2017年11月09日
アイデアよもやま話 No.3856 新たな輸出産業 ー 体育授業!

前回は韓国の企業が開発した、遊びながら学べる電子ブロックについてご紹介しましたが日本の企業も負けてはいません。

8月14日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で体育授業という新たな輸出産業について取り上げていたのでご紹介します。

 

日本でアジアの新興国などに向けた新たな輸出産業が興りつつあります。

それが教育です。

スポーツ用品大手のミズノが独自に開発したプログラムが今ベトナム全国の公立小学校で正式に採用される可能性が高まっています。

およそ1万5000校が対象となる巨大ビジネス、日本企業はチャンスを生かせるのでしょうか。

 

ベトナム中部の都市、ダナンは経済の発展が著しいベトナム第三の都市で、ビーチリゾートとしても人気で今開発ラッシュに沸いています。

そんなダナン市にある公立のチャン バン オン小学校ではロケット型の風船を投げて遊んでいる生徒たちがいます。

一方、ハードルのようなもので遊んでいる生徒たちもいます。

子どもたちを夢中にさせるこの道具は全てミズノで開発したものです。

遊ぶ子どもの傍らにはミズノでアジア営業を8年担当している森井 征五さんがおります。

ベトナムでのビジネス拡大を目指しています。

森井さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「ミズノが独自に開発した運動遊びプログラムです。」

「手狭な場所でも簡単な安全性のある用具を使って子どもたちが笑いながら運動遊びを覚えられる。」

 

これらはミズノが5年前の2012年に開発した小学生向け体育プログラム「ヘキサスロン」で、スポーツの基本的な動きが身につくといいます。

例えばエアロケットが育てるのは「投げる」動き、またハードルは「走る」と「跳ぶ」、そしてエアロディスクは身体全体を「回す」運動です。

この「ヘキサスロン」をミズノは今ベトナムで広めようとしているのです。

 

その背景は子どもたちの運動不足です。

子どもの肥満が深刻化しているベトナムでは食生活の変化もあり、首都ハノイでは小学生の約4割が「やや肥満」以上のデータもあります。(ベトナム保健省 2011年調べ)

しかし、ほとんどの小学校には運動場がありません。

体育をするのは石畳の上などです。

なので授業の内容は柔軟体操のようなものやその場で走る動きをする程度で運動不足は深刻な問題なのです。

なので限られた空間でも運動が出来る「ヘキサスロン」ならベトナムで売れると考えたのです。

これまでの実験ではベトナムの体育の授業と比べて運動量が約2倍になるという結果が出ました。

「ヘキサスロン」での授業を観ていたある男性教師は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「ベトナムで普段やっている体育の授業より運動量が多いね。」

 

また、別の女性教師は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「興味を沸かせてくれる内容だし、なにより道具が斬新で面白いわ。」

 

道具だけではありません。

「ヘキサスロン」の指導者向け説明書もあります。

道具と授業の進め方をセットで売り込もうと考えています。

森井さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「来年にベトナムで改定される学習指導要領に正式に導入していただいて、その上で義務教育に「ヘキサスロン」を導入してベトナム全土に広げていくと。」

「行政のトップから全国の小学校の教師の方々にまで全ての方に共鳴いただいてこれを進めていきたいと。」

 

ベトナム全国の公立小学校約1万5000校に「ヘキサスロン」を採用してもらおうというのです。

ある日、「ヘキサスロン」の効果を現地教師たちに実感してもらうための講習会が開かれました。

ロケット型の風船「エアロケット」はいい加減な投げ方だとうまく飛びません。

まっすぐ飛ばすには正しい投げ方が必要なのです。

教師たちもそれを実感出来たようです。

森井さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「必ず正式導入すると。」

「ラストスパートしたいと思います。」

 

ベトナムへの売り込みは勝負の時を迎えていました。

舞台は日本、バスから降りてきたのはミズノの森井さん、そしてベトナム政府の関係者です。

森井さんが「ヘキサスロン」を導入した奈良県の香久山小学校を見てもらおうと日本に招いたのです。

授業を見に来たベトナム教育訓練省のチャン・ディン・トワン局長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「とにかく運動をさせたいんだ。」

 

「生徒たちが受け身ではなく主体的に取り組んでいて効果的な授業だと思いました。」

「個人的には(ベトナムの義務教育に)採用する可能性は高いと思います。」

 

仮にこの「ヘキサスロン」がベトナム全国で導入されれば、売り上げは数十億円規模、更に「ミズノ」というブランドをベトナムに浸透させる効果もあります。

森井さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「初等教育で「ヘキサスロン」を導入させていただいて、そしてスポーツ、サッカーとかバトミントンが盛んなんですよ。」

「これを一気通貫でミズノとしてベトナムで商売をやりたいと。」

 

教育コンテンツは日本企業に新たなチャンスをもたらすのでしょうか。

 

番組コメンテーターでみずほ総研のチーフエコノミスト、高田 創さんは、次のようにおっしゃっています。

「(ミズノがベトナムに狙いを定める理由について、)一つはベトナムが経済発展で中間層が非常に増えているところだと思うんですよね。」

「それに加えてベトナムが非常に教育に熱心だという国民性があることだと思うんですね。」

「(アジアにおける消費支出の占める教育費の割合でベトナムが一番高いというように)それだけ教育熱心だっていう部分があるんだろうと思うんですよね。」

「そうなりますと、そういったところに需要を見つけてっていうことは当然出てくると思うんですよね。」

「(日本におけるベトナム留学生数でも中国がずっと多かったのですが、ベトナムは2014年から)急速に増え今や(中国に次いで)2位になっていますよね。」

「ですから非常に親日っていうこともありますし、また日本からベトナムに戻って日本の文化を伝えていこうかとか、そういう意味での循環というのでしょうか、また日本語熱も強いですよね。」

「(課題はあるかという問いに対して、)まだまだ外資の受け入れには慎重な部分てあると思うんですよね」

「そうしますと、政府の受け入れを得られるような努力が必要になってくるということじゃないでしょうかね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

先進国、日本には今回ご紹介した体育授業のようにまだまだ途上国にとってとても有意義なツールやサービスを提供している企業があるのです。

ですから、こうしたツールやサービスについて海外諸国の政府関係者に知ってもらうためのワンストップ窓口を設けることは日本の企業の活動の場を広げる意味でとても重要だと思います。

また、こうした動きが広がり、その実績が企業に知れ渡れば、新たに途上国向けの商品開発に乗り出す企業も現れてくると期待出来ます。

 

最近、インバウンド(海外からの観光客)を対象とした観光事業が新たな成長産業として注目されていますが、国内の優れた商品を海外に効率的に売り込む動きも日本経済の活性化にとってとても効果的だと思います。

 

そういう意味で、今回ご紹介したミズノがベトナムで売り込んでいる体育授業のように、まず途上国の政府や自治体をターゲットとした商品の売り込みを一企業だけでなく、国が積極的に支援するかたちで進めることはとても有効だと思うのです。

その場合、勿論日本国内の学校でも有効と思われるものについては実際に学校で試行して効果を確認することは言うまでもありません。


 
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