2017年06月16日
アイデアよもやま話 No.3731 アクティブ・ラーニングで教育が変わる!?

3月15日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でアクティブ・ラーニングについて取り上げていたのでご紹介します。

 

今、学校教育の現場で大きな変革が始まっています。

それがアクティブ・ラーニングという考え方の導入です。

これは生徒が自ら課題を見出して、仲間と相談しながら主体的にその課題を解決することで、より深い理解を得ることを期待するものですが、この教育に役立つツールとして注目されているのがデジタル教材です。

企業も熱い視線を送る教育の変革の現場、静岡県の浜松市立三ヶ日西小学校では授業にアクティブ・ラーニングを取り入れています。

生徒がグループに分かれて取り組んでいるのがオリジナルの歌の作曲、使うのはタブレットだけです。

ヤマハが教材として開発した作曲ソフトが搭載されています。

まず、生徒たちが自ら作った歌詞を入力します。

一文字ずつ音階に貼り付けていきます。

ヤマハの歌声合成ソフト「ボーカロイド」の教育版で再生したメロディを聴くことが出来ます。

そして、文字を張り付けたマスを伸ばすと、簡単に音を伸ばすことも出来ます。

楽譜を読めなくても直感的に曲を作ることが出来るのです。

この小学校の菊池 寛教諭は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「音楽の出来、不出来に関係なく、どの子も同じように学習出来て、しかも楽しみながら出来るのがいいかなと思っています。」

 

生徒たちの取り組みを見守るのは、ヤマハ新規事業開発部・営業企画担当の塩谷 由佳子さんで、このような教材ソフトの需要は今後増々高まると期待しています。

塩谷さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「アクティブ・ラーニングにはうってつけのソフトなんじゃないかなと考えています。」

「音を「こうした方がいい」とか試行錯誤する中で、自主的な学びとか深い学びにつながっていくと思っておりますので・・・」

 

このヤマハのソフトの存在を聞きつけ、同じ市内にある井伊谷小学校の生徒も動きました。

こちらのある女子生徒は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「(三ヶ日西小学校が)学級歌を作ったという新聞記事を見て、自分たちの学校でもやりたいと思って始めました。」

 

生徒は2ヵ月かけて先生を説得したといいます。

生徒の熱意に負けてソフトを導入、生徒たちは5ヵ月かけて学年の歌を作りました。

この学校の高林 圭吾先生は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「タブレット1台使って、簡単に曲が出来ていく様子を見たりとか、子どもたちが作っていく中で、どんどん想像を膨らませていったのが一番見ていて取り入れてよかったなと思っています。」

 

一方、横浜市立白幡小学校でもアクティブ・ラーニングを積極的に導入しています。

6年生の体育の授業では、2月からチームに分かれてワンキャッチ・バレーボールに取り組んでいます。

ある日のテーマは、「勝つためにゲーム記録を生かして作戦を立てて沢山得点しよう」でした。

授業は基本的に生徒が自ら進めます。

ワンバウンドまでにレシーブ、トスは投げてあげるという独自のルールです。

それぞれのチームにはタブレットを手にした記録係がいます。

アタックが決まったら赤、決まらなかったら黒と、毎回アタックのコースを記録していきます。

これが生かされるのが試合後です。

タブレットに残した記録を見て反省会をするのです。

データを簡単に記録出来、その場で見られることでみんなが課題を共有出来るのです。

このソフトの導入を決めた玉置 哲也先生は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「子どもが課題を発見して、自分たちで課題解決の方法を選択しながら学習を進めていくことを大切にしたいと思っているので・・・」

 

当初、市販のソフトも試しましたが、子どもの使い易いものはなかったといいます。

そこで玉置先生は、教材ソフトの制作をベンチャー企業のエレファンキューブ(東京都文京区)に依頼しました。

この会社には各地の教師から教材の制作依頼が舞い込み、2016年度は前年度の4倍に達しています。

社長の支倉 常明さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「今、どんどん教育の現場に求められることとかやり方とかが変わってきているので、そこにうまく乗っていきたいなと思っています。」

 

この会社では教育現場のニーズに細かく対応しながら、より使い易い教材ソフトの開発につなげたい考えです。

白幡小学校の関谷 道代校長は、タブレットなどを使用したアクティブ・ラーニングを今後も推進していく方針で、次のようにおっしゃっています。

「与えられたものを聞いていて理解するよりも、自分が説明することで確実に自分の理解が深まっているし、それが確かなものになっていくのを実感しています。」

 

