2017年04月23日
No.3684 ちょっと一休み その591 『やはり福島第一原発事故は人災だった!』

3月17日(金)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)で福島第一原発事故は人災だったと報じていたのでご紹介します。

 

世界最悪レベルの東京電力(東電)の福島第一原発の事故について、裁判所が初めて国と東電の責任を認めました、

事故で群馬県に避難した人など130人余りが起こした裁判で、前橋地方裁判所は津波を事前に予測して事故を防ぐことは出来たとして、国と東電に3800万円あまりの賠償を命じました。

 

6年前の2011年3月11日、巨大な津波に襲われた東電の福島第一原発、電源が失われた原発で原子炉がメルトダウンし、大量の放射性物質が放出されました。

今も多くの人たちが避難生活を続けています。

 

そうした中、全国で裁判が起こされました。

このうち群馬県に非難した人など137人が生活の基盤を失うなど、精神的な苦痛を受けたとして国と東電に総額約15億円の慰謝料などを求めました。

3月17日の判決で前橋地方裁判所の原 道子裁判長は、“国と東電は過去の想定に基づき、巨大津波が来ることを予測出来た”と指摘しました。

そのうえで東電の責任について、“非常用の発電機を建屋の上の階に設けるなど、対策は容易だったのに行わなかった”、“原発の津波対策は常に安全側に立った対策を取らなければならないのに、経済的来な合理性を優先させたと言われてもやむを得ない対応で、今回の事故の発生に関して特に非難に値する”と指摘しました。

 

また、国の責任についても、“東電に津波の対策を講じるよう命令する権限があり、事故を防ぐことは可能だった”、“事故の前から東電の自発的な対応を期待することは難しいことも分かっていたと言え、国の対応も著しく合理性を欠く”と指摘、“国と東電にはいずれも責任があった”と初めて認めました。

そして、自主的に避難していた人を含む62人について、国と東電に3800万円余りの賠償を命じました。

 

この日の判決のポイントについて、NHK社会部司法担当の山形 晶記者は、次のようにコメントしております。

「2つあります。」

「一つ目は、裁判所が国も東電も津波を予測して事故を防ぐことは出来たと認定したことです。」

「裁判所は事故の原因の1つは、地下の配電盤が津波で浸水して機能喪失したことだと認定しました。」

「そしてこうした原因について、東電は津波が来るということを2002年に政府の地震調査研究推進本部が巨大地震を想定した長期評価を出したのですが、これで予測することが出来たというふうに認定しました。」

「更に、地下の配電盤が浸水被害に弱いということも事前に分かっていたはずだと認定しました。」

「そして、こういうことについて対策を取れば、事故を防ぐことは可能だったと指摘したのです。」

「更に国も同じようにこういう津波は予測出来たはずだと。」

「規制の権限を行使すれば、やはり事故を防ぐことは出来たというふうに認定したということもあります。」

「つまり、この事故は防ぐことは出来た人災だったというふうに裁判所は認定したということになるのです。」

 

「二つ目は、平穏に生活する権利が侵害されたと認定されたことです。」

「放射線による被ばくへの恐怖や不安にさらされずに生活する権利です。」

「これまでも精神的な苦痛に対しては、東電は賠償をしています。」

「これは国の指針に基づくもので、避難指示区域の住民には1人あたり最大1450万円、そして自主避難した人には大人1人あたり最大12万円、子どもや妊婦には72万円ということです。」

「こうした状況も踏まえて、この日の判決では一部の人を除き62人について賠償を認めたということです。」

「この日の判決で注目すべき点は、東電は対策を怠ったこと、これは特に非難に値すると判断したことです。」

「更に国についても、補充的な責任とは言えず、同等の賠償責任を負うと判断したということも今回の特徴だと。」

 

この日の判決について、東電の廣瀬 直己社長は次のようにおっしゃっています。

「まだ(判決文を)拝見していないので詳しいことは申し上げられませんけども、今後どういうふうに対応していくか、まず判決文を精査させて頂いてしっかり対応していきたいと。」

「我々は損害がある限り、賠償しなければいけないと思っています。」

 

一方、菅官房長官は次のようにおっしゃっています。

「詳細は十分承知しておりませんけれども、国の主張が一部認められなかったと聞いております。」

「今後、関係省庁で判決内容を十分に精査し、対応方針を検討していくことになるだろうと思います。」

 

そのうえで、原発を含めた政府のエネルギー政策に与える影響について、“そこは無いと思う”と述べました。

 

国や弁護団などによると、原発事故で賠償を求める裁判は全国の少なくとも18の都道府県で29件起こされ、原告は1万2000人余りに上ります。

今回の判決について、原発事故の賠償に詳しい立教大学の淡路 剛久教授は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「画期的というか、そういう判決だったと思うんですね。」

「一つの意味付けとして(今後の裁判に)影響を与えていく可能性があるのではないかと。」「今、実態として求められている救済措置は何かということを被害者の声を聞きながらもう1回被害者救済に向けて見直していくことが求められるように思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

3月17日の判決での前橋地方裁判所の原 道子裁判長による論旨を以下にまとめてみました。

・国と東電は過去の想定に基づき、巨大津波が来ることを予測出来たこと

・非常用の発電機を建屋の上の階に設けるなど、対策は容易だったのに行わなかったこと

・津波対策は安全性よりも経済的合理性を優先させたこと

・国には“東電に津波の対策を講じるよう命令する権限があり、事故を防ぐことは可能だった”が、その管理責任を果たさなかったこと

 

要するに、国と東電は巨大津波が来ることを予測出来たにも係わらず、東電は事故に関する危機意識が希薄であり、また経済的合理性を優先させて安全対策を怠り、一方で国はそうした東電の安全対策における管理責任を果たさなかったことが福島第一原発の事故をもたらしたということなのです。

まさに、東電も国も事故は起きないという“安全神話”によって支配されていたということが言えます。

もし、原発事故が起きたら大変な被害が発生する、東電も国もそうならないためにはどうすべきかという真剣で厳しい目を持っていれば、明らかに福島第一原発事故は防ぐことが出来たのです。

 

では再発防止策ですが、事故後もこれまでの報道によれば未だに事故の根本原因は明らかではないといいます。

しかも、東電や国による被害者への賠償金、あるいは東電による事故防止対応策に投じる資金はどんどん増え続けています。

こうした状況下においても原発を今後とも推進していくという国の方針にははなはだ疑問が残ります。

やはり事故の際の被害リスクの大きい原発に依存するよりは“脱原発”を速やかに実現するためのエネルギー政策が求められると思うのです。


 
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