2017年09月05日
アイデアよもやま話 No.3800 アンモニアがCO2削減の切り札に その2 燃料電池としても注目!

6月25日(日)放送の「サイエンスZERO」(NHKEテレ東京)でCO2削減の切り札、アンモニアについて取り上げていたので3回にわたってご紹介します。

2回目は、燃料電池としても注目されるアンモニアについてです。

 

アンモニアは火力発電だけでなく他の発電、すなわち燃料電池でも注目されています。

燃料電池は化学反応で発生する電気を使う方法ですが、一般的に使われている水素を使った燃料電池は3つの層になっています。

片方から水素が、もう片方から酸素が入るようになっています。

そして、水素は水素イオンになって電子を放出します。

その電子が酸素の側に流れていき、電気が発生するという仕組みです。

この反応から出てくるのは水だけで、CO2は排出しないのでクリーンエネルギーとして期待されています。

ところがこの水素は輸送や貯蔵が難しいという課題があります。

この課題について、東北大学流体科学研究所(仙台市青葉区)の小林教授は番組の中で次のようにおっしゃっています。

「燃料の輸送や貯蔵には、液体にするのが最も効率がいいと考えることが出来ます。」

「しかし、水素を液体にするにはマイナス53℃以下という酷低温にしなければいけません。」

「あるいは、エコカーとして今注目されています燃料電池車に十分な走行距離を持たせるために700気圧という高圧にします。」

「これには大変大きなコストがかかりますので、結果的に水素の利用が中々進まない理由になっているということが言えると思います。」

「(そこで、燃料電池に水素ではなくアンモニアを使う研究が進んでいることについて、)アンモニアはNH3ですので水素を大量に含んでいます。」

「このアンモニアを電極で分解することによって、燃料電池として利用出来るようになるわけです。」

「(アンモニアの貯蔵や運搬について、)アンモニアは常温で8.5気圧で液体になります。」

「また、冷却すると概ねマイナス33℃で液体にすることが出来ます。」

「これはほぼプロパンと同じ物性です。」                        

「従って、私たちがプロパンを利用するのと同じようにタンクにいれておくことが出来るんですね。」

「そういう意味で、アンモニアは貯蔵、輸送に非常に優れた燃料だということが出来ます。」

 

ところが、アンモニアを使った燃料電池にも課題があるのです。

それは燃料であるガスを閉じ込める技術の開発です。

燃料のガスが周りに漏れ出さないよう、燃料電池の電極と金属のつなぎ目を塞ぐ必要があります。

通常ではガラスなどで密閉しますが、水素の代わりにアンモニアを使うとこのガラスが腐食してしまうのです。

この問題の解決に挑んだのが、セラミックスメーカーの株式会社ノリタケ(愛知県名古屋市)です。

ここでは100年以上前から洋食器の製造を行っています。

食器の表面はガラスでコーティングされています。

食器製造で培った技術を応用しようと考えたのです。

様々な成分のガラスを作り、アンモニアで腐食しない最適な素材を探しました。

ノリタケの高橋 洋祐グループリーダーは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「700℃以上の高温で発電する燃料電池ですので、材料としての耐久性と高温でガスを遮断する構造を維持すること、その2つを両立することに苦労しました。」

 

こうして出来たのがガラス製の封止材です。

これを電極を含む部品と組み合わせます。

上下を金属ではさみ、10枚重ねたものがアンモニア燃料電池です。

乾電池を10個直列につないだのと同じ状態です。

よく見ると間に白いものが見えます。

これがアンモニアでも腐食しない封止材なのです。

 

実際にアンモニアで燃料電池が働くのか、試験をしたのは長年燃料電池を研究してきた京都大学の江口 浩一教授です。

2015年に250wの発電に成功、発電効率も53%を達成しました。

アンモニアで腐食しないガラスの開発によって、水素を使った燃料電池と同じような性能を発揮出来たのです。

江口教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「このプロジェクトでは1kwを1つの単位として、そこで高効率の発電が可能であるということを示して、アンモニアが燃料として使える、あるいはエネルギーキャリアとして有効であるんだという、そこを示していくことが役目だと思っています。」

 

こうなるとアンモニアを使った燃料電池ももうすぐ出来そうですが、小林教授は番組の中で次のようにおっしゃっています。

「自動車以外にも家庭用燃料電池、現在では都市ガスを中心にしたものなんですが、既に20万台以上普及していると言われています。」

「だいたい出力は1kwレベルなんですが、これと同じ程度のものがアンモニアでもうすぐ出来そうなんですね。」

「(ということは家庭でもアンモニアを使った燃料電池が使われるのかという問いに対して、)はい。」

「しかしながら、やはり劇物ですので家庭にこれが浸透していくためにはいろんな法整備などが必要になってくると言われています。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

以下に要約してみました。

ご存知のように、現在、燃料電池と言えば水素を使ったものが燃料電池車用として使われています。

しかし、水素燃料電池には以下のように弱点があります。

・酷低温や高気圧というように輸送や貯蔵が難しい

・大変大きなコストがかかる

 

一方、アンモニアには以下のようなメリットがあります。

・プロパンとほぼ同様に輸送や貯蔵が出来る

 

ところが、アンモニアを使った燃料電池にも燃料のガスが周りに漏れ出さないよう、燃料電池の電極と金属のつなぎ目を塞ぐ必要があるという課題がありましたが、セラミックスメーカーの株式会社ノリタケ(愛知県名古屋市)によって解決されました。

しかし、劇物なので普及にはいろんな法整備などが必要であるという課題が残っています。

更に、製造上の課題もありますが、これについては次回ご紹介します。

 

いずれにしても、燃料電池としての評価では、輸送や貯蔵、そしてコストの面で明らかに水素よりアンモニアの方が優れていると思われます。

ですから、近い将来、燃料電池と言えば、アンモニア燃料電池が主流になっていると期待出来そうです。


 
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