既に全学年の全教科にアクティブ・ラーニングを導入している白幡小学校は、全国学力テスト(6年生・4教科)も上昇し、2016年度の全国平均を10〜13ポイント上回っています。

そのアクティブ・ラーニングに使われる出来たる教材・コンテンツ市場規模は、2020年度には約150億円(2014年度比2.5倍)に成長すると予測されています。(富士キメラ総研調べ)

 

番組コメンテーターの大和総研チーフエコノミスト、熊谷 亮丸さんは、次のようにコメントされております。

「(アクティブ・ラーニングのようなものも登場する中で、今後教育の現場にはどういうことが求められるかという問いに対して、)これからAI(人工知能)が発達してくると、人間に求められる能力がだいぶ変わってくると思うんですね。」

「具体的には、2つ重要な点があって、一つは問題発見して目標を設定する能力。」

「例えば、学校の試験などだと既に問題が与えられているわけですが、社会にいくと問題を発見することこそが重要である。」

「それから、AIは目標を自分で作ることは出来ないわけですね。」

「例えば、囲碁だとか将棋などルールが決まって、目的が決まっていれば強いわけですが、目標自体を設定することは出来ない。」

 

「もう一つはコミュニケーションの能力。」

「例えば、AIが発達した時に医者という職業は無くなるかもしれないが、看護婦という職業は残るだろうと言われている。」

「要するに、コミュニケーションが非常に重要なわけですね。」

「今のVTRを見ていると、この2つを育てる意味でデジタル教材が非常にうまく機能しているという印象があるということですね。」

「ですから、かなり有効なツールであると。」

「ただ、他方でこれに頼り過ぎてはいけないというのがあって、例えば使い過ぎると文章力が落ちてしまったりだとかですね。」

「そもそも人間というのは不自由なところから、そこで努力することによって人間の能力が上がっていくわけですよね。」

「ですから、その意味では入り口としてはデジタル教材でいいわけですが、最後はもうちょっと深い思索だとか、少し辛いことをしていかないといけないと思いますよね。」

「(そういったバランスを考えること、それからどんな学ばせ方をするか、そこが先生のプロデュース能力ではないかという指摘に対して、)先生の力量が相当問われる時代に入ってくると思いますね。」

「(それこそ人にしか出来ないことではという指摘に対して、)その職業の一つになると思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

今後、AIやロボットなどが普及していくにつれて、私たち人間とコンピューターや機械との間でやるべきことの住み分けが公私を問わずどんどん変わっていきます。

そうした中で、アクティブ・ラーニングの狙いとする、自ら課題を見出して、仲間と相談しながら主体的にその課題を解決する能力を高めていくことが社会に出ると今後増々要求されてくると容易に想像出来ます。

ですから、子どものうちからそうした能力を身に付けておくうえで、アクティブ・ラーニングはとても理に適っていると思います。

そして、実際に番組でも取り上げていたように、既に全学年の全教科にアクティブ・ラーニングを導入している白幡小学校では、全国学力テストで成果が出ているといいます。

 

一方、番組でも指摘していたようにアクティブ・ラーニングを進めるにあたっては教師の力量がとても重要になります。

ですから、アクティブ・ラーニングをうまく進めるための教師の育成が欠かせないのです。

 

また、こうした教育を進めていくうえで便利なのがデジタル教材なのです。

ですから、今後ともアクティブ・ラーニングとデジタル教材の関係はキャッチボールのようなもので、相互のやり取りの中でどんどん進化していくと思われます。

そして、アクティブ・ラーニングは、学校での活用に留まらず、企業などにおいても人材育成の強力なツールとしてのみならず実際の業務を進めるうえでのツールとしても大いに期待出来ます。

 

さて、楽譜を書けなくても、あるいはピアノやギターなどの楽器を使わなくても、誰でも簡単に直感的にタブレットのアプリだけで作曲出来てしまうというツールの登場で、誰もが曲作りが簡単に出来てしまいます。

既に、メロディの一部を入力すると作曲を完成してしまうアプリは登場しています。

一方、メロディはいろいろと浮かんでも歌詞を考えるのが苦手という人もいます。

ですから、気に入った歌詞の一部を入力するとそこから連想されるいろいろな歌詞を表示してくれるアプリがあれば、作詞も作曲もし易くなります。

ですから、こうした要件を全て兼ね備えたアプリが登場して来れば、誰でもオリジナルの曲づくりを出来るようになります。

そうすれば、学校でのアクティブ・ラーニングの教材としてだけでなく、広く一般の人たちが音楽を楽しめるような状況になると大いに期待出来ます。

勿論、私もこうしたアプリが登場すれば、それを使って曲作りに励みたいと思います。


 
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