするわけですけどもね。」
「ただ、私は日本の企業に「ちょっと忘れてませんか」って言いたいのは、実は日本の大学なんですよ。」
「日本の企業は日本の大学は駄目だと思っている人が多いんですけども、ITとかAIの世界では結構日本の大学はそれなりに進んだものを持っていて、ものによってはMIT(マサチューセッツ工科大学)より凄いというところもあるんです。」
「だから、ちょっと日本の企業はもう1回日本の大学を発掘してもらいたいという気がするんですけどね。」
「産学連携、実は「足元に宝は眠ってます」とちょっと強調したいんですけどね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
今回ご紹介したドローンを使った米農業の支援システムは、稲を1株単位で診断して、成長状態に合わせて肥料や農薬散布の提案をしてくれるといいます。
この支援システムが実際の米農業に係わる作業時間のどのくらいの割合を占めているか分かりませんが、農業の働き方改革に貢献することは間違いないと思います。
しかし、米農業の作業にはこの他にも田植えや稲刈りなどがあります。
ですから、こうした作業もAIやロボットの活用による支援システムを開発することにより、本来目指すべき農業の働き方改革が実現出来ると思います。
ということで、AIを専門分野とするナイルワークスには、ロボット関連企業と協業して、米農業の全プロセスをカバーする支援システムの開発を進めていただきたいと思います。