2月13日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で世界最強の磁器、有田焼の秘密について取り上げていたのでご紹介します。
日本の磁器発祥の地は佐賀県有田町と言われており、400年の伝統があります。
その有田町で“世界最強”の磁器が誕生しました。
開発したのは、佐賀県窯業技術センターです。
ここは焼き物に関する研究開発や技術指導を行うためにつくられた県の施設です。
“世界最強”の磁器を開発したこちらの研究員、蒲地 伸明さんは20年以上にわたって壊れにくい焼き物について研究してきました。
一般の有田焼は立った状態から焼き物を落とすと割れて粉々になってしまいますが、新たに誕生した焼き物は何度落としても割れません。
一般の有田焼に比べて強度はおよそ5倍ですが、その差の秘密は焼き物の中に入っている素材にあります。
一般的な有田焼は、陶石と呼ばれる石で作られます。
この石には、骨組みとなる石英などの硬い素材、形を作るための粘土、その隙間を埋めるガラス質、この3つの素材がバランスよく混ざっています。
“世界最強”の磁器もこの3つの素材の組み合わせでできていますが、一番のポイントは特別な“ガラス質”です。
500回以上調合を繰り返してようやく見つけた特別な“ガラス質”なのです。
現在、特許申請中でその詳細は秘密だといいます。
蒲地さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「非常に溶けやすい、接着する力が強い材料になっています。」
一般的な有田焼と“世界最強”の有田焼とをその断面図で比べてみると、特別な“ガラス質”によって明らかに後者の方が空洞が少なく、しかも小さくなっているのです。
これが分割れにくい秘密でした。
世界中の磁器と比べても最も強いというこの磁器は、県をあげて開発、今後はそのノウハウを県の業者に提供します。
背景には、有田焼の衰退があります。
売上はピーク時の6分の1という状況下、伝統的な製品に加え、実用的なものにも市場を広げようというのです。
この磁器にはもう一つ大きな特徴があります。
既存の設備でこれまでの磁器と同じ窯を使い、同じ製法で作ることが出来るのです。
これが蒲地さんがこの製法で一番こだわったところです。
この産地は非常に小さい企業の集合体となっていて、新しい設備投資をするのが難しいからです。
こうした中、有田町ではまだ歴史の浅い創業32年の匠では、既に一般的な有田焼より強い“強化磁器”を製造・販売しています。
現在は主に病院や学校の給食向けに販売をしています。
匠の西山 典秀社長は世界最高の磁器で更に新しい分野に挑戦しようと考えており、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「外食産業関係を目指しております。」
「強度のある素材・食器を使いたいと依頼が今来ております。」
セールスに出向いた、国内外で38店舗を展開するオペレーションファクトリーのオイスターバー「ワーフ」(大阪市北区)でも西山社長は確かな手ごたえを感じていました。
今後は従来の病院や学校の給食向けだけでなく、外食関係のみならずホテルやレストランにも十分挑戦出来ると西山社長は考えています。
一方、有田焼の老舗にも新たな動きがあります。
創業123年の深川製磁でも早速世界最強の磁器の製造に取りかかっていました。
深川製磁の草場 薫さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「当然割れにくかった方が(長く)大事に使ってもらえるかなというのもあるし、是非とも商品になればというふうに思いますね。」
“世界最強”の磁器は有田焼の救世主となるのでしょうか。
蒲地さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「有田焼の400年(の歴史)に代わる次の400年を支える素材になってくれればと期待しております。」
なお、この“世界最強”の磁器の材料費は従来の有田焼の1.5倍ほどするといいます。
しかし、一般の有田焼に比べて強度はおよそ5倍といいます。
ですから、例えばデザイン性を追求して薄い部分があったとしても、“普段使い”をすることが出来るということからヨーロッパなどからも注目が集まっていて問い合わせが来ているといいます。
更に、食器以外にも電子回路の基盤や建築用素材などへの応用も考えているといいます。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
価格は従来品の1.5倍ですが、強度は5倍という“世界最強”の有田焼、そこには外食産業のみならず、これまでにないデザインの陶器の製造、あるいは電子回路の基盤や建築用素材などへの応用の可能性もあるといいます。
このように、陶器に限らず、従来品の質や性能を格段に高めることによって、従来のマーケットでの新たな需要の掘り起こしのみならず、新規マーケットの開拓も期待出来るのです。
ということで、今回ご紹介した“世界最強”の有田焼の事例は、今後の日本の製造業のあり方として大いに参考になると思います。