7月6日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で技術力で医療サービス向上の事例を2つ取り上げていたので2回にわたってご紹介します。
2回目は、IoT(モノのインターネット)を活用した医療機器管理システムについてです。
技術の力で医療のサービス向上につなげる動きは、聖路加国際病院(東京都中央区)でも見られます。
こちらの病院の臨床工学室(地下2階)では点滴用ポンプなど小型の医療機器およそ2000台を保守管理しています。
こうした機器は複数の診療科をまたいで使われていて、課題がありました。
こちらの臨床工学室の秋葉 博元さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「漠然といろいろな所に放ったらかしになっていたりとか、病棟によっては専用のストック棚を設けて置かれている所もあったりだとか、その管理はまたまちでしたね。」
そこで、この病院が導入したのが素材メーカー、帝人が開発した医療機器管理システム「レコピック」です。
電波を発するシートを保管棚に置き、医療機器に電波を受信するICタグを貼ることで、どの課にどのような医療機器があるかをパソコン画面で把握出来ます。
例えば、内科で保管していた機器が急きょ足りなくなった場合、これまで看護師が地下2階の臨床工学室まで取りに行っていました。
システム導入後は、必要とする機器の場所がパソコンで分かるため、近くの課から機器を持ってくることが出来るようになりました。
秋葉さんは、次のようにおっしゃっています。
「(聖路加国際病院は)地上10階、ここ(臨床工学室)は地下2階ですので、実質12階ありますので、長い時に往復20分もかかるケースもあるので、その時間をいかに短縮するかは大事だなと考えています。」
システム導入から1年、看護師が臨床工学室に移動する回数はおよそ85%削減されました。
これにより、看護師による患者への対応が拡充したといいます。
更に、短い時間で機械を準備することが出来て、結果的に患者さんの安全につながるようになりました。
また、こうした効率的な運用で、今後2000万円相当の医療機器を削減することも出来るといいます。
最新技術で無駄を省きながら医療サ−ビスの向上につなげる動きは今後も加速しそうです。
今後、国では在宅診療を増やす方針ですが、医師の数の問題や質を落とさずに効率をどのようにアップするかが大事な要素になってきます。
そこで今までと発想の違う新しい医療機器が求められます。
これは医療メーカーにとっても新しいビジネスチャンス、あるいはマーケットになると番組では指摘していました。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
今回ご紹介した医療機器管理システム「レコピック」の事例もIoTの活用事例と言えます。
電波を発するシートを保管棚に置き、医療機器に電波を受信するICタグを貼ることで、どの課にどのような医療機器があるかをパソコン画面で把握出来ます。
こうした“見える化”により、これまで出来なかったような効率的な作業が可能になったのです。
考えてみれば、これまでも様々な作業がコンピューターにより機械化されて効率化が図られてきました。
それがIoTにより、これまでは不可能だったレベルの作業の効率化が可能になったのです。
そして更に、AI(人工知能)やロボット技術との組み合わせにより、今や全自動に限りなく近い作業プロセスが実現出来る可能性が出てきたのです。
高齢化社会の進行により、医療費は今後とも更なる上昇が見込まれます。
そうした状況下において、2回にわたってご紹介してきた医療サービス向上の事例は、医療費削減対応策の大きなヒントになると思われます。