2017年08月15日
アイデアよもやま話 No.3782 AIの活用事例 (4) その2 AIが過疎化を救う!?

これまでAI(人工知能)関連の動向について何度かお伝えしてきましたが、その第4弾として今回も8回にわたってご紹介します。

2回目は、過疎化を救うAIについてです。

 

5月17日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で過疎化を救うAIについて取り上げていたのでご紹介します。

 

過疎や過疎と見なされる過疎関係市町村は797あるといいます。

全国の市町村の数が1718ですので、日本の46%、半分近くが過疎地域ということになります。

そこには、高齢化に伴い交通難民や買い物弱者など様々な問題が起きていますが、それをAIを使って解決しようと新たな試みが始まっています。

 

京都府南部に位置する南山城村、人口はおよそ2800人、京都唯一の村でスーパーマーケットもコンビニもありません。

その村が運営する1日3便しかないワゴンバス、全国の過疎地域が抱える買い物弱者、交通難民の問題をどう解決していくのか、南山城村ではAIを使った実証実験を始めています。

村の総務課の関口 翔平さんとAIベンチャー、株式会社エルブズの冨永 善視さんはある日一人暮らしの高齢女性宅を訪れて、タブレットを取り出しました。

そして、アプリを立ち上げると5人のキャラクターと会話が出来るようになっています。

指でキャラクターを下げると、そのキャラクターが登場、早速自分の名前を入力していくと、キャラクターが話しかけてきます。

このAIが目指すのは人間らしい会話です。

更に、例えば出かける際にワゴンバスの時刻表が見たいと入力すると、時刻表を表示してくれるだけでなく、料金やリアルタイムのバスの位置まで教えてくれます。

このように、AIが一人暮らしなどの高齢者の良き話し相手になるのです。

それだけではありません。

村の役場では、タブレットの使用状況が見られるので安否確認にもつながるのです。

南山城村は約20人の高齢者にこのタブレットを配り、実証実験を行っています。

 

2次元のキャラクターと親しみが湧いて来る理由には、ある仕掛けがありました。

アンドロイド研究の第一人者で、人間との対話について研究している大阪大学(大阪・豊中市)の石黒 浩教授がこのAIの監修を引き受けていたのです。

キャラクターを実在の人物に近づければ、その場所に行った気分にもなり、会話も増えていくのではないかとエルブズの担当者との会議で指摘しています。

石黒教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「アンドロイドを作る意味は、「対話とは何か」とか、「対話のエッセンスは何か」を調べるためなんですよね。」

「アンドロイドの研究から生まれたいろいろなアイデアを実用化に結びつけている・・・」

 

南山城村役場では、AIの使い方を進めていました。

村が期待しているのが、御用聞きとしての役目です。

例えば、道の駅で売っている弁当を配達してもらいたい場合、タブレットでAIに注文すると、すぐさま道の駅に送られます。

AIが御用聞きとなり、情報を前さばきしてくれるので、計画的に弁当を作ることが可能になります。

将来的には弁当だけでなく、野菜や日用品を配達することを検討しています。

南山城村の手仲村長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「これ(AI)をうまく使えば、買い物難民だけでなくて、医療の点、交通アクセスの問題も含め山間へき地には便利な手段になってくるかな・・・」

 

エルブズの田中 英樹社長は、過疎で苦しむ地域をAIが解決していくと信じており、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「AIを通じて物を発注する方は間違いなく増えると。」

「南山城村もAIで進化をしていくわけなんですが、私どもエルブズとしては他の地域でもこの知見を広げていきたいと。」

 

今回ご紹介したAIシステムは導入コストが安く、ソフトとタブレットがあれば出来るので、小さな過疎の村でも導入し易いのではないかということです。

こうした取り組みについて、番組コメンテーターでレオス・キャピタルワークス社長の藤野 英人さんは、次のようにおっしゃっています。

「この実験が成功したら、沢山過疎の村がありますから日本の大きな課題解決になるんじゃないかなと思いました。」

「これから少ない人口の若者が高齢者を支えなければいけない時代になるわけですけども、今後目指すのは多世代共生時代じゃないかなと思ってまして、多くの人たちが混在して生きる社会になると思うんですね。」

「そこで必要なのは、“IT”と“愛嬌”というふうに思います。」

「今回のようなAIとか監視カメラのようなITを使って、省力化、少人化をしていくと同時に人間らしいサービスですね。」

「人間が行う人間らしいサービスでいう“愛嬌”が必要ではないかなと。」

「(具体的には、)御用聞きのようなサービスですね。」

「省人化、省力化によって空いた手間によって、人による温かいサービスが出来るようになるんじゃないかなと思いますね。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

全国的に過疎化が進み、一方で少子高齢化も進んでいます。

こうした中、AIを含め、IT全般を総動員して過疎地域での暮らしをサポートする体制の整備が求められます。

そういう意味で、南山城村とエルブズとのAIを活用した取り組みは、今後の過疎地域対策の先駆けと言えます。

一方、番組コメンテーターの藤野さんの指摘されている“愛嬌”もとても大切だと思います。

人はモノではありませんから、ただ必要なモノやサービスを提供するだけでは無味乾燥した、ただ生きているだけの暮らしになってしまいます。

人として豊かな暮らしをするためには、親しい人や同じ趣味を持つ人などとのコミュニケーションが欠かせません。

そこで、遠く離れた家族や同じ村の親しい人たち、あるいは擬人化したAIとのコミュニケーションの環境整備が求められるのです。

幸いなことに、こうした環境を可能にするほとんどの技術は既に実用化されています。

ですから、各自治体がその気になって動き出せば、過疎地域の抱える問題の多くは解決出来るはずなのです。


 
